今月10日の参議院本会議で消費増税法案が可決され、法律として成立しました。
この法律の正式名称は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」といいます。本来は消費税法の他に所得税法や相続税法などの改正も含まれていましたが、民主党、自民党、公明党の協議で所得税法や相続税法の改正が外されています。
御承知のように、この法律により、消費税および地方消費税の税率は、2014(平成26)年4月1日、および2015(平成27)年10月と2段階で引き上げられます。何故に二段階に分けるのかという問題もありますが、改めてこの法律(といっても概要ですが)を見ると、消費税と地方消費税との割合が変わっていることに気づかされます。
現在の消費税法第29条によると、消費税の税率は4%です。一般的には5%と言われますが、これは地方消費税の分を合わせているからで、消費税:地方消費税=4:1となっているのです。
それでは、地方消費税の税率は1%と規定されているのでしょうか。実は地方税法の規定を見ても、どこにも1%とは書かれていません。どういうことかというと、地方税法第72条の77第2号・第3号が地方消費税の課税標準を消費税の税額としており、同じ法律の第72条の83が地方消費税の税率を消費税額の25%としているのです。つまり、地方消費税の税額は消費税の税額を基準として、これに25%をかけることによって得られます。そのために、現在の地方消費税は、0.04×0.25=0.01ということで1%になる、という訳です。
それで、消費増税法がどのように規定するのかというと、次のようになります。
(1)2014年4月1日から2015年9月30日まで(消費増税法第2条)
消費税の税率 4%→6.3%
地方消費税の税率 1.7% (消費税額の約27%)
合計 8%
地方消費税の場合は地方税法の改正ということになります。まだ地方税法の改正案などを読んでいませんが、このような税率の定め方をしていることからして、現行の「消費税額の25%」というような定め方をしていないことは明白です。格好だけは、これまでのように消費税の付加税ということではなく、独立した税ということになるのでしょうか。
この税率がどのように決定されたのかがよくわかりませんが、地方六団体、とくに地方知事会は地方消費税の税率あるいは割合を高めるように主張していました。たとえば、合計で8%として消費税:地方消費税=6:2としますと、地方消費税の税額は消費税の税額の3分の1となりますから、現在よりも割合が高まります。地方の側からは、消費税を完全に地方税にするという案も主張されていたくらいですから(現実の問題を考えると実現困難です)、何らかの妥協がなされた割合なのでしょう。
(2)2015年10月1日から(消費増税法第3条)
消費税の税率 6.3%→7.8%
地方消費税の税率 1.7%→2.2% (消費税額の約28%)
合計 10%
このような割合にすると、地方交付税における消費税の割合をどのようにするのか、という疑問も湧きます。意外に知られていないので驚くのですが(あまり大きく報じられなかったからでしょう)、今年の4月1日から法人税の税率が引き下げられており、地方交付税における法人税の割合が維持されたとしても、額としては減少することになるためです。今後の動向が気になります。
また、名目や格好はともあれ、今回の税率引き上げによって、地方消費税が持つ、消費税の付加税としての性格はいっそう強化されたと評価できるでしょう。地方消費税は都道府県税で、課税対象の違いによって譲渡割(国内取引の分)と貨物割(輸入取引の分)に分かれていますが、貨物割のほうは最初から国が消費税の賦課徴収と併せて行うこととなっていますし、納税義務者の申告および納付も消費税と併せて行うこととなっているからです(地方税法第72条の100以下を御覧ください)。これは納税義務者の便宜もありますし、課税・徴収する側の便宜もあるでしょう。
一方の譲渡割ですが、実はこちらのほうについては本来、都道府県が徴収などの事務を行うこととなっています(地方税法第72条の89)。納税義務者も、都道府県知事に中間申告や確定申告を行い、納付をすることとなっているのです(地方税法第72条の87、第72条の88)。しかし、地方税法附則第9条の4以下により、「当分の間」は納税申告、確定、徴収に関する事務などを国へ委託することとなっているのです。
良いことか悪いことかは別として、消費増税法によって複雑な税率が設定されたことからして、先の「当分の間」は生き続けることになるでしょう。しかし、「当分の間」はあくまでも「当分の間」であり、いつまでも続きますから、有害とも言えます。いっそうのこと、譲渡割についても貨物割と同様に、地方消費税の事務は恒久的に国が行うとすべきではないでしょうか。