犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国のハラスメント

2021-09-14 23:27:51 | 韓国語教室
 韓国語でセクハラのことを性戯弄(성희롱 ソンヒロン)ということは、以前、紹介したことがあります(リンク)。

 では、パワハラは何というでしょうか。

 韓国で代表的なパワハラ事件は、2014年の「ピーナツ回航(ナッツリターン)事件」でしょう(リンク)。

 大韓航空の機内で、ファーストクラスに乗っていた大韓航空の副社長(女性)が、「ピーナツを袋のまま出した」ことに怒って、CAその他の乗務員を大声で叱責、土下座をさせたうえに、暴力まで振るい、すでに離陸していた飛行機を引き返させ、乗務員を降ろしたという事件です。

 この年、ヒムヒロン(力戯弄、힘희롱)という言葉が、「新造語・流行語」になった、とネットに書いてありました(韓国語、リンク)。

 でも、ネットで「ヒムヒロン」を検索語としてもあまりヒットしないところからみて、実際には定着していないようです。

 パワハラを意味する言葉としては、「職場内カプチル」、「職場内ケロピム」という言葉のほうがよく使われています。

 カプチル(갑질)のカプは、漢字の「甲」。チルは「よくない行動」を表します。「甲」は、契約書の「甲」のように、相手(乙)よりも相対的に優位な立場を利用して、無礼な振る舞いや指図などをすること。

 ケロピム(괴롭힘)は「いじめ」で、特に上位者が行うという意味はありません。

 こちらは、今年7月12日付のハンギョレの記事→リンク

 「パワハラ禁止法」と訳されている原文(リンク)は、「직장갑질 금지법」(見出し、職場カプチル禁止法)、「직장 내 괴롭힘 금지법(개정 근로기준법)」(本文、職場内いじめ禁止法(改正勤労基準法))となっています。

 記事によれば、勤労基準法が改正されて2年経った時点で、1000人の会社員にアンケート調査を行ったところ、依然として会社員の10人に3人が職場内でいじめを受けていることが分かった、とのこと。

 セクハラのほうは、今年は特に大きな事件が相次ぎました。

 政界では3人の知事がセクハラが原因で辞任もしくは自殺しました(リンク)。軍隊での男性上官による女性兵士へのセクハラでは複数の自殺者が出ていますし、男性から女性に性別変更した軍人の自殺のニュースもありました(リンク)。

 最近では、女性上官による男性部下へのセクハラという珍しい疑惑の報道もあります(朝鮮日報9月11日付、リンク)。

 韓国空軍本部法務室に所属する40代の女性中領(日本では中佐に当たる)は昨年夏、部下の30代男性軍務員に「最近は母乳を与えているのか。胸がなぜそんなに大きいのか」と述べた容疑で先日から複数回にわたり空軍軍事警察の聴取を受けた。軍事警察は女性中領が男性軍務員の発達した大胸筋を見て「母乳」「授乳」などの言葉を使ったか確認を進めている。男性軍務員は筋トレが趣味だという。

 これは別に事件の数が昔より増えたというわけでなく、それまで泣き寝入りしていたものを、勇気をもって告発した件数が増えたのだと思われます。しかし、告発したことによってかえって嫌がらせを受け、自殺という結果に終わった例が多いのは、残念なことです。
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