月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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サビク・9

2015-07-01 04:37:13 | 詩集・瑠璃の籠

白鳥が飛んできて
栓をぬいた
愛を溜めてある海の
栓をぬいた

人間の財産が
どんどん どんどん
減ってくる
庭の薔薇が顔をそむけ
風に秘密をささやく

もう二度と 人間は
愛をただで 食べられない
食べれば食べるほど
盗みの罪を積むことになる
これはまだ秘密のうちの一枚だが
人間にもわかるように
少しずつ知らせてやっておくれ

薔薇のささやきに
風はすぐさま空に飛びだし
見えない鈴を鳴らしながら
真実の砂を
人間の耳にほうり込んでゆく

耳が妙にかゆいと感じたら
気をつけるがよい 人よ
それは何かの大事な知らせかもしれぬ
もう二度とは蘇らない愛からの
最後の愛のひとすじかもしれぬ

裏切るはずがないと思っていた
愛がおまえを裏切る
なぜなら それが愛だからだ
最後の おまえへの愛だからだ
愛を裏切り続けてきた おまえへの

白鳥が飛んできて
栓をぬいた
人間への愛を溜めてある海の
栓をぬいた
今さら誰が気付こうと
もう間に合わない




コメント
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