
11日。赤木沢遡行当日。
朝5時に起床、天気予報を見ようと思ったら、静岡で起きた地震の報道ばかり。
小屋に張り出された「曇り。降水確率20%、10%」だけが頼りだが、
どうやら雨は降らないようだ。
事実、青空が出ている。雲量3~4という感じか。
小屋前の赤い吊り橋から、奥の廊下の流れを見下ろすと、昨日はあんなに
濁り、ものすごい水量だった沢が、いつもの清流に戻っているではないか。
確かに水量は若干、多いようだが、これはいけるゾ!
全員、身支度を整え6:00に出発する。

奥の廊下は、浅いところを狙って何度か渡渉しながら遡る。さっそく、股下まで
水につかる。いろんなサイトを読んで学習してきたが、この時点でこんな
苦労した例は見なかった。

大きな滝はないものの、白く飛沫を巻き上げる流れで、2ヵ所ほど、ちょっと手ごわかった。
最初のへつりでは左岸を行くイエティとK菅氏が、美しいエメラルド色の淵にドボン。

右岸を歩いていたMr.Dashは、腿まで水に浸かり、微妙なスタンスでなんとかトラバースできた。

ここで、単独行でヘルメットもしていないツワモノに抜かれる。
沢中で出会ったのは、この人だけだった。

続いて現れた4mほどの滝。イエティは右岸の乏しいホールドを巧みにとらえ、
滝上に出たが、残る5名は右岸を高巻きした。ここの巻きは踏み跡もあるが、
何人か、取り付きの涸れルンゼを直上し続けて、えらい上まで登ってしまっていたので、
慌てて大声で呼び戻した。
ほどなく赤木沢と源流本流の二股だ。8:30。ちょっと計画より遅れ気味だ。
朝日にきらめく本流の2m滝(ミニ・ナイヤガラと書いている人もいる)の
美しいこと!

右の水量の少ないほうが、赤木沢だ。さっそく左岸をへつらなければならない。
事前学習で要注意箇所と思っていたが、ここは実に簡単だった。
赤い岩の長いナメに感嘆したのもつかの間、ほどなく目に飛び込んできたのは、
見事な最初の10m斜瀑。メンバーから歓声があがる。
明るく開けた地形。青空から突然湧き落ちてくるかのような白い軌跡は、末広がりに
エメラルドの滝壺に吸い込まれていく。
そうだ、この景色を見に来たんだ!

大きな斜瀑は立て続けに幾つも現れる。もう、感激きわまる。

滝はどれも簡単に登れるので、めいめい、好きなところを上がっている。
まだまだ息もつかせぬ滝の連続。
長い斜瀑のすぐ上に、トユ状の美しい滝がある。ここはすぐ右を巻きながら登る。


この上の2条滝を過ぎると、やや谷幅は狭まる。誰かが「鈴鹿の沢に似ている」と
書かれていたが、確かに元越谷に似ている。

長瀞に注ぐトユ状、続いて幅広滝。
いずれも快適にこなしていくと、再び谷は開け、明るくなる。
二股があり、右からも水量の少ない斜瀑がかかっている。
ここは水量が少ないときはほとんど涸れているような例も他サイトで見た。

左から10mほどの枝沢の滝(写真は上流側から振り返って撮影)をみると、
またしばらく、斜瀑のオンパレード。

機嫌よく遡行していたら、眼前に大きな岩壁が迫ってきた。

流れは右に変化しており、その奥が、赤木沢最大の、30mの大滝である。
大迫力でしばし息を呑む。細かい飛沫がミスト状に漂い、集合写真を撮るだけで
体が湿ってくる。マイナスイオンに全身を包まれ、”天国感”がさらに強まる。

この沢、最大の難関は、大滝の高巻きだ。
右岸の草付きを登るか、左岸の岩場を攀じるか。両者の事例がある。
イエティは岩をやりたかったようだが、一般的とされる草付きに活路を求めた。

Y井氏がザイルも持たずに登り始めたので、イエティに後を追ってもらう。
イエティとY井氏は、足元が不安定な急斜面を果敢に攻め、上部の立ち木にビレイ、
ザイルを下ろしてくれた。
これまではMr.Dashがリード役を務めることが殆どだったが、
今では役者を替えても十二分に対応できる。本当に楽になった。
ここの高巻きでは踏み跡を発見できず、越えるのに1時間を要したが、
猛烈なブッシュを掻き分けて、ちょうど二股のところに降り立った。
12:08。
右の流れを採る。水量はかなり減ったが、5m級の滝が連続して面白い。
無数の小滝を登っていくと、とうとう詰めの様相。

草原の真っ只中、幅1m程度の小川になる。
両側はお花畑で、これまた素晴らしい。カメラ小僧、至福の瞬間である。

フワフワの苔に覆われた湧水地が、黒部源流の最初。
空いた水筒に、この世で一番清らかな水を汲む。
イエティは汲んだ水を頭からかぶり、なぜか「寒い寒い」と言っていた。
すぐに水は尽き、踏み跡もおぼつかなくなる。目視とGPSで、
赤木岳と北ノ俣岳の間のコルを目指す。
時折、ハイマツの中を強引に突っ切りながら、最後は雪渓の上をトラバース。
ついに、稜線の登山道に出合った。
14:34。結構、時間がかかったが、天国は本当に期待を上回るものだった。
この体験は、しばらく反芻して楽しめるに違いない。
あとは一般登山道。一気に太郎平小屋までと思っていたら、
途中でライチョウに遭遇したり、チングルマの群落が綺麗だったりいて、
またまた遊んでしまう。

結局、太郎平小屋到着は16:45。
幸い、ここでも個室に恵まれたが、みんなアドレナリンがいっぱい
分泌されて興奮がさめないのか、すぐに眠りにつく者はいなかった。
お互いの健闘をたたえ、生ビールで乾杯!!

日が沈むと、空には満天の星空。天の川がハッキリ見えている。
感動して眺めていたら、カシオペア座の横を流れ星がスーッ。
そう、明日がペルセウス座流星群の
緑色の軌跡が1秒ほど、ぼーっと痕となって残っていた。
T橋クン、K菅クンは、明かりがともる小屋や、薬師岳のシルエットと星空を
撮ると云って一眼カメラを持ち出し、消灯時間まぎわまで部屋に帰ってこなかった。
6畳間に6人で、ザックを置くスペースが足りなかったので、Mr.Dashが
押入れで寝たが、おかげで熟睡。夢も見なかった。
12日。
すっかり晴れ渡った中、剱岳や白山を望みつつ下山。
これは立山・剱の山並み。

これは薬師岳。面白い雲が出ていた。

またもカメラをパチリパチリで、時間がかかって仕方ない。
折立まで地図のコースタイムと同じ3時間もかかってしまう。
下山中は、やはりヘルメットやカラビナを下げたパーティは目立つようで、
これから登ってくるハイカーに、よく声をかけられた。
帰りも亀谷温泉に立ち寄り、3日間の汗を流し、
行きと同じように徳光ハイウェイオアシスに寄って、またも酒を買い込む。
初めの大雨のことはすっかり忘却の彼方。
忘れられない、すばらしい山行となった。
朝5時に起床、天気予報を見ようと思ったら、静岡で起きた地震の報道ばかり。
小屋に張り出された「曇り。降水確率20%、10%」だけが頼りだが、
どうやら雨は降らないようだ。
事実、青空が出ている。雲量3~4という感じか。
小屋前の赤い吊り橋から、奥の廊下の流れを見下ろすと、昨日はあんなに
濁り、ものすごい水量だった沢が、いつもの清流に戻っているではないか。
確かに水量は若干、多いようだが、これはいけるゾ!
全員、身支度を整え6:00に出発する。

奥の廊下は、浅いところを狙って何度か渡渉しながら遡る。さっそく、股下まで
水につかる。いろんなサイトを読んで学習してきたが、この時点でこんな
苦労した例は見なかった。

大きな滝はないものの、白く飛沫を巻き上げる流れで、2ヵ所ほど、ちょっと手ごわかった。
最初のへつりでは左岸を行くイエティとK菅氏が、美しいエメラルド色の淵にドボン。

右岸を歩いていたMr.Dashは、腿まで水に浸かり、微妙なスタンスでなんとかトラバースできた。

ここで、単独行でヘルメットもしていないツワモノに抜かれる。
沢中で出会ったのは、この人だけだった。

続いて現れた4mほどの滝。イエティは右岸の乏しいホールドを巧みにとらえ、
滝上に出たが、残る5名は右岸を高巻きした。ここの巻きは踏み跡もあるが、
何人か、取り付きの涸れルンゼを直上し続けて、えらい上まで登ってしまっていたので、
慌てて大声で呼び戻した。
ほどなく赤木沢と源流本流の二股だ。8:30。ちょっと計画より遅れ気味だ。
朝日にきらめく本流の2m滝(ミニ・ナイヤガラと書いている人もいる)の
美しいこと!

右の水量の少ないほうが、赤木沢だ。さっそく左岸をへつらなければならない。
事前学習で要注意箇所と思っていたが、ここは実に簡単だった。
赤い岩の長いナメに感嘆したのもつかの間、ほどなく目に飛び込んできたのは、
見事な最初の10m斜瀑。メンバーから歓声があがる。
明るく開けた地形。青空から突然湧き落ちてくるかのような白い軌跡は、末広がりに
エメラルドの滝壺に吸い込まれていく。
そうだ、この景色を見に来たんだ!

大きな斜瀑は立て続けに幾つも現れる。もう、感激きわまる。

滝はどれも簡単に登れるので、めいめい、好きなところを上がっている。
まだまだ息もつかせぬ滝の連続。
長い斜瀑のすぐ上に、トユ状の美しい滝がある。ここはすぐ右を巻きながら登る。


この上の2条滝を過ぎると、やや谷幅は狭まる。誰かが「鈴鹿の沢に似ている」と
書かれていたが、確かに元越谷に似ている。

長瀞に注ぐトユ状、続いて幅広滝。
いずれも快適にこなしていくと、再び谷は開け、明るくなる。
二股があり、右からも水量の少ない斜瀑がかかっている。
ここは水量が少ないときはほとんど涸れているような例も他サイトで見た。

左から10mほどの枝沢の滝(写真は上流側から振り返って撮影)をみると、
またしばらく、斜瀑のオンパレード。

機嫌よく遡行していたら、眼前に大きな岩壁が迫ってきた。

流れは右に変化しており、その奥が、赤木沢最大の、30mの大滝である。
大迫力でしばし息を呑む。細かい飛沫がミスト状に漂い、集合写真を撮るだけで
体が湿ってくる。マイナスイオンに全身を包まれ、”天国感”がさらに強まる。

この沢、最大の難関は、大滝の高巻きだ。
右岸の草付きを登るか、左岸の岩場を攀じるか。両者の事例がある。
イエティは岩をやりたかったようだが、一般的とされる草付きに活路を求めた。

Y井氏がザイルも持たずに登り始めたので、イエティに後を追ってもらう。
イエティとY井氏は、足元が不安定な急斜面を果敢に攻め、上部の立ち木にビレイ、
ザイルを下ろしてくれた。
これまではMr.Dashがリード役を務めることが殆どだったが、
今では役者を替えても十二分に対応できる。本当に楽になった。
ここの高巻きでは踏み跡を発見できず、越えるのに1時間を要したが、
猛烈なブッシュを掻き分けて、ちょうど二股のところに降り立った。
12:08。
右の流れを採る。水量はかなり減ったが、5m級の滝が連続して面白い。
無数の小滝を登っていくと、とうとう詰めの様相。

草原の真っ只中、幅1m程度の小川になる。
両側はお花畑で、これまた素晴らしい。カメラ小僧、至福の瞬間である。

フワフワの苔に覆われた湧水地が、黒部源流の最初。
空いた水筒に、この世で一番清らかな水を汲む。
イエティは汲んだ水を頭からかぶり、なぜか「寒い寒い」と言っていた。
すぐに水は尽き、踏み跡もおぼつかなくなる。目視とGPSで、
赤木岳と北ノ俣岳の間のコルを目指す。
時折、ハイマツの中を強引に突っ切りながら、最後は雪渓の上をトラバース。
ついに、稜線の登山道に出合った。
14:34。結構、時間がかかったが、天国は本当に期待を上回るものだった。
この体験は、しばらく反芻して楽しめるに違いない。
あとは一般登山道。一気に太郎平小屋までと思っていたら、
途中でライチョウに遭遇したり、チングルマの群落が綺麗だったりいて、
またまた遊んでしまう。

結局、太郎平小屋到着は16:45。
幸い、ここでも個室に恵まれたが、みんなアドレナリンがいっぱい
分泌されて興奮がさめないのか、すぐに眠りにつく者はいなかった。
お互いの健闘をたたえ、生ビールで乾杯!!

日が沈むと、空には満天の星空。天の川がハッキリ見えている。
感動して眺めていたら、カシオペア座の横を流れ星がスーッ。
そう、明日がペルセウス座流星群の
緑色の軌跡が1秒ほど、ぼーっと痕となって残っていた。
T橋クン、K菅クンは、明かりがともる小屋や、薬師岳のシルエットと星空を
撮ると云って一眼カメラを持ち出し、消灯時間まぎわまで部屋に帰ってこなかった。
6畳間に6人で、ザックを置くスペースが足りなかったので、Mr.Dashが
押入れで寝たが、おかげで熟睡。夢も見なかった。
12日。
すっかり晴れ渡った中、剱岳や白山を望みつつ下山。
これは立山・剱の山並み。

これは薬師岳。面白い雲が出ていた。

またもカメラをパチリパチリで、時間がかかって仕方ない。
折立まで地図のコースタイムと同じ3時間もかかってしまう。
下山中は、やはりヘルメットやカラビナを下げたパーティは目立つようで、
これから登ってくるハイカーに、よく声をかけられた。
帰りも亀谷温泉に立ち寄り、3日間の汗を流し、
行きと同じように徳光ハイウェイオアシスに寄って、またも酒を買い込む。
初めの大雨のことはすっかり忘却の彼方。
忘れられない、すばらしい山行となった。