先日は猛暑の中、東京は大田区、雑色(ぞうしき)に所用があって、行ってきました。午後のアポイントの前に昼食をとろうと、駅近くの商店街をあるいていたら、
「洋食レストラン ミャンマー料理」
という看板が目に入りました。
「なんでこんなところにミャンマー料理が!!」
ミャンマー人は高田馬場近辺に集住していて、ミャンマー料理も高田馬場にしかないと思っていたのに意外です。
店に入ると、こぢんまりとした店内には二組の先客がいました。メニューには、ミャンマーカレー、ミャンマー風春雨スープなどミャンマー料理と並んで、オムライスなんていうミャンマーとは関係なさそうな洋食メニューもあります。
店の名前、ジレ・ゾミについてご主人に聞いてみました。
「ゾミは民族名です。私がゾミ族なんで」
ゾミという民族については初耳だったので、詳しく聞くと、一般にはチン族の名で呼ばれる民族だそうです。
「ジレは聖書の言葉です」
「というと、クリスチャンですか?」
「ええ」
「クリスチャンはミャンマーの北部に多いですよね」
「ぼくたちは北というより東ですね」
私はミャンマー語のCDをスマホに入れていて、その中にチン族の言語があったのを思い出し、再生してみました。
「これですね?」
ご主人、注意深く聞いていましたが、
「ああこれは○○チンですね。私のは△△チンですからちょっと違います」
「チンにもいろいろあるんですか」
「はい。××チン、□□チン…。山を越えると言葉も違いますから」
「ふーん」
「あれ、これはいろんなチンが混じってますね。三つぐらいのチンがごちゃまぜになってますよ」
と言われても、私にはさっぱり。
このお店を開いたのは2年前。最初は蒲田に開こうと思ったけれども、よい物件がなくて、京浜急行で蒲田から一駅の雑色にしたとのこと。ミャンマー人もいないし、日本人もミャンマー料理なんて食べないだろうと思ったから、ふつうの洋食屋としてスタートした。ところが、お客さんから、ミャンマー人なんだからミャンマー料理をやるべきだと言われて、始めてみると、意外に評判がよいということです。
それで、「洋食レストラン ミャンマー料理」という不思議な看板の意味がわかりました。
「お勧めはなんですか」
「ミャンマー風カレーか、春雨スープですね」
「春雨スープはご飯もつくんですか」
「いえ。でも春雨がたっぷり入ってますから、ボリュームありますよ」
それでミャンマー風春雨スープを注文。
ご主人は現在51歳で、私と一歳違い。20年前に亡命してきたそうです。
春雨スープは牛モツのあっさりしたダシで、確かに春雨がたっぷり。たいへんおいしい。キャベツのサラダと、食後にはアイスコーヒーまでついて650円は安い。
「サーロ・カウンデー(おいしいです)」
「チェーズーティンバーデー(ありがとう)」
「夜もやってるんですか」
「11時までです」
店の雰囲気も、味も、ご主人の感じもたいへん気に入ったのですが、記録的な猛暑だからか、店内が暑い。
「あ、すみません。二つのクーラーのうち、大きいほうが故障中で…」
(これで涼しければ夜も来るんだけどなあ)
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