犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

韓国便り~二つの再会

2023-10-13 22:35:21 | 韓国便り(帰任以後)

 初日の夜、会社の人たちとの会食の後、私は旧知の韓国人男性と約束をしていました。

 彼は提携先の社員で、私と知り合ったのは、1995年。30年近くのつきあいになります。

 彼が2年ほど前に退職したという話を、風のうわさに聞きました。SNSで連絡をしても応答がない。心配していたところ、出張の2週間ほど前にやっと連絡がつき、出張時にソウルで飲もうということになったのです。

 ホテルのロビーで待ち合わせ、再会を喜びました。

「退職したって?」

「はい、名誉退職です。退職金が上増しされるというんで」


 名誉退職というのは、早期退職の韓国語。

 韓国の会社は、人件費の上がったベテラン社員を減らすために、早期退職を推奨します。それに応じるのが「名誉退職」。名誉退職しない場合は、「解雇」もありうるので、応じる人が多いのです。

「今は何してるの? 日本語とか映像関係?」

 彼は日本語学科を卒業し、日本で映像関係の専門学校を出た「専門職」。前の会社では、韓国社員を連れて日本に行き、通訳をしたり、研修の様子をビデオに収めたりしていました。

「どっちも関係ありません。化粧品関係の小さな会社です。契約社員で、気楽な身分ですよ。ハハハ」

「5年振りぐらいかな」

「いえ、前に会ったのは2016年11月ですから、7年振りです。ちょうど父が倒れた直後でした。そのあとすぐに亡くなったので、覚えているんです」

「そのときはたいへんだったね」

 後で調べると、ブログに残っていました。

韓国便り~魚市場移転

「どこに行きましょうか。もう食事は済まされたんですよね」

「補身湯が食べたいなあ」

「ポシンタン! 最近、店が少ないですよ。ぼくも10年ぐらい食べていません。ムギョドン(武橋洞)あたりにはあるかもしれません。行ってみましょう」


 武橋洞というのは、私が韓国に駐在を始めた27年前に事務所があった場所で、「ナクチ」という激辛料理が有名な場所ですが、確かに補身湯の店も何軒かありました。

 行ってみると、そこは別の居酒屋になっていました。

「残念!」

「スンデはどうですか?」

「いいね」


 スンデは韓国式腸詰で、中身は豚の血、春雨、香味野菜、もち米など。汁物にして食事にしたり、おやつに食べたり。酒のつまみにもします。

 うらぶれたスンデの店に入り、スンデとビールを注文。



「アバイスンデがうまいんです」

「アバイってどういう意味」

「北朝鮮の方言で「アボジ(お父さん)」のことです。こっちは、血が入っていないんですよ」


 冷蔵庫を見ると見慣れない瓶がありました。「セロ(새로)」と書いてあります。(冒頭写真)

「あれ、焼酎?」

「はい、最近出たんです。だからセロかな」

 セロは韓国語で「新たに」という意味。

 スンデをつまみに、テラ(ビール)とセロ(焼酎)の混合酒(ソメク)を飲みながら、昔話に花が咲きました。

「不動産の仕事をやっていると思ったよ」

「ああ、韓国の不動産はもう上がりません。下がる一方でしょう」


 彼については、過去、ブログで取り上げたことがあります。

人生いろいろ~日本の恩人
夢(クム)

「犬鍋さん、明日仕事でしょう。そろそろお開きにしたほうがいいんじゃないですか」

「さっき、なつかしい看板を見つけたんだよ。もう一軒、つきあって」


 古びた建物の階段を上がっていくと、客のいない店にアジュンマ(おばさん)が一人で座っていました。

「あら、だれかと思ったら、犬鍋さんじゃない! なつかしい」

「まだお店、やってたんですね」


 事務所が武橋洞にあったこと、通っていたカフェです。ここでも別の「再会」がありました。

 ただ、ここには2019年の夏にも来ているので、4年振り。

韓国便り~バニー

 マルンアンジュ(乾きもの)とメクチュ(ビール)を頼み、小一時間談笑。

 ホテルに着いたのは23:30。その日は朝4時に家を出たので、朝まで爆睡しました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国便り~交通・物価 | トップ | 韓国便り~鮟鱇、海鞘、饅鰻 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

韓国便り(帰任以後)」カテゴリの最新記事