月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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サダルメリク

2015-07-24 05:04:47 | 詩集・瑠璃の籠

砂漠に落ちた
一粒の真珠を目指して
ひとりの男がやってくる

阿呆ばかりの暗闇の世界で
天使だけが
自ら光を放っていた
なにもかもはすべて
砂漠に植えられた
一粒の真珠の種から生えてきた

砂漠を花園にしたのは誰か
暗い極地を森林に変えたのは誰か
絶望の壁にぶつかり
自ら傷つきながらも壁を打ち破り
希望の種をつかみ取ったのは誰か

それは女だった

小さな桃の実のような
暖かく柔らかな子宮を持った
ひとりの美しい女だった

古い殻を脱ぎ捨て
全て新しきものとなれ
人類よ
天使を崇めてはならぬ
それは愛し敬するものではあっても
神のように崇めるものではない
崇めてはならぬものを崇めて
罪の意識から逃げてはならぬ

明らかな過ちを認め
すべてをやり直せ
おまえたちが
思いどおりにならない現実に
イライラしている間に
美しい女は果てしもない高みに
どんどん逃げてゆく
もう誰も届かないところに
行ってしまう

すべてが終わってから気付いたとて
何にもなりはしない
馬鹿が焦って取り戻そうとして
あらゆる所業をくりかえしても
自分の築いた砂の城が
ぼろぼろと崩れていくだけだ
愚か者め

愛する者は愛だけで
なにもかもをやろうとするが
おまえたちは
金をもらわなければ
何もしようとはしないのだ

華やかな文明の中で
ぬるま湯のような幸福感にしびれながら
魂の城が傷んでくる音におびえる
蛙のようなものが自分の中にいる
それが何者なのかを
すこしは真剣に考えるがよい

苦悩の薬をお前たちの影に溶かし
少しは現実というものを
見せてやらねばなるまい
何をやったのか
何をやらなかったのか
わかることができねば
おまえたちは何もできない

出来る限り
痛くないようにしてやる
だが
熟練の看護師の採血のような
小さな痛みではありえない

試練の門をたたけ
人類よ
悪魔の鎖を引きちぎり
真実の門をたたけ
どのように苦しくとも
逃げてはならぬ
自己存在の主体に目覚め
自ら自分の道を開いてゆくのだ

われわれは天使存在
あきれ果てた人間の馬鹿を
鍛え直すためにやってくる
嵐のような正義がやってくる
待っているがよい





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