月の鎌のごとき
白い炎の刃にて
人類のなした
臭い糞の山を浄めてゆく
汚いものを捨てるために
一体何を作ったのだ
おとぎ話の夢に似せた城壁を造り
虹を手繰り寄せて作った幻で
全てを包み隠し
悪臭をごまかすために
橘の木を嫌と言うほど植えた
だが橘はたちまち枯れて消えていく
それならと人間は
人間の鼻に薬と偽って泥を詰めた
人間はまだ糞をする
人間はまだ糞を積む
人間はまだ糞を吐く
呆れた馬鹿め
どのようにがんばろうとも
これを片付けるのは
おまえたちだけではできはしない
終末の大烏賊が空を静かに泳いでいる
あれはもう
人間の世が終わったというしるしなのだ
なのにおまえたちはまだ気づくことができない
豚のように惰眠をむさぼり
明日は倒れるかもしれぬ
真鍮の塔の中でやすらいでいる
阿呆らめ 見るだけで目が腐りそうだ
どこまでも馬鹿をやってやり続けた
その結果がおまえたちの目を刺す前に
できるだけは浄めておいてやろう
驚きと絶望が
おまえたちの魂をつぶさぬように
おお 見上げれば
空の月に 暈がかかっている
あれを きぬとしてまきとり
あの人への土産としよう
美しい月の清らかな香りで
眠っているあの人の寝具を覆えば
あの人の夢はまた美しくなるだろう
すべての人間を助けようとしていた
あの人の真心を
人間はだれもふりむきはしなかった
冷たい風にも喜びのほほ笑みで答え
すべてに耐えて
やろうとしていた人の心を
月の暈の香りは
そんなあの人の
胸に入った痛い割れ目を
また一つ 癒すことができるだろう