緑の山を 嘘で染めて
これは穴だと狐が言う
誰も信じる者はいないのに
繰り返し 繰り返し
狐が言う
これは穴なのだ
山みたいに見えるのは
ちょっとしたわけがあるのさ
どんなわけがあるのかって
そんなこと
女の子がいなくちゃ
おれはわからない
女の子がいないんだ
女の子が
おれを助けてくれていた
女の子
みんな逃げちゃった
ブスだって馬鹿にして
おれのために
好きなように働かせてたら
いつの間にかみんないなくなった
そしたら おれ
何にもできない馬鹿になってたんだよ
緑の山を指さして
これは穴だっておれが言ったら
女の子がみんなで
そうよ そうよ
これは穴なのよ
山みたいに見えるけど
本当は穴なのよ
みんなでそう言ってくれたから
ぜんぶおれの思いどおりになってたんだよ
馬鹿みたいだ
ブスだからって 馬鹿だからって
いい加減にやってたら
いつの間にかみんな
女の子がいなくなってたんだよ
そうしたら おれ 何もない
誰もおれを助けてくれない
嫌なことばっかり言って
馬鹿にしてたら
いずれは逃げられるぞって
だれかに言われたことあるけど
時々 おまえけっこうかわいいじゃんて
言ってやったら
何とかなると思ってたんだよ
女の子がいない
女の子がいない
ひとりもいない
もう一度帰って来てほしいなら
行って謝って来いって言われるけど
そんなことしたら
女の方が偉くなって
おれが馬鹿になるじゃないか
緑の山を 嘘で染めて
これは穴だと狐が言う
もう誰も信じる者はいないのに
まだ狐は言う
女の子が いないんだ