犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

京城帝国大学

2008-10-15 00:47:39 | 近現代史
 ノーベル賞関連の記事で,名古屋大学が注目されています。

ノーベル賞受賞者3人を輩出、地方の名門・名古屋大学(→リンク

 韓国には「地方の名門大学」が少ない。

 ソウル大学,一極集中です。

 もちろん,地方にも釜山大学をはじめ,いくつかの国立大学がありますが,人気がなく,地方の優秀な学生はだれもかれもソウル大学(またはソウルの名門私立大学)を目指します。

 日本には,芸術系,医学・歯学系,工学系,外国語系などにも定評のある国立大学がありますが,韓国ではそれらの系統もすべてソウル大学に集約されているのが特徴です。

 ところで,ソウル大学が,植民地時代の京城帝国大学であったことを知る韓国人は少ない。百科事典などでも,そのへんの事情はさらっと書かれている。韓国随一の名門大学が,日本によって設立されたというのは自尊心が許さないのでしょう。

 ソウル大学の前身,京城帝国大学の歴史は古い。

 設立は,9つあった旧帝大の中で6番目。1924年の開校というのは,大阪帝大(31年)や名古屋帝大(39年)よりも古い。

 帝国大学は,理工,医学,農学など,理科系の科目でスタートするのが通例だったのですが,京城大学の場合は法文学部と医学部が同時開設。理工学部は41年でした。理工学部に関していえば,名古屋大学よりも遅かったわけですね。

 開設時に法文学部が置かれたのは,韓国人の強い希望があったからだそうです。

 帝国大学の教育は,もちろんすべて日本語で行われました。それは,当時の国語が日本語だったから当然といえば当然ですが,韓国語で行おうにも,韓国語は当時,学問に堪えうるような近代語ではなかった。朝鮮時代の教育言語,書き言葉は「漢文」。朝鮮語は話し言葉だったので,学問用の語彙がなかったわけです。韓国語に近代語彙が加わるのは,日本が西洋思想を翻訳する過程で作った和製漢語を輸入してからのこと。

 授業が日本語で行われるので,入学資格として日本力が問われる。その結果,京城帝国大学の学生には日本人が多かった(卒業生に占める韓国人の比率は34%)。韓国人の目には「差別」と映るでしょうが,やむをえない。

 戦後,京城帝国大学は,文字通り「看板を掛け替えて」ソウル大学になりました。教授はもちろん,旧帝大出身の人々。そして,科挙の伝統もあり,文科系を好む風潮から,理工系の研究に力を入れることがなかった。

 それが,ノーベル賞不作の遠因なのでしょう。

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4 コメント

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和製漢語 (スンドウプ)
2008-10-15 11:18:46
和製漢語を使うのはやめようと行ってますが、成り立つんでしょうか?
http://media.daum.net/culture/view.html?cateid=1010&newsid=20081009152106848&p=ned
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科挙 (だばだ)
2008-10-17 00:20:05
今、中国の歴史『三国志の世界(後漢 三国時代)』を読んでいたのですが、その中で
「現代中国でも医師を含め理系は不遇である。これは、科挙による文系(≒儒家)中心の士人を優遇する慣例が残っているから」というような見解がありました。これって両班も同様?と思いながら当記事を拝見。さすが犬鍋さん!旧帝大の歴史と共に大納得です。
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〉和製漢語 (犬鍋)
2008-10-18 23:02:18
面白い記事のご紹介,ありがとうございます。

〉「韓半島」は,日本が我が国の領域を半島の南に狭め,民族の精気を抹殺するために作った表現

 日本では「韓半島」なんて使わないんですけど。

〉「倍前の努力」というのも日本式表現だ。

そんな言葉あったっけ。

〉「感謝申し上げます」も,代表的日本式表現。

ふーん。
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〉科挙 (犬鍋)
2008-10-18 23:06:06
東洋では論述など,ペーパーテストが重視され,西洋では弁論など,口頭試問が重視されます。

これは紙の歴史と深い関係があり,中国で発明された紙は科挙が始まったことからすでに廉価な製品だった。一方,西洋は紙といえば羊皮紙で,非常に高価だった。

そのため,学生の試験などにふんだんに使えるようなものではなかった。

西洋でディベートが発達したのは紙のせいだった,というようなことを何かの本で読んだことがあります。
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