犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

エンデュアランス号漂流と犬喰い

2007-10-15 00:30:13 | 食べる
 極地探検と言えば,アムンセンとスコットが有名ですが,同時代に南極大陸の犬ぞり横断を企て,遭難し,氷の海を何カ月も漂流し,壮絶なサバイバルの末,ついに全員が帰還したエンデュアランス号の話はあまり知られていないようです。

 数年前に買いながら読まずに放置していた『エンデュアランス号漂流』(アルフレッド・ランシング著,新潮文庫)を,最近の「新幹線読書」で読みました。

 南極の氷上で重要なのはやはり食料。
 持参した缶詰などの食料以外に,狩りによって調達するアザラシやペンギンなども貴重です。しかし,気候や海流によって,それらが手に入らない時期もある。飢餓への不安が台頭すると,身近で食料になりそうなものに目が行きます。


 食料の欠乏のため,食いぶちを減らすために犬を殺そうという話が出たが,隊員の間では反対が強い。

……

 多くの隊員たちにとって犬たちはもはや,ただのそりをひく動力ではない,ということだった。隊員たちと犬とのあいだには,深い心の交流が生まれていた。誰かを愛したい,この不毛の地にあっても優しさを表現したいという気持ちは,人間なら誰もが持つ欲求だった。犬たちは獰猛で,互いに喧嘩ばかりしていたが,隊員たちに対する献身と忠誠に疑問を差しはさむ余地はなかった。そして隊員たちもまた,通常の状況ではとても考えられないほどに深い愛情でそれに応えていた。

 最初の頃は抵抗がありましたが,次第に食糧事情は切迫し,そうは言っていられなくなった。

 近いうちに,犬の肉も食べることになりそうだった。一行はもう一度キャンプに戻れるのではという一縷の望みを持っており,そのために犬の射殺を先延ばしにしていた。いずれにしても,キャンプに戻るのが不可能だということがはっきりすれば,犬は殺され,食べられることになっていた。

〈加熱した犬の肉を食べるのには何のためらいもない。が,生のままではちょっと食べる気はしない〉と一人の隊員は日記に書いている。

 肉に火が通ると,グリーンは皆に配ってまわった。…犬の肉は,例外なく大好評を博した。〈贅沢な味がした〉とマクニーシュは書いている。〈長いことアザラシの肉ばかり食べてきた我々にとっては,すごいご馳走だった〉。ジェイムズは〈驚くほど美味〉と表現した。ワースリーはグラス(犬の名)の肉を〈ヒョウアザラシよりずっと風味がある〉と評した。ハーレーに至っては,〈とびきり柔らかく風味もよく,とくにネルソン(同)の肉は,子牛肉に匹敵する〉とまで書いた。


 日本の南極観測隊でも,「生きていたタロとジロ」という犬の話がありましたね。あのときは,犬は殺さず(もちろん食べず),鎖につないだまま放置した。一年後,15頭のうち2頭が生き残っていたことがわかって美談になり,映画化もされました。

 もし韓国の観測隊だったら,迷うことなく食べてしまっていたでしょう。

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3 コメント

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「生きていたタロとジロ」 (スンドゥプ)
2007-10-15 11:49:44
と似たストーリーの映画を以前、飛行機で見ました。「南極物語」(ディズニー)
これも実話とありましたが、パクリ疑惑もあるようです。(ジャングル大帝 対 ライオンキング)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=324146
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Unknown (hana)
2007-10-16 12:50:07
そのディズニーの南極物語はパクリではありませんよ。
ちゃんとしたリメイクです。
ディズニーですので死んでしまう犬の数が少ないですけどね。
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アンデスの聖餐 (犬鍋)
2007-10-16 18:04:07
というのもありましたね。

こっちは犬肉ではなく,人肉。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=11467

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