犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

法律を学ぶ楽しさって?

2024-05-21 22:53:14 | 朝ドラ

写真:「虎に翼」の佐田優三と寅子

 今日(5月21日)の朝ドラ「虎に翼」で、寅子の夫、佐田優三が「弁護士になったらやりたかったこと」として、

「法律の本を出したかった。僕が法律を学ぶ楽しさを知ったように、誰かにも伝えられたらなって」

という台詞がありました。

(法律を学ぶ楽しさ?)

「法律を学ぶことが楽しい」というのは、ピンときません。

 学生時代を振り返ると、中学・高校で、自然科学や歴史は面白いと感じましたが、中学の「公民」や高校の「政経」が面白いと思ったことがない。

 ひたすら暗記、のイメージです。

 大学の教養課程で、法学関連の授業をとったかどうかは覚えていません。「憲法」とか、とったかもしれないけど、覚えていないのは、あまり面白くなかったからでしょう。

 同級生の中には、法学部に進む人が結構多かったけれど、「法律の勉強が面白い」と思っていたのかは疑問。

 東大文Ⅰ(法学部)や、その先の司法試験が最難関とされていたからチャレンジした、という人も多いのでは?

 実際に法学部に進学した人たちは、国家公務員試験を受けて官僚になった人も相当数いましたが、司法試験を受けて法曹界(弁護士、裁判官)に進む人も同じくらい多かった。

 裁判官は重要で名誉もある仕事というイメージがあります。弁護士のほうは、(なんか金が儲かるらしい)と聞いたことはあるけれども、具体的なことは知りませんでした。

 裁判官や弁護士になるためには司法試験に合格しなければならない、そのためには法律を勉強しなければならない。

 つまり、将来の職業のために必要な勉強だからするけれど、それ自体が面白い学問というイメージはありません。

 なので、ドラマの中の優三の「法律を学ぶ楽しさ」というのが、どんな楽しさなのか、よくわかりませんでした。

 私は身近に法律を勉強した人がいなくて、勧められたこともありません。

 父は東大経済学部を出て銀行で働いていましたが、物心ついたころの父はほとんどアル中で、毎日酔いつぶれて深夜に帰って来た。そんな生活がたたって、49歳のとき癌で亡くなりました。私はそのとき中学3年生。

 父から、「経済学を学ぶ楽しみ」とか、「将来の職業」などについて、話を聞く機会はありませんでした。

 私にとって、父は反面教師。アル中になった原因の一つは、銀行の仕事の大変さ、つまらなさにあるんだろうと勝手に推察し、「銀行員にだけはなるまい」と思っていました。かといって、ほかについてみたい職業があったわけではありません。

 中学・高校では、別に国語の授業が面白かったわけではないけれども、本、特に小説が好きで、その延長で、大学は文学部に進み、出版社に就職しました。

 大学時代の文学部の授業もまた、そんなに面白くはなかったけれども、言語学の授業は興味を感じ、ソシュールなどをそれなりに熱心に学びました。

 社会に出てから、「裁判官や弁護士も面白いかもしれないなあ」と思ったことはあります。

 一つは、30代の初めに読んだ『家栽の人』という漫画。家庭裁判所の裁判官で、植物好きな主人公が、さまざまな民事訴訟を担当する話。「家栽」は、家裁と栽培の掛詞なんでしょう。面白くて全巻読破しましたが、その後、人にあげてしまい、手元にないのがちょっと残念。



 さらに最近では、韓国の「『帝国の慰安婦』裁判」を追いかけて、判決文を読み解いたとき、(こういうのもけっこう面白いなあ)と感じました。

『帝国の慰安婦』刑事一審が名判決である所以

 若いころにこういう面白さに気づいたり、誰かに教えてもらっていれば、司法試験を目指したり、その前段階として法律を勉強しようと思ったかもしれません。

 でも、勉学や職業選択は、家庭環境によるところが大きい。どんな勉強をし、どんな職業を選ぶかは、時の運だったり、偶然性に左右されます。

「虎に翼」に戻ると、ドラマに出てくる裁判やその弁護は、とても面白い。

 毎日、楽しみにして見ています。

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