韓国のマスコミに「性奴隷」と認定された三つのケース(群山、ロシア人、遠征)について、その理由を考えてみました。「性奴隷」の要素としては、だいたい次のようなものが考えられます。
「強制連行」「甘言」「売春強要」「監禁」「暴力」「多額の借金」「搾取」
それぞれについて分析すると…
(1)強制連行…なし
群山と遠征はもともと売春婦で志願といえるでしょう。ロシア女性はそうではなかったと思われます。来韓の経緯は明らかではありませんが、拉致されたとか暴力的に連れて来られたというわけではないでしょう。
(2)甘言(騙し)…ロシア人
ロシア女性は、芸能(興行)ビザでやってきたそうですから、来韓前は売春させられるとは思っていなかったでしょう。遠征の場合も、「売春しなくてもよい」と言われていたそうですから、甘言ですね。
(3)売春強要…群山、ロシア人、遠征
いずれの場合も接客拒否の自由はなく、強要されていたと思われます。
(4)監禁…群山、ロシア人
群山、ロシア人の場合、鉄格子つきの部屋に監禁されていた。遠征の場合、監禁されていたわけではなかったようですが、パスポートをとりあげられ、事実上、逃亡不可能な状況に置かれていました。
(5)暴力…群山、ロシア人、遠征
いずれも暴力を振るわれていたという証言があります。
(6)多額の借金…群山、遠征
群山、遠征の場合、女性たちは多額の借金で縛られていました。ロシア人の場合、借金についての記述はありません。
(7)業者による搾取…群山、ロシア、遠征
群山は女性が売上の50%、ただし高額の「生活費」を払う。ロシアは業者に売上の50~75%、女性の手取りは50万ウォン。遠征は、借金返済後に女性が50%、返済前の比率はそれより少なかったが具体的な比率は不明。
つまり、「性奴隷」とは、
「業者に騙されたり、多額の借金を負わされたりした女性が、逃げられない状態で、暴力を振るわれ、売春を強要され、搾取された状態」
と要約できそうです。
韓国で「性奴隷」という言葉が使われるようになったのは、日本におけると同様、いわゆる従軍慰安婦問題がマスコミを賑わすようになってからです。
もともと「従軍慰安婦問題」は、吉田清治という人物が、済州島で「女子挺身隊」の名目で、日本軍兵士とともに、205人の朝鮮女性を強制連行した、という虚偽証言に端を発しています。それ以前に、「従軍慰安婦」がマスコミに取り上げられたことはほとんどなかったそうです。
1996年のクマラスワミ報告書も、この吉田証言を事実認定して、「性奴隷」の根拠としています。吉田の描写は、アフリカの奴隷狩りを思わせ、これが事実なら、確かに「性奴隷」と呼ばれてもおかしくない。
でも、すべて嘘だったんですね。
韓国でも当初、吉田証言は事実として伝えられました。日本では、秦郁彦氏らのフィールドワークによって吉田証言がでっち上げであることが暴露されましたが、通常、韓国ではこの手の訂正記事が載ることはないので、一般の韓国人はいまだに事実と信じている。甚だしくは、工場労働をした挺身隊と慰安婦を混同して「12歳の少女が慰安婦にされた」という誤報がありましたが、それもいまだに訂正されていない。
さすがに、日本の学者たちには「奴隷狩りのような強制連行があった」とか「小学生まで性行為を強要された」と主張する人はもはやいません。しかし、そのかわりに「強制連行」や「性奴隷」の拡大解釈、すりかえが横行している。
そもそも、「強制連行」という言葉は、在日韓国人の朴慶植が戦時中の朝鮮人労務動員を非難するために作り出したと言われています。労務動員の場合は、法令に基づいて、朝鮮の行政単位に人数が割り当てられ、組織的に日本国内の工場や炭鉱に送られました。慰安婦も、そのようなシステムで動員されたのであれば、労務動員に準じて「強制連行」といわれても仕方がないのですが、日韓の学者が必死で調べたにもかかわらず、そのような制度が存在した形跡はなかった。
日本政府や軍による強制連行がなかったことがわかったあと、吉見教授は、
「強制連行があったかどうかは重要ではない。慰安所での強制があったかどうかが問題のすべてだ」
などと言うようになりました。
そして、朝鮮出身の慰安婦に関しては、業者が募集した場合もその業者が軍から選定されていたのだから、結局は軍が募集したのと同じこと。女性たちは、多くが借金で縛られて売春を強要された。これは「人身売買」と同じこと。慰安所は軍が設置・運営し、そこでの生活は、居住、外出、廃業、接客拒否の自由がなかった。ゆえに、日本軍の慰安所は「性奴隷」制度だった、と次々に拡大解釈を繰り返して日本政府を断罪します。
この理屈でいけば、慰安婦の出自に関係なく、戦地ではない公娼制下の日本人娼婦も性奴隷、売春街が公然と存在し、売春が黙認されていた解放後の韓国の売春婦たちも、性奴隷ということになるでしょう。
京都大学の永井教授の理屈は、もう少し巧妙です。軍慰安婦制度は、日本による総動員体制の一部をなし、女性差別・民族差別によって最下層に位置づけられて性労働を強要された植民地・占領地出身の女性にとって「性奴隷制度」にほかならなかったと言い、暗に(内地・戦地の)日本人慰安婦や戦後韓国の売春婦を性奴隷の対象から除外しています。
ただ、このような日本人学者の理屈は、韓国人には通用しないと思われます。
戦後も、韓国のちょっと大きな都市には、売春街が存在していました。私が韓国に駐在していた1990年代後半も、ソウルには清涼里、弥阿里、竜山、永登浦など、傍目にもそれとわかる売春街があり、原色のネオンのついた小部屋から、路地を通る男性たちに媚びを売っていました。
法律上、売春は禁止されていましたが、そのような特別の一画で売春が行われていることは常識でしたし、そこで働く女性たちが多額の借金を負わされ、業者の中には女性たちを搾取し、ときには暴力を振るうものがいることも、公然の秘密でした。
しかし、一般の市民は、男も女も、彼女たちを見て眉を顰めるだけで、同情する人は少なかった。風俗業に従事する女性は、徹底した蔑視の対象でしたから。
2000年に起きた群山火災で、マスコミが「性奴隷」という言葉を使って告発記事を書いたのは、群山の売春婦たちが監禁状態に置かれ、火災によって無残な死をとげたからでしょう。ロシア人(やフィリピン人)のケースは、被害者が外国人だったこと、遠征売春のケースでは、韓国人が海外に出向いてまで売春をしていることが人々の耳目をひきました。
これらの性奴隷と、日本軍慰安婦の性奴隷は何が違うのか。
それは「強制連行」の有無なんですね。
たんなる「慰安所における強制性」だけだったら、韓国でしばしば報道される性奴隷となんら変わるところがない。日本が「挺身隊の名目で一般女性を暴力的に、もしくは騙して戦場に連れていった」からこそ、糾弾の対象になるわけです。河野談話に言及するとき、決まって「日本軍の強制動員を認めた」河野談話というように修飾語がつくのは、そのためです。
この河野談話も、韓国にとっては不満があります。暴力や甘言による不法な募集や、慰安所生活の強制性への日本軍の関与が、部分的・例外的であるかのように読み取れるからです。
日本軍慰安婦は、「もっぱら日本政府・軍が、制度として、何の罪もない朝鮮の一般女性を暴力的もしくは甘言によって強制連行し、監禁し、売春を強要し、暴力を振るい、搾取した」ものであって、ひと儲けしようとした売春婦や、娘を売った親や、女性を騙した朝鮮人ブローカーや、慰安所を経営した朝鮮人業者はすべて免罪し、日本だけが全面的に悪い、ということにしたいのです。
朴槿恵大統領が、いつまでも従軍慰安婦問題にこだわっているのは、戦時の日本が、戦後の韓国の売春業者と同じようなことをした、というだけで終わらせるわけにはいかないからです。
もちろん日本としては、事実ではないことを認めるわけにはいかない。
今後の日韓首脳会談で、韓国は日本に、河野談話を継承するだけではなく、さらに踏み込んで日本の強制連行を認め、具体的な行動(=賠償)をとることを要求してくるでしょう。
日本はそんな要求を飲むわけありませんから、日韓関係は当分の間、冷え込んでも仕方がありません。
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通りの角の交番で日本人を制限して,利用者を米軍人に限定し,経営が三国人であることで,治外法権状態にあることを口実にしていたと思います。
当初は,日本軍が占領軍を迎えるに当たって,業者の協力を得て女性を用意しましたが,強姦事件が頻発した為,GHQが内務省を天皇を法廷に立たせるぞ等と脅迫し,官憲が街娼狩等で女性を集めました。
事情があり、コメントが遅れました。
朝鮮・韓国の慰安婦事情は調べましたが、日本国内のことはあまりよく知りません。
ご教示、ありがとうございました。