ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

名盤は、何度聴いても良いものです。

2012年08月18日 23時03分28秒 | 音楽

 7月下旬にモダン・ジャズ・カルテット(The Modern Jazz Quartet)の「ラスト・コンサート」(The Last Concert)を買いました。1974年11月25日にニューヨークのエイブリー・フィッシャー・ホール(Avery Fisher Hall)で行われた演奏会の実況録音版です。1980年代にMJQは復活しますが、まさに解散コンサートといってよい内容です。

 あまり言われないことですが、これは1970年代に録音されたジャズのレコードとしては名盤に属するものです。実際、ここでの演奏はどの曲も素晴らしいもので、MJQのリーダーでもあったピアノのジョン・ルイス自身も最高傑作と認めたそうです。

 実は、私は中学生時代にこの「ラスト・コンサート」の2枚組LPを、実家の近くのレコード店(今もあります)で購入しています。しかし、このコンサートで演奏された曲の全部が入っていた訳ではなく、また、曲の順もコンサートとは全く違っていました。どうせなら全曲をコンサートの順番と同じ順で聴きたいと思い、銀座の山野楽器で買いました。

  まずは「朝日のようにさわやかに」(Softly as in a Morning Sunrise)で始まります。多くのジャズマンが演奏し、録音もたくさんありますが、やはり、J. S. バッハの「音楽の捧げもの」(Musikalisches Opfer)の中の1曲を冒頭に入れたMJQの演奏が一番です。オリジナルの演奏も好きですが、やはり解散コンサートの気迫が名演奏を産み出したのでしょう。

 その後、「サマータイム」(Summertime)、「ラウンド・ミッドナイト」(’Round Midnight)、「チュニジアの夜」(A Night in Tunisia)などと続き、アンコールに、MJQの代名詞のような「ジャンゴ」(Django)、MJQのメンバーで名ヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンの名作「バグズ・グルーヴ」(Bags' Groove)が演奏されて終わります。「ジャンゴ」、「バグズ・グルーヴ」という曲を最後に持ってきたという構成も素晴らしいものですが、どちらも最高の演奏で、しかも「バグズ・グルーヴ」ではパーシー・ヒース(Percy Heath)のベースソロも聴けます。

 さらに記すならば、ドラムのコニー・ケイ(Connie Kay)は、全体的にあまり派手なところを出さないものの、堅実なリズムで演奏をまとめています。MJQに漂う上品さは、ひとえにコニー・ケイのドラムのためではないか、と思うのです。

 とにかく、演奏をお聴き下さい。私は、最初に聴いた時(中学生時代で、2年生か3年生の時です)に「朝日のようにさわやかに」で感動し、4ビートのジャズにのめりこむこととなりました。

 それから、ここで特筆すべき曲として、かのアランフェス協奏曲第2楽章をあげておきます。この解散コンサートで演奏されたのですが、通常のポップス編曲版とは全く異なり、かなり原曲に忠実に演奏しています。原曲にはギターのカデンツァも入っているのですが、この部分までMJQはしっかり再現しているのです。これには好感が持てます。何故なら、アランフェス協奏曲がその代表ともいえるのですが、概して、クラシックの名曲をポップスに編曲すると、有名なフレーズだけを取り上げたり、無理やり4拍子に変えたりするので(ベートーヴェンの交響曲第5番の第1楽章は8分の3拍子です)、つまらない曲に変わるのです。しかし、そんな馬鹿なことをしなかったのがMJQで、ここはジョン・ルイスのセンスのよさが効いています。アランフェス協奏曲の名演奏の中にMJQのこの解散コンサートでの演奏が入らないとしたら、世の音楽評論は狂っているのではないか、などとも思います。

 既に、ジョン・ルイスとミルト・ジャクソンはこの世を去っています。この不世出のジャズ・ユニットの傑作を何度でも聴けることは、やはりうれしいものです。

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