犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

ヒト、この不思議なる動物⑪~食い過ぎ

2010-06-12 23:06:48 | 文化人類学
 ヒトの食性の一つの特徴は,雑食性。要するになんでも食うことですね。

 ふつう,動物はその種ごとに食べ物が決まっている。ところがヒトという種は,その分布地域が広いこともあり,食べられるものなら文字通りなんでも食う。逆に言えば,なんでも食ったからこそこんなにも広い地域に分布できたんでしょうね。

 安定した生態系の中で,ある種の個体数が増えすぎると,その食料が足りなくなって飢えてしまい,結果的に個体数が減少に向かう。ところが人間の場合,ある食べ物を食べ尽くすと,分布域を広げたり,今まで食べなかったものをメニューに加えることで生態学的限界を乗り越えてきたようです。

 そして,食うとなったら徹底的に食う。つい100年ほど前に,北アメリカで数十億羽のリョコウバトを食い尽くして絶滅に追いやったことを少し前の記事で見ましたが,これはヒトが広がった先々で繰り返してきた歴史です。

 かつて南北アメリカ大陸に群れていた多種・多様・大量の大型獣は,ヒトがこの大陸に渡ってきた1万数千年前に,ほとんどが絶滅しました。学者の中には,この,時を同じくした「大絶滅」が気候変動のせいだとする人もいるようですが,ヒトが食い尽くしたからという説が有力です。約5万年前のオーストラリアや,数千年前のポリネシアの島々でも,同じような「大絶滅」が起きています。


食べ過ぎ」という現象も,ヒト特有のもののようです。

 肉食動物の中には,獲物が捕れたとき目一杯食って,消化されるまでごろごろしているということはあります。しかし,「食い過ぎ」が常態化して「太りすぎ」になってしまう,なんていうことはない。

 そもそも野生動物の世界では生態系におけるバランス機能が働いているので,食い過ぎるほど食料が豊富ということもなく,「太りすぎ」になることもない。草食動物の場合,「太りすぎる」と動作が緩慢になって天敵に襲われやすくなるし,肉食動物の場合,足が遅くなったりして獲物をつかまえにくくなっちゃうので,生存のためにはマイナス要因になるでしょう。

 狩猟採集生活を送っていた時代のヒト(つまり人類史の大部分)もまた,食い過ぎ=太り過ぎという現象とは無縁だったと思います。この特異な現象が生じるようになったのは,食料生産(農耕,牧畜)が始まってからでしょうね。

 牧畜が始まり,「家畜」が生まれてからは,動物の中にも人為的な食い過ぎ=太り過ぎ現象が起きるようになりました。ブタなどは,「改良」の結果,種全体が太り過ぎになっちゃった。ある種のガチョウなどは肝臓だけ集中的に肥大させられちゃっています。かわいそうだけれどもおいしい。

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2 コメント

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ペット (スンドゥプ)
2010-06-14 13:01:19
ペットは人間の食生活の影響を強く受けてますね。
雑食に肥満にそれが現れています。
今はドッグフードですが、昔は残飯に味噌汁かけて犬にやってました。
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韓国の犬は (犬鍋)
2010-06-16 00:32:15
残飯に辛いチゲをかけられちゃうんでしょうか?

かわいそう…
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