ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

本屋のない市町村

2012年08月13日 10時21分55秒 | 社会・経済

 昨日のことになりますが、東京新聞のサイトに「増える  書店ゼロの街」という記事が掲載されており(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012081290070300.html)、気になったので読んでみました。

 私は、どこの街を訪れるにしても、必ずと言ってよいほど書店を見て回ります。その度に、「最近は首都圏でも本屋が少なくなっているな」とか「(必ずしも大型ばかりではないが)チェーン店が増えているな」とか「考えてみれば、チェーン店ばかりで買っているな」と思うのです。何せ、あの神田神保町でも古書店がますます減っているくらいですし、最近リニューアルした書泉グランデが法律学の専門書などを置かなくなったのに驚かされました(私にとっては非常な痛手です)。

 さて、東京新聞の記事ですが、それによると、日本には書店がない市が4つあるといいます。全てが書かれている訳ではないのですが、茨城県のつくばみらい市がその1つとしてあげられています。つくばエクスプレスが通る、筑波研究学園都市の隣にある市なのですが、5年ほど前から書店がないそうです。原因があまり明示されていませんが、つくばエクスプレスの始発駅である秋葉原(大型書店があります)から最速で40分ほどという位置のためなのかもしれないとのことです。たしかに原因の一つとしては考えられますが、疑問が湧きます。

 この種の話は、以前にも何度か新聞の記事に登場しています。2010年1月26日には朝日新聞も「消える書店、10年間で29%減  和歌山県ではほぼ半減」として報じており(現在はhttp://book.asahi.com/news/TKY201001260130.html で読めます)、それによると和歌山県の減少幅が約47%と最も大きく、次いで山口県と佐賀県が約38%の減少となっています。また、都道府県別に見ると最も書店数が少ないのは鳥取県で、80店しかないそうです(或る程度ならば人口比などとして説明することが可能でしょう)。この朝日新聞の記事によると、和歌山県の場合は「スーパーとの複合型店や郊外型の大型店などが増え、中小書店の廃業が相次いだ」ことが原因の一つであるそうですが、これに加えてネットでの購入の増加、読書離れ、人口減少(とくに若年世代の)も原因としてあげることができるでしょう。

 再び東京新聞の記事に戻るましょう。そこには、現在、日本で書店のない市町村が317あり(全市町村の17%にあたります)、鹿児島県の垂水市でも書店がなくなった、と書かれています。その一方、北海道の留萌市のように、2010年末に書店ゼロ状態となってから昨年の夏に三省堂書店がオープンしたという例もあります。ただ、採算の問題は避けられませんし、留萌市の場合は市民のボランティア的精神と行政のバックアップがあったからこそ上手くいっているのであって、どこでも応用できるような話ではないのです。

 市場が縮小すると、どうしても中小の小売店がなくなり、チェーン店が残るということになります。しかも、チェーン店の規模も問われることになります。私が生まれ育った町の最寄り駅(東急溝の口駅・JR武蔵溝ノ口駅ではありません)の前に広がる商店街でも、私が小学生であった頃にはチェーン店ではない、まさに町の本屋が、古書店を除いて4軒ありました。しかし、現在は文教堂しかありません。その文教堂の発祥の地である溝口も、文教堂以外の書店となると現在は1軒しかありません(古書店を除きます)。

 ネット書店や通信販売も便利ではありますが、私は洋書(専門書)を買う時以外に利用しません。理由は簡単で、手にとって少しばかり読んでみてから買うためです。辞書や参考書などは、そのようにして買わなければ失敗します。

 電子書籍なども出てきていますし、ネットの記事もありますし、グーグルマップなどもあります。コンビニエンスストアもあります。書店にとっては厳しい環境です。チェーン店でも淘汰が進む可能性は高いでしょう。しかし、完全になくなる、需要がなくなる、などということはないと思っています。

 まず、電子書籍は、いつまで経っても「元年」であるくらいで、私も電器店などで見てはいますが読みやすいと言えない物も多く、カタログが不十分です。少なくとも、私が仕事で使うような本は電子書籍で出回ることがほとんどないでしょうから、買う気がなくなります。紙の本より目に悪いかもしれません。最初から、電子書籍で販売されるようなものは限定されていると考えるほうがよいでしょう。

 次にネットの記事ですが、一昔よりはかなりよくなっているとはいえ、正確性に欠ける部分が少なくありません。いつ削除されるかもわかりません。

 そしてグーグルマップなどの電子地図ですが、これが意外に不便です。地図の使い方によっては冊子の都市地図や道路地図のほうがわかりやすく、使えます。

 紙の書籍には利点がたくさんあります。そのために、置き場所に困るようなことがあっても、本を買うのです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする