今回は、聞き方のポイントをもうひとつ。
これは実際によくある場面ですが、子どもが触ってはいけないものを持っている…たとえば、大事にしてるガラスの置物としましょうか。
あなたはどう言うでしょうか。
「なんで、それを持ってるの、早く返しなさい」
それに対してビックリした子どもが
「だって…」と言いかけたとき
「だっても、なにも、ありません!」
「壊れるでしょ、はやく返しなさい!」
と怒りませんか。
おそらく、触ってほしくないものを触っているという行為に対して、「やめてほしい」というあなたの気持ちからでていることだと思います。
このとき、子どもがどうしてその置物を持っているか聴いてあげようという余裕は…ありませんよね。
そう普通はそうです。
でも、もしかしたら他の人(弟や妹、遊びに来ていたほかの子ども)が動かしていたのを元に戻そうと持っていたのかもしれない。
そうでなくても、子どもはそんなに大事なものだとは思っていないかもしれない。
私にとって「大事なもの」「触って欲しくないもの」ということを伝えたいあまりに、子どもの「言いたい事」を遮ってしまう。
もう、イタズラしてると決め込んでしまうんですね。
ここは、大人の私のほうが一歩譲って、「だって…」の後の言葉を聞いてあげませんか?
ほとんどは、「あぁそうなの」と好意的に受け取れない理由でしょうが、それでも一旦言葉にして「言いたい」「聞いてほしい」という気持ちを受け取ってあげることが出来れば。
ちょっとこのたとえではわかりにくいかもしれませんが、なんでもかんでも、「待って理由を聞く」ということを言いたいのではなく、「子どもが何か言いかけた時に、一旦最後まで聞いてあげる」ということが言いたいのです。
子どもの言うことなんて…と思われるかもしれませんが、こういう出来事に限らず、私達は普段、相手の言いたいことを半分も聞かずに、こちらの思惑に照らし合わせて「こうだ!」と思い込み、それに対して納得した気になったり、反論したりしてないでしょうか。
コミュニケーションでだいじなことのひとつに「尊重」という事があります。
ほんとうの「尊重」というのは難しいのですが、その入り口はこういうふうに「思い込まずに、最後まで聞いてみる」ということで、それだけで相手は「私を大事にしてくれている」と安心できるはずです。
逆の立場を考えればわかりやすいかもしれませんね。
言いたいことの途中で発言をさえぎられると、「これが言いたいのに」って気持ちが残ったままで、そのあとどれだけ理路整然と相手がはなししてきても耳には入らないんじゃないでしょうか。
ましてや、それが怒り口調であったり、感情的な物言いをされたら、誰だって耳を塞ぎたくなります。
その上で「聞いてんの!」などと言われても、聞けてないんだから黙るしかない。
こちらが黙っているのをいいことに、どんどん畳み掛けてくる。
あるいは聞けてないのに「聞いてるわ!」と逆切れして、元もとのはなしよりも相手が感情的なことを逆に責めだす…
「なんで、そこまで言われなあかんの」
負けっぱなしは嫌ですからね。
「じゃあ、私も言わせてもらいますけど…」
これは、大人同志だからまだ対等に近いところでやりあえますが、相手が子どもだとどうしても親の方が強くなります。
だから、ここはぐっと我慢して「聞いてあげる」ことを大事にしてあげてください。
そこで、聞きながら一息つく。
前に書いた「うなづき」「オウム返し」がそのときにできれば、あなたも落ち着けているでしょう。
ただ、相手は子どもですから、こちらが一生懸命聞こうと思っても、すぐに思い通りに動いてくれません。
そのあたりは、また次の機会に…。