韓国語の文法は日本人にとって易しいけれども,発音は難しい。
これは何も韓国語に限ったことではなくて,あらゆる外国語の発音が難しいです。日本語の音韻が貧弱すぎるからですね。
たいていの外国語は日本語より,母音も子音も数が多い。そして子音で終わる音節(閉音節)がある。
韓国語も閉音節があり,音節末の子音を表記上はパッチム(받침)で表します。このパッチムの発音,日本人は苦手で,無意識に母音を補って発音してしまいます。
たとえば
감사합니다.
は,カmサハmニダと言うべきところを,カムサハムニダとやってしまう。まあこれは,たんにヘタクソに聞こえるというだけですが,意思疎通に支障をきたす場合もある。
それはニウンパッチム(ㄴ)とイウンパッチム(ㅇ)の区別です。
日本でカタカナ表記するとどちらも「ン」となって,区別ができませんが,韓国語では厳密に区別し,どちらを使うかで単語が変わる場合が多い。
実は,日本語の「ン」も,音声学的にはいろいろあるんですね。
サンケイ新聞を読んだ
という文章には4つの「ン」がでてきますが,音声学者に言わせると,これが全部違う。
最初の「サンケイ」の「ン」はng。「ン」の次にk,gが来ると,日本人は意識しなくとも音声学的にはngになります。ハングルではイウンパッチム(ㅇ)で表されます。
次の「新」の「ン」はm。b,p,m音の前で「ン」はmとして発音されます。ハングルではミウムパッチム(ㅁ) 。
三番目の「聞」の「ン」は,日本語に特有の音で音声記号で/N/と表す。発音するとき,舌も唇もどこにも接触しないで発音される「ン」です。母音やs,h,y,wの直前ではこの発音になります。これはハングルでは表しようがないですが,韓国人はngとして聞き取るようです。
最後の「読んだ」の「ン」はn。d,t,nの前でこの音になります。韓国語ではニウンパッチム(ㄴ)。
韓国人は,4つの「ン」のうち三つまで,はっきりと聞き分けます。すなわち,
상케에심붕오욘다
のように聞き取る。
日本語を学ぶ韓国人から,「ぜんぜん違う音なのに,なんでみな「ん」で表すんですか」と言われますが,そういわれても困る。日本人は違う音と意識していないんですから。
逆に,日本人が韓国語は話すとき,三つの音(特にnパッチムとngパッチム)をきちんと区別しない(できない)ことが多いので,通じない。
一般的な単語の場合,発音が不正確でも文脈上で理解してもらえることもありますが,地名や人名は通じにくい。たとえば,ノンヒョンドン(논현동論峴洞)の場合,日本人は,最初の「ン」を意識的にnと発音するようにしないと,/N/になりがちです。
最新の画像[もっと見る]
- 韓国、年の瀬の航空機事故 3日前
- 東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 5日前
- 東野圭吾『白夜行』 5日前
- 日本語教育能力試験に合格しました 1週間前
- あずきと日本人 1週間前
- あずきと日本人 1週間前
- ミャンマーの青年 2週間前
- 浅草のポジャンマチャ 2週間前
- 浅草で忘年会 2週間前
- 浅草で忘年会 2週間前
仕事柄、こういう言葉の話はとても面白いです。学生には名前の発音をよく直されます。(徳 の発音は、アに近いオだ!とひらめけば発音はできても、聞き分けはなかなか・・姓の趙(チョ)も黄(ファン)も発音むずかしい・・)。
人からは聞き取り書きが難しいとボヤかれますが、私からすれば韓国語の聞き書きの方がよほど難しいです。(^^;)
はじめには聞き落としていた音が今はちょっと聞こえるようになった事を考えれば、いつかは出来るんでしょうけれど。いや、そうならないと。(笑)
コメントありがとう。
「トク」の発音はいろいろあります。徳はアに近いオ、督は日本語のオよりやや狭く、得はイの口をしてウと言う……。
黄は、fではなく喉の奥のほうを摩擦させる。
どれも日本人にとっては難関です。
私の経験では、「言い分けられない音は、聞き分けられない」。聞き取りのためには、まず意識的に言い分ける練習をするのがいいと思います。
そうなんですね。ありがとうございます。やはり聞いてもらえるネイティブを捜さなければ!