月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ショルト・2

2015-07-22 04:37:06 | 詩集・瑠璃の籠

あらゆる未来が溶けている
幻想の海をかき混ぜながら
白い天使のボートが走る

何でも言うことを聞く
青い猫のロボットが住んでいた
未来の国は存在しない
何もかもを許し
放蕩息子の帰還を喜んでくれる
やさしい父は隠れて見えない

劇の終わりを知らせる
ラッパは鳴り続けている
なのにおまえたちにはまだ何も聞こえないのだ

信じていた人間の未来は
どこに行った
なりたかった自分と言う
偽物の宝石で飾った白い仮面に
吸い取られたおまえの黒い眼球から
流れる涙と一緒に消えて行った

一体だれがわたしなのか
一体どれがおまえなのか
今はわからずともよい
偽物だろうが本物だろうが
何をする勇気もないものは
わたしたちの邪魔をしないように
すみでおとなしくしていることだ

あらゆる未来が溶けている
幻想の海をかき混ぜながら
白い天使のボートが走る

勇の者は片肌をぬいで銛をかまえ
一撃で白い巨鯨をしとめようと
海をにらんでいる

何がおまえたちの未来なのか
だれがお前たちの未来を創るのか
人間は何もせずに
すべてを皆にやってもらうのか
まあそれもよい

わたしはショルト
おまえたちになど興味はないが
三度の死を超えねばならぬほど
すさまじい壁に立ち向かってゆくことが
何をするよりもうれしい男である

おまえたちのために
やるのではない
激痛を伴う魂の脱皮に叫びながら
全てを己が力でやりとげ
誇り高き己の旗を神の前に掲げ
血まみれのまま弱虫どもを振り返り
大笑いするのが
好きなのだ

馬鹿な奴らめ



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