月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルデバラン・20

2015-07-02 03:59:21 | 詩集・瑠璃の籠

目は心の窓と言うが
おまえのその目が
自分はこの人生とは
全く関係ないと言っている
では おまえのその人生を
誰が生きているというのだ

屈折する光を浴びて
解毒剤をなめながら
青い食器用洗剤を満たした水槽に
貝の中に隠した本当の自分自身を飼っている
ときどき餌をやれば
生きているだろうと
たかをくくっていたら
ある日突然 その自分自身が
生きたまま腐れ落ちて
まるで違うものになった

偽物の人生と言うものは
所詮はそうならざるを得ないのだ
ずいぶんとたくさんの工夫をして
嘘を真実にしようとがんばっても
結局は何にもなりはしない

浅はかな愚か者よ
苦い顔をして
太陽の中に隠れている
神のまなざしを浴びながら
カビの生えたジョークの中に逃げて
いつまでごまかしているつもりなのだ
もうだれも笑いはしないというのに

現実は たっぷりと嘘を吸いこんだ
大きな海綿となっておまえの頭に
岩のように落ちてくる
今からでは遅いかもしれぬが
一縷の望みを抱いて試してみよ
嘘ばかりの自分を脱ぎ捨て
小さくとも 馬鹿であろうとも
本当の自分の中にある消えない灯火を目印に
生きてゆけ
どんなに苦しくとも
生きてゆけ



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