友ちゃんブログ

適当で、いい加減・・・それが理想

夏の日の思い出 その2 ~口裏合せ~

2011年05月22日 00時14分37秒 | O村高校

前回の続きです。

胸近くまで沈みかけようかという時にキャプテン平○が「ボートから出ろ!」と叫びました。

えっ?ボートから出ろ!って言われても?!。

 

ボートが沈んでいったらどうなると? 一瞬皆がそう思ったんではないかしら。

再び平○が叫びます。

「ボートから出ろ!ボートは浮くけん!」

その当時ボートは木製でした。比重から考えても浮くのは当り前なんでしょうが、ボート部員はキャプテン平○だけでしたし、沈没の経験の無い私達はとっさには頭に浮かんできません。とりあえず「本当に大丈夫か?」と思いながらも指示通りボートから手を離しました。

すると沈み掛けていたボートが確かにゆっくり浮いてきました。と言っても浮き上がる訳ではありません。海面から沈まずにいる状態です。おぼれる者は藁をも掴む、じゃないですが、皆がボートの縁に掴まりました。

気付くと、オール、お尻を乗せる板(正式名称が分りません)、その他が波間に浮いています。羽○野が持ってきた弁当箱がキラキラと鈍い光を反射しながら沈んでいくのが見えました。

沈んでいく物は諦めて、オールとお尻を乗せる板を近くの者が集めます。それでも少し流されているものがありました。羽○野が「俺が取ってくる」と言うとキャプテン平○が「ボートから離れるな!」と止めました。しかし、彼は泳いで5~6メートル離れたその品を取ってきました。ボート関連の品物だけは確保。

 

さて、次に助けを求めなければなりません。

運が良いことに上陸した島には漁師さんとキャンプに来た大学生達がいます。そして、これまた幸いにもタコ引きのために持ってきたボートとオールがあります。

遠○と羽○野が空気を抜きかけていたボートに再び空気を吹き入れ、オールで漕ぎ出しました。島までの距離はどれくらいだったでしょうか。300m~500mぐらいじゃ無かったのかなぁ。

 

残された者は助けが来ること信じてボートと共に潮の流れに身を任せるしかありません。ボートに打ち付ける波が執拗に鼻に入るのが辛かったですね。反対側に掴まっている者はそうでも無かったようです。

赤○1人だけ水中メガネをしていましたので、皆から「おまえだけ~なんや~!」と非難を受けていましたが、彼は無言で顔は青ざめていました。

 

時間がどれくらい経ったのかが分りません。

頭上を着陸態勢に入った旅客機が飛んでいきます。

「お~い、助けてくれ~!」 「助けてくれ~!」

到底聞こえる訳はありません。ただ、この頃になると少し落ち着きを取り戻していますので叫び声も面白半分だったと思います。

 

「俺たち、謹慎処分やろね?」「間違いなかバイ」

 

そのうち誰かが「もしかすっと、オイ達は死ぬかも知れん。最後に好きな女の名前ば叫ぼーで」と言いだし、皆が納得。1人ひとり叫んだのでした。

「○○○~。好きだ~!」

私は誰の名を叫んだんでしょうか? 「○○こ」さんか「○○こ」さんだと思うけど。

 

そうこうしているうち、島から船が動き出しました。

「やった~、助かっぞ!」

 

漁師さんの船と大学生の船が助けに来てくれました。

私達はどちらの船に引き揚げられたか思い出せません。命の恩人だというのにすみません。

片方の船に人間とオール等を、もう片方の船にボートを横に繋げてもらいました。

船に引き揚げられ、助けを求めに行った2人は?と見ると、力尽きて死んだような状態、そしてかなり潮に流されていました。
後から2人に聞いた話では、それこそ真剣に漕ぎ、足が何度もつったそうです。なんせ、力尽きた誰かが海に沈んでいくかも知れませんからね。
少しでも早く助けを求めるため、聞こえそうな距離から大声で「助けてくれ~!助けてくれ~!」とオールを降りながら何度も叫ぶんだそうですが、その声も風に流されるのか中々届かず、島にいる大学生達も確かにこちらを見るんだけど、「ん?、あいつら何しとる?」としか取られなかったようです。そこでさらに真剣に叫び続けてやっと異変に気付いてくれたらしく、船が出て行くのを見送った後は力尽きて死んどった!と言っておりました。

 

さて、大草駅近くに揚げてもらった私達は、まずはボートの確保。
どうやら沈んだ船を横付けして船を走らせるのは抵抗が大きくて無理だったようで、一番近場の岸近くにいるとのこと。そこで、その場所まで道路を走り、線路を横断し、草の生い茂る中を進みました。岸へ寄せようとするのですが、波に船体が揺られて思うように引き寄せられません。押されたり引かれたりしながら、何とか岸に上げて固定。再び駅前に戻り、今度はオール等を近くの民家に置かせて頂くようにお願いをしました。

 

次は、この事態をどうやって誤魔化すか、の口裏合せです。
まず、顧問の先生に連絡はしないといけない、しかし、とても「大草沖で沈没した」などと正直には言えないので、「大草沖まで行ったが、波が酷くて帰れなくなった。そこで、船は近くに留めて、列車で帰ってきた」ということにしよう、となりました。また、ヤバイ証拠の品はすべて海の底に沈んだか、流されてしまっていますから、バレる心配はない。

 

その次は、どうやって大村へ戻るか。
もちろん、お財布は持ってきてません。持ってきていたとしても海の底に沈んでしまってます。

とりあえず羽○野と誰かがタクシーで戻り、そして羽○野が残りを迎えに戻る。

実は、羽○野は既に学校に内緒で普通免許を取得し、軽のワゴン車(結構オンボロだったような気がします)を持っていたのです。

そこで4人がタクシーで戻り、私を含めた4人は大草駅で待つことにしました。

 

しかし、よくタクシーさんも乗せてくれましたね。
だって、想像してください。上はTシャツ、下は競泳パンツに裸足(も居たと思います)のずぶ濡れの男子高校生達ですよ。しかも、料金着払い。
まぁ、事情が事情だけに理解してくれたんでしょうけどね。シートは大丈夫だったのかしら。
ところで彼らはどこで降りたんでしょうか?ボード小屋か、一番近い誰かの家か?お金はどうしたんでしょう。決して安い料金では無かったはず。これについては聞いてないなぁ。次会ったら聞いてみよう。

 

さあ、後に残された者は駅の待合のベンチに濡れたまま座り、タダひたすら待ち続けるだけです。大草駅前はそれ程車が通りません。エンジン音が近づく度に駅舎から出て見るのですが違うんです。
「はぁ~、違うバイ。まだやろか」
とにかく待ち長かったですね。
待っている間何を話したのかまったく思い出せません。
迎えが来たときは既に暗かったです。

 

車に乗り込み、とりあえず合せた口裏の再確認。
事の真相が学校側に知れれば謹慎は間違い有りません。

ボート小屋に到着して先ず海を見ました。月の光で見える海は皮肉なことに、凪いでいるじゃありませんか。「嘘やろ?!」って感じ。
小屋の中には先にタクシーで帰ったメンバーも待っていました。
さぁ、着替えて帰ろうとしていたら、誰かが(多分キャプテン平○)

「みんな校長室に来いって」

「え~えっ?」

 

その3に続く



 

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コメント (6)
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