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神戸




日常の活動範囲は居住地によってだいたい決まってくるが、わたしの場合、神戸とは阪急沿線から北側限定、場所によっては山手幹線沿いが入り、東は東灘区、西は元町まで、そこから飛んで海といえば須磨、ジェームス山、といった感じのエリアを指す。
となりの芦屋市には、祖母、大叔母らが住んでいるので、その辺りも身体感覚に含まれている。


わたしが子どもの頃は沢ガニのとれる急流や、隠れ家を掘ることすらできる粘土質の柔らかな山肌、とげのある野いちごのなる茂みなどが周囲にあり、どろどろになって遊びまわった。


こぢんまりした美術館群、桜のトンネルの坂道、神社の梅林、竹林、洋館、舶来品を扱う商店、明るい服を着たおしゃれな大人...
ガイドブックに乗っているような表現しかできないのが口惜しい。

太陽に背中を押されながら上りつめる坂道。
御影の蝉時雨。
芦屋の山にあるプール。
須磨水族館と王子動物園。
鴨子ヶ原の外国人の家。
高架下の靴屋。
北野のマンション。
洋菓子の老舗。パン屋さん。
六甲さんや摩耶さんから見る夜景。
須磨へのドライブ。
神話時代にさかのぼれる小さな旧跡。
インド料理。
教会と神社。


夏の夕暮れ、すべてがオレンジ色で、蝉が「そんながんばらんでも」というくらい力をふりしぼって鳴く中、六甲の坂道を上りきったところにある、山の傾斜にそって建つマンションで、大好きだった男の子がわたしの来るのを待っていた。
キッチンで彼がアイスクリームを入れてくれると(わたしはアイスクリームは昔から嫌いなのだ。でも女の子はアイスクリームを食べるのだ)教会の鐘の音がし、しばらくしてからは霧笛が聞こえてくる。

そういうところ。


神戸人にとっては神戸が唯一無二の街であり、就職で神戸を離れても「死ぬときは神戸で」と真剣に思っているのである。

神戸を日本から独立させて「神戸共和国を建国する」というウワサはたぶん100パーセントの冗談ではない。
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