5月12日付の朝日新聞朝刊の記事をネタとして使いますので、ブログの話題としてはどうかとも思うのですが、やはり書かざるをえません。
「秋の大型連休 できるか 今ある祝日3日分、10月に 民主PT検討」という記事が、12日付朝刊4面14版に出ています。読んだ瞬間に疑問符がいくつも浮かび上がりました。
他の国のカレンダーをじっくり見たことがないのでよくわからないのですが、日本は祝日の多い国ではないかと思います。実際、確認してみると祝日が全くないのは6月と8月くらいです。
上記記事によると、祝日の数は変えないのですが、2014年から、10月に祝日を集めて秋にも大型連休をつくるというのです。実は、この構想自体が2009年に自民党・公明党連立政権の下でも検討されていましたので、今の民主党・国民新党連立政権の性格が「何だかよくわからなくなっている」ことの典型例となっているとも評価できるでしょう。
まだしっかりと固まった訳でもないので、何とも言いようがないのですが、たとえば、海の日(現在は7月第3月曜日)、敬老の日(現在は9月第3月曜日)、体育の日(現在は10月第2月曜日)を実質的に10月に移動するのです。朝日新聞の記事では「秋の大型連休のイメージ」として、2014年10月11日(土)~10月15日(水)まで5連休とするというようなことが書かれています。つまり、13日(月)~15日まで祝日を集めるのです。しかも、やろうと思えば16日(木)と17日(金)に休暇を取り、18日(土)と19日(日)も休んで9連休にしてしまう、ということも可能です。
別の記事には11月1日を「古典の日」として祝日にしようという動きがあることも報じられています。紫式部がその日記(有名な紫式部日記)で初めて源氏物語に言及したのが11月1日だったからという、わかったようなわからないような理由がつけられています。これ以上、祝日を増やしてどうする気なのか、と思うのですが、大体において観光だの何だのという理由なり説明なりが加えられます。
秋の大型連休の構想に戻ると、上記記事にはもっとわからないことが書かれています。そのまま引用すると「この5連休は全国一律とはせず、地域ごとにずらす構想もある」という部分です。「交通渋滞の緩和、ホテルやレジャー施設の混雑解消がねらいだ」というのですが、バブル経済期のリゾート構想と変わらないような発想です。全国一律としているのもそれなりの理由はあるはずです。地方分権とは言いますが、こんなことは地方分権と無関係です。市制記念日などではないのですから、連休の期間が地域によって異なるのでは、経済などが滅茶苦茶になる可能性が高いでしょう。記事にも、2010年12月の世論調査(内閣府による)の結果として「全国一律の連休でないと、家族・親戚、知人と休みが合わなくなる」という意見が多かったと書かれています。当然のことです。
大学に勤務し、講義などを担当する者としては、祝日の増加や移転には反対せざるをえません。これにはいくつかの理由があります。
一つは五月病です。これが日本独特のものであるかどうかは知りませんが、春の大型連休で調子が狂うことは事実です。秋にも大型連休となると、社会人はともあれ、学生の調子は狂うでしょう。十月病が出ることでしょう。
二つ目は、仮に秋の大型連休ができるとしても、大学の場合は授業日とせざるをえない日が多くなると思われることです。
ここ10年か20年の間に、祝日が増え、とくに月曜日が祝日とされることが多くなりました。そのため、学校の種別を問わず、時間割などにしわ寄せが来ています。月曜日が祝日であるから学校が休みとなると、その分、授業回数が減ります。どこかで調整をしなければなりません。週休1日制であればまだ楽に調整ができますが、2日制となると大変です。
また、ここ数年、文部科学省は各大学に対し、講義日数・回数の確保を厳格に要求しています。単位制の本来の意義からすれば当然ではありますが、これによって、祝日であっても平日と同じく講義を行うということが多くなりました。月曜日はとくにその傾向が強く、7月の海の日や10月の体育の日などは、祝日ですが講義日であるという大学が少なくありません。本務校の大東文化大学の場合、2012年7月16日(月。海の日)、9月17日(月、敬老の日)、12月24日(月。振替休日)は平常通りの講義日です。
困ったことに、大学によって個々の祝日の扱い方が違っています。最近では4月30日(月。振替休日)がそうでした。大東文化大学では暦の通りに休日でしたし、早稲田大学もそうでしたので、図書館は閉まっていました。ところが、国学院大学や東洋大学では講義日でした。私は、金曜日に東洋大学大学院法学研究科で、土曜日に国学院大学法学部で、それぞれ1コマずつ講義を担当しています。このため、4月30日は講義日であったかどうか、頭が混乱しかけたのでした。結局、確認の上で中央大学中央図書館へ行きました(やはり講義日であったので、図書館も開いていました)。
三つ目は、大型連休が増えるとしても、それほど経済効果が大きいのかという疑問です。休日が増えたからと言って財布が緩むと考えるのは単純に過ぎるでしょう。むしろ、支出は渋くなる可能性もあります。私自身、このところの大型連休は、今年を除けば近場(川崎市内、東京都内、横浜市内)へ行く程度で済ませています。自由が丘や三軒茶屋なら片道150円、六本木なら片道350円、青葉台なら片道210円、二子玉川なら片道120円か徒歩か。こんなところでしょうか。昨年は震災の影響もあって連休中も仕事の日がありました。
仮に観光などの需要が増えるということでしょうが、車社会が発展した現在では、どこの観光地へ行くにも自家用車ということが多いでしょうから、遠方からの観光客は期待しにくくなっています。公共交通機関が衰退していれば日帰り客が多いからです。私も、大分市に住んでいた頃、福岡、佐賀、熊本、宮崎といった所には日帰りで行きました。車を運転するので、宿泊する理由がないのです。また、川崎市に住んでいる現在では、たとえば熊本県の黒川温泉に行こうという気が起こりません。宿泊料金もかかりますし、列車が通っていないようなところへ行くのが大変であるからです。バスがあるとしても本数が少ないでしょうから、結局はタクシーかレンタカーということになって、さらに支出が増えます。このように考えると、どこまで収入があり、経済状態に余裕があるか、ということになります。
東京都内や、各地の郊外にある大型ショッピングモールの来客は増えるかもしれません。しかし、それ以外の所は、あまり期待しないほうが身のためであると思っています。
いずれにしても、大型連休を増やすことに、それほど大きな意味があるとも思えません。節電云々と言うのであれば、夏休みや冬休みの活用を考えるほうが効果的でしょう。