昨年10月30日に、韓国大法院が、新日鉄住金に対して「賠償金」の支払いを命じる判決を下して以来、日韓関係はこれ以上ないくらいに悪化しています。
文在寅大統領は判決後、長いことだんまりを決め込んでいましたが、12月14日、日韓議連との会談で、
「(請求権協定によって)個人請求権は消滅していない」
と短くコメント。年明け10日の年頭記者会見でも
「(韓国)政府は司法の判断を尊重しなければならない」
と述べるにとどまっています。
これに対し日本側は
「1965年の日韓請求権協定で解決済みの問題。国際法に照らせば、ありえない判断だ」(11月1日安倍首相国会答弁)
などと激しく反発。関係改善の兆しは見えません。
今回の判決はネットで全文を読むことができます。
判決文原文
判決文翻訳
これを読むと、判決は未払い賃金などの個人請求権を認めたものではなく、不法な植民地支配に対する「慰謝料請求権」を認め賠償金の支払いを認めたもので、判決直後の文大統領のコメントは的外れなものでした。
(判決文より)
まず、本件で問題となる原告らの損害賠償請求権は日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権(以下「強制動員慰謝料請求権」という)であるという点を明確にしておかなければならない。原告らは被告に対して未払賃金や補償金を請求しているのではなく、上記のような慰謝料を請求しているのである。
(中略)
請求権協定の交渉過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を根本的に否認し、このため韓日両国の政府は日帝の韓半島支配の性格に関して合意に至ることができなかった。このような状況で強制動員慰謝料請求権が請求権協定の適用対象に含まれたとは認めがたい。
つまり、判決は、「請求権交渉で、日本は植民地支配の不法性を認めなかった。植民地支配は不法なので、その下で行われた動員も不法、動員された苦痛に対して、慰謝料を支払え」というものです。
この判決は、日韓の合意に反します。
判決が述べるように、「韓日両国の政府は日帝の韓半島支配の性格に関して合意に至ることができ」ませんでした。それで、苦肉の策として基本条約第2条に
「千九百十年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」
という条文をまとめ、その解釈は双方に任せるという暗黙の合意のもとに、条約を締結したわけです。
そして、日本は「日韓併合条約が締結当初は有効だったが、1948年の大韓民国成立で無効になった」と解釈し、韓国は「締結当初から無効だった」と解釈しました。
したがって、日本の解釈では日本の支配は「合法」、韓国の解釈では「不法」になるわけです。
今回の判決は、この暗黙の合意を覆したものです。
日韓両国が日韓基本条約について異なる解釈をしてきたことに対しては、これまでも異を唱える勢力が存在しました。日本の「進歩的知識人」たちですね。
日韓併合100周年の20152010年には、「日韓併合条約は当初から無効だった」と宣言して、韓国から喝采を浴びました。その経緯については本ブログでも取り上げたことがあります。
進歩的知識人のアナクロニズム(1)
進歩的知識人のアナクロニズム(2)
さらに、条文解釈については以下。
already null and voidの解釈
この暗黙の合意を韓国大法院が覆したことが、果たして「国際法違反」(安倍首相)になるのか、私にはわかりません。
今後の第三国を含めた政府間協議、国際司法裁判所での協議を見守りたいと思います。
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韓国併合は1910年です。100年後は2010年です。
またいろいろお教えください。
ブログの執筆、チェックを怠っており、返信が遅くなりました。
ご指摘の通りですね。2015年は2010年の誤りです。修正させていただきます。
これからもよろしくお願いします。