フィリピン留学中の3女から、「フィリピン人のボーイフレンドができた、今度会ってほしい」というラインをもらってから、少し前に読んだ本を書庫から取り出し、再読しました。
中島弘象著『フィリピンパブ嬢の社会学』(2017年新潮選書)です。
著者は、大学院の卒業論文で「フィリピン人ホステス」を研究対象にし、取材のためにフィリピンパブに通ううち、一人のホステスと懇意になり、最後には結婚することになる顛末を本にまとめました。
以下、内容をかいつまんで紹介します。
フィリピン人ホステスのミカは、マニラ近郊の町の出身。一足先に日本でホステスになった姉に誘われ、偽装結婚で来日。2010年にミカが業者と結んだ契約(口頭)は、3年契約で給料は月6万円、昇給は年一回1万円、休みは月2回というもの。実際ミカは月40万以上を売り上げたが、大部分をピンハネされ、もらえるのは6万円だけ。しかし、3年後の高収入を夢見て搾取を我慢している。
もともと姉妹は極貧の家庭に育ったが、姉が契約終了後の3年間で、500万円を家族に送金、ミカもそのお金で学校に通い、家族は高級住宅地に豪邸を建て、優雅な生活を送ることになる。
働き始めてから2年経ち、ミカは業者から一時帰国の許可を得る。そして、ミカと交際し結婚を考え始めていた著者は、帰国に同行することに。
ミカの家族は高級住宅街に家を構え、豪華な家具や家電に囲まれ、しかもメイドまで雇っている。その金は、名古屋のフィリピンパブでホステスをしているメイ(長女)とミカの送金なのである。
父は50歳、母は53歳。母は本妻ではなく、父は自分の実家に本妻と住みメイやミカと腹違いの弟がいる。父の営む洗車場の開業資金100万円はメイが出している。メイとミカの間に二女がいるが、結婚した夫は3年前に韓国に出稼ぎにいったきりで、そこで知り合ったフィリピン人女性との間に子供がいる。彼が送る養育費では生活できないので、メイとミカが送る送金に頼っている。
「家族の誰かが困ったら助けるのが当たり前なの」
フィリピンのついた翌日が、「おみやげ配分日」。日本から持ち込んだ大量の電化製品、香水、バッグを家族に分ける。そして全員でショッピングモールに行き、ミカの金で大量の買い物。夜は豪華レストランで、この日の出費は10万円。翌日、家には親せきが詰めかける。その数30人。全員にこづかいを渡す。その後も連日親せきがやってきてお金をせびる。日本からもってきた40万円はたちまち底をつく。
僕は頭が痛くなった。これじゃ、どれだけお金があっても足りるわけがない。ミカと結婚したら、僕もこうした「金むしり」の対象になるのだろうか。間違いなくそうなるだろう。
(中略)
父親とビールを飲んでいたときのことだ。父親が酔って語り始めた。
「海外に出稼ぎに出るフィリピン人のことを、この国ではヒーローと呼んでいる。この国は出稼ぎの人たちの送金で成り立っている。おれは娘二人を日本に送ったことを誇りに思っているんだ」
2015年10月、反対していた両親の許しを得、ミカと婚姻届けを出し、ミカは結婚ビザを更新することができました。著者は16年の春現在、フィリピンのNGO「DAWN」で活動している。DAWNはフィリピンで、日本に出稼ぎに出ていた女性と、日本人男性の間に生まれた子どもを支援している団体で、子ども劇団を結成し、日本の各地を巡回公演するときに、その受け入れを手伝っているそうです。ミカも、劇団の通訳などのボランティアをしているということです。
フィリピンに関係ない人にも、一読をお勧めします。
最新の画像[もっと見る]
-
自願奉仕 4日前
-
劇場版「孤独のグルメ」の個人的な楽しみ方 1週間前
-
劇場版「孤独のグルメ」の個人的な楽しみ方 1週間前
-
劇場版「孤独のグルメ」の個人的な楽しみ方 1週間前
-
劇場版「孤独のグルメ」の個人的な楽しみ方 1週間前
-
ラーメン屋でモンブラン 1週間前
-
ラーメン屋でモンブラン 1週間前
-
極寒のソウル旅行 1週間前
-
本日の虫 1週間前
-
本日の虫 1週間前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます