面白古文書『吾妻美屋稀』の14回目、「なんでも・かでも喰競見立角力」です。
「いろんな喰う」を競って、番付けをしています。
上欄と下欄が対になっているので、横書き表記でブログアップします。
「なんでも・かでも喰競見立角力」
右半分と左半分に分けて載せます。
(上)勧進元 しかくらひ 観音 ・・・・
古くから観音は鹿の化身と考えられていた。『古本説話集』には、飢えた修行者が、倒れていた鹿の肉を食べて命びろいをしたが、聖観世音菩薩の両足の肉が削がれているのに気がついた、という話が載っている。
(下)差添人 すかくらひ まぬけ(スカくらい 間抜け)
大関
(上)大船かぶる 西瓜ずき
【大船】船の形に切った西瓜 【かぶる】齧(かじ)る
(下)ふとんをかぶる 寒の内
関脇
(上)ねこのふんくふ 菓子ずき(猫の糞喰ふ 菓子好き)【猫の糞】青大豆を使ったねじり菓子(州浜)
(下)こねこをくふ たんごずき(捏粉を喰ふ 団子好き)
小結
(上)うしおにをくふ 鯛の汁(潮煮を喰ふ鯛の汁)
【潮煮】鯛・かつおなどの魚介類を材料とした塩味の煮物。汁は通常の煮物より多めで、汁も味わう。
(下)おにころしのむ 在所酒
【鬼ころし】酒呑童子を酔わすほどの強い酒の意。江戸時代から、日本各地でつくられた。 【在所】地方、田舎。
前頭
(上)うしのしたをくふ 肴ずき(牛の舌を喰ふ肴好き)【牛の舌】カレイ、ヒラメの近縁種の扁平魚
(下)いたちをくふ 胡瓜ずき
【いたちキュウリ】大きくなりすぎて皮が黄色くなってしまったキュウリ
(上)つめよつてくふ 昆布ずき(爪選って喰ふ昆布好き)【爪昆布】昆布を削って残った端っこの部分の昆布。
(下)たかのつめくふ 唐がらしずき
【鷹の爪】トウガラシの一種。
(上)はなくそをくふ ねはんノ日(鼻糞を喰ふ涅槃の日)・・・二月十五日、釈迦涅槃の日に、子供たちが寺で、煎り豆やあられをお釈迦様の鼻糞(花供曽)と言って食べた風習。
(下)ミつちやをくふ 竹の子ずき
【みつちゃ】筍の異称。痘痕、あばたの意味もある。
(上)たいとふをくふ 安米かひ(大唐を喰ふ安米買い)【大唐】大唐米。安いが味は落ちる。
(下)たふをくふ 三月な(薹を食う三月菜)
【薹】花茎【三月菜】小松菜
(上)しうとめをくふ 吸物ずき(姑を喰う吸物好き)
【姑】蕗の塔
(下)かミなりをくふ 豆腐ずき
【雷豆腐】熱した油に崩した豆腐を入れて作る料理。油が撥ねて雷のような音がする。
(上)けんざきをくふ するめずき(剣先を喰うスルメ好き)【剣先】するめいか。スルメの最上級品。
(下)あたご山くふ かきずき
【愛宕柿】:愛媛県原産の渋柿
(上)こけらをくふ すしずき(鱗を喰う寿司好き)
【こけら】鱗(うろこ)
(下)いし/\をくふ 月見の夜
【いしいし】だんご。
(上)やりをくふ 下手上るり(槍を食ふ下手浄瑠璃)【槍を食う】客にやじられること。
(下)てつぽうくふ ふぐ汁ずき
【てっぽう】ふぐの別名。当たれば死ぬ。
(上)行司
人をのみこむ 男達
【飲み込む】見くびる。 【男達】男の面目を立て通したり、意地や見えを張ること。
三味せんかぢる 引ならひ(三味線齧る引習ひ) 【齧る】三味線をひく 【引き習ひ】(三味線を)引く練習
炭やいてくふ 土佐日向(炭焼いて喰ふ土佐日向)・・・備長炭は、古くから、粉にして食されていた。
(下)頭取
船つくつてくふ 江の子嶋・・・江之子島(現、大阪西区)には、多くの船大工がいて、造船で生計をたてていた。
物くひのよい 女ずき
【ものくい】女性と情交を結ぶこと。
あてミをくわす 剣術者
【当身(あてみ)】代金を他人に払わせること。
世話人
(上)たこずきハ めしをくふ(蛸好きは飯を食う)・・・タコの卵は米粒に似た形状から「たこまんま」とも呼ばれている。
生貝ずきハ わたをくふ(生貝好きはわたを喰う)
鯛ずきハ 目玉をくふ(鯛好きは目玉を喰う)
豆腐ずきハ やつこをくふ(豆腐好きはヤッコを喰う)
(下)へたな職人 しりをくふ
【尻を食う】物事の後始末を押しつけられる。また、とばっちりを受ける。
ゑびずき わたをくふ
薬ぐひに しヽをくふ(薬喰に猪を食う)
【薬喰】江戸時代、滋養をつけたい冬期に「薬」と称し、猪や鹿、兎などの肉を密かに食べていた。
あほうに へをかます
【へをかます】約束をやぶる
名乗上
さるやとらや大手もかぶるまんぢうくひ(猿や虎や大手も噛る饅頭好き)
【猿屋饅頭】松屋町筋(現、大阪中央区)にあった安価な菓子。
【虎屋饅頭】古くからある酒饅頭
【大手饅頭】岡山の名物饅頭
古歌
うし馬に塩付てくふ馬士よりも
てら子をとつて食ぞおそろし
【馬士】馬方 【寺子取】寺子屋から弟子を取って裁縫などを教えること。辛い目に合ったり、行方不明にもなった子供も多かった。
正直、よくこんなものがわかったな、と自分で自分を褒めてやりたい気分です(^.^)
「つめよつてくふ 昆布ずき」は
「詰め寄ってくふ 昆布好き」だとばかり思ってました。寒い冬に皆で肩寄せ合って昆布を喰う人々のイメージ(^^; でも、これって面白くもおかしくもない(^^; ・・・・ドタン場でひらめきました。ひょっとして、爪???
「爪選って喰ふ 昆布好き」
とは、お釈迦様でも気がつかないかもしれません。
昆布を削って残る品が爪昆布で、珍味とか。昆布好きならずとも、一度食べてみたいです(^.^)
なんのことか、分らなかったものが多かったです(><)
今の言葉の意味などとも随分と違っていますし、風俗も違っているのですね。
これは、調べるのも大変だったことでしょう!
昔の菓子好きは、本当に猫の糞を食べたのかな?と思いました。
一番の極め付きは、昆布好きです。どう考えても、「詰め寄って食う 昆布好き」としか浮かびません。ぎゅうぎゅうに肩を寄せ合って食うのが昆布好き、とブログアップの直前まで・・・土壇場で、ちょっと待て、ひょっとしたらと爪を手掛かりに調べてみたら、マニアックな爪昆布にたどり着きました(^.^)
楽屋裏は悲喜こもごもですね(^^;
今回は読んでやろうと!と見ましたが最初の一行目で無理でした笑
鹿くらいの話は想像力というよりも教養でしょうし、やはり想像力と教養両方なければ解読は難しいようにおもいます。
今回のは言葉遊びみたいな感じなのですかね??食うが色んな意味で使われていで面白いかったです(^^)