私は8年8ヶ月前に乳癌の宣告をうけ、
乳房温存療法で手術をした。
1997年4月25日乳癌の宣告、
同年6月13日退院までの闘病記を、12回にわたり記してきた。
今日は、乳房温存療法手術について、
私の体験から書いていこうと思う。
【乳癌の病期は4段階】
★ステージⅠ→腫瘍の大きさが2cm以下
リンパ節に転移していない
★ステージⅡ→腫瘍の大きさが2.1cmから5cm
腋のしたのリンパ節に転移あり
★ステージⅢ→腫瘍の大きさが5.1cm以上
または腋の下のリンパ節転移が著しい
乳房皮膚や筋肉に腫瘍が広がっている
★ステージⅣ→他の臓器に転移がある
早い時期の乳癌、
すなわちステージⅡまでの乳癌のほとんどは、
例外を除いて、手術で治ることが多いといわれている。
一昔前まで乳癌の手術といえば、
乳房とリンパ節を全部切り取っていた。
それは乳癌は、
まず腋窩(えきか)リンパ節(脇の下)に転移し、
それが全身転移の原因を作ると言われてきたから・・・。
癌とリンパ節を確実に切除することにより、
癌が全身に転移することを防ぐと考えられていた。
だからステージⅠでもステージⅣでも筋肉まで切り取る手術がされてきた。
しかしこの手術を行っても、助からない患者がいることから、
この乳癌に対する考え方は否定されはじめてきた。
現代の考え方では、
乳癌は腋窩リンパ節転移をおこすと同時に、
全身への転移もおこしうると考えられるようになってきた。
すなわち、乳癌は局所から全身に段階的に進展するのではなく、
比較的早い段階で全身に広がる「全身病」と考えられるようになった。
この考え方だと、
たとえ乳癌に対して過大な手術を行ったとしても、
全身への転移をくいとめることができないということになった。
そこで、乳癌の手術は縮小化への道をたどってきた、と聞く。
その結果、乳房を残す手術、
すなわち乳房温存療法手術が脚光をあびてきたのだ。
現代では、
早い時期の乳癌、すなわちステージⅡまでの癌は、
例外を除けば「全身病」ではなく「局所病」として手術を主役に考え、
ステージⅢを超える場合は、
「全身病」として手術は脇役として考えるようになってきた。
乳房温存療法手術は、乳房を残せることに大きな意味があり、
しかも、乳房全摘出に匹敵する予後が確認されはじめてから、
今では急速に普及してきている。
★乳房温存手術は、乳癌とその周りの乳腺組織を切除し、
大部分の乳房を残す方法★
したがって乳房が残る代わりに乳癌も残る。
残った癌は乳管内にじっとしている癌、
すなわち非浸潤癌であることが多い。
手術後の放射線治療が効かなかったとしても、
生命予後に悪影響をおよぼさないばかりか、
またできた時に切り取ればいいと主治医からも説明を受けた。
でも私はこの考え方が理解できない。
温存した乳房に再発する場合を、温存乳房再発という。
この再発が起こる頻度は約1割らしい。
10人に1人は乳房を残すべきではなかったと後悔する代わりに、
10人に9人は乳房をとらずににすんでよかった、ということになる。
残念ながら、私は前者のほうだ。
「温存した乳房への再発は、
手術の時に切り取る量を増やせば癌の取り残しが減るために少なくなる。
乳房の形は、切り取る量が多くなればなるほど変形する。」
と、乳癌の本に書いてあった。
当たり前のことである。
私の場合、主治医が、
乳房ができるだけ変形しないように考えてくださったのだろうか?
運が悪かったのか。
10人の内の1人に入ってしまった。
でも、もし、私が手術前に発言できるのであれば、
「なるべく多めに切り取ってください。変形は覚悟していますから」と、
答えただろう・・・。
全摘出も覚悟していたのだから。
誰だって、命の保障が第一だから。
癌に侵された人にとって一番怖いのが再発転移である。
そのために、乳房の形が変形したり、
なくなったりする事は問題ではない。
【乳房温存手術ができる対象の患者】
1.乳房の中に1個しか乳癌がない場合
2.乳房の中に癌が広がっていない場合
3.腫瘤の大きさが3cmを超えない場合
4.放射線治療が受けれる場合
5.残した乳房への再発が容認できる場合
6.乳房温存を希望する場合
もし今後、左の乳房に癌ができても、
私は乳房温存療法は選択しないだろう。
術後の放射線治療のこと、
抗癌剤の服用、それらの副作用、再発転移の不安・・・等、
もう二度と経験したくない。
考えると、気が遠くなる・・・