『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎の新作です。
『夜市』の感想は以前書いてますが、とても面白く、次回作を期待していました。
新作が出たと知り、図書館で検索したらまだ置いてなかったので、久しぶりに購入のリクエストを出しました。そのあとすぐに入れてもらえたようで、さっそく読むことができました。もう予約も付き始めているようです。
今度は1冊まるまるの長編です。
地図にもなく、現世とは隔たれた町・穏(オン)。穏には、冬と春の間に「雷の季節」があり、その間人々は家に閉じこもり、季節が過ぎ去るのを待つ。「雷の季節」、戸外では鬼や魔物が闊歩すると言われていた。
穏で暮らす少年・賢也には両親がなく、唯一の家族であった姉も、ある年の雷の季節に行方不明になってしまった。また、姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。
しかし、穂高や遼雲という親友もでき、それなりに平穏だった賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?
『夜市』もそうでしたが、これもホラーというより、ホラーテイストの冒険ファンタジー、という感じです。
異界である穏で暮らし、穏を出る羽目になる賢也の話の合間に、通常の日本に暮らす少女「茜」の話が平行して描かれています。
最初のうちは、非日常のファンタジーに、現代日本の日常の描写が紛れ込み、賢也の話の続きが気になっているのに、茜の話も読まなくてはならないので、もどかしかったのですが、茜は茜で、ある事情から逆に穏を目指す羽目に陥ります。
だんだん二人が繋がっていくあたりが、上手くできていました。
『夜市』と同じくちょっと残酷な描写もありますが、「風わいわい」のキャラクターもいいし、『夜市』に収録されていた『風の古道』の雰囲気もあり、とても面白かったです。
『夜市』『風の古道』『雷の季節の終わりに』と3作とも、内容は異なりますが、“異界”に迷い込む話です。
この方の描く“異界”は、どれも怪しくて魅力的だなぁと思いました。
また、次作が楽しみです