11月。昼間はさわやかに朝晩は冷え込んで・・・これから神戸も紅葉が進んでまいります。
さて今日ご紹介するのは10月にお作りした練り切りです。
菓名「むべなるかな」
この言葉の語源は、その昔、天智天皇が琵琶湖南部の蒲生野(かもうの)(現滋賀県東近江市一帯)へ狩りに出かけた際、立ち寄られた奥島山で出会われた大変元気な老夫婦に健勝の理由をお聞きになられました。
その老夫婦は「この地で採れる無病長寿の果物を、毎年秋に食べているからです」と答え、果物を献上した。それを賞味された天皇が「むべなるかな(もっともだな)」と言われたことから、その果物が「むべ」と呼ばれるようになったと言われているそうです。
その後宮廷に毎年献上するように命じられた・・という記述を見ましたが、今はごく一部でしか収穫されない幻の果物とか・・。
「むべ」はアケビの仲間とか。
芦屋光風庵の近藤宗紀先生から、神無月に初めての茶事を行うので主菓子として「むべ」の練りきりをお願いしますとご依頼をいただきお作りしました。
写真を拝見するのみで、むべの実物もお味もわかりませんが、天智天皇が思わずつぶやかれた御言葉が名前の由来とは。なんとめでたい長寿の果物。
漉し餡を白い練りきりとむべのイメージの練りきりで包むように作りました。
「むべ」と聞くと
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ 文屋康秀 古今集
この一首を思い出します。
山から秋風が吹き降りてくると、たちまち草木がしおれ枯れ始める。なるほど、だから山風を草木をあらす「荒らし」「嵐」というのだなぁ・・
面白い歌だなぁと印象に残っていただけですが、まさかこの歌のなかの「むべ」という言葉から名前がついた果物があったとは。
ひとは初めて見たものに「名」をつけてきましたが、この名の由来もわかると面白いものだなぁと秋の空を眺めながら思いました。
近藤宗紀先生、光風庵にて初めての茶事、おめでとうございます。
大切な会のお菓子をお任せいただきありがとうございました。