今日の朝日新聞朝刊29面13版に「先細る法学部 法科大学院設置後 研究志す学生急減」という記事が掲載されています。私が数年前から、とくに法律学科主任を務めていた頃から実感していたことは、やはり間違いでなかったことがよくわかりました。
守秘義務などの関係もありますので、詳しいことは記しませんが、法科大学院が設置されてから、法学研究科へ進学する者が減少し、結果として博士後期課程へ進学する学生も減り、分野によっては若い研究者が僅少という事態になっています。
私自身は経験しなかったのですが、私と同じくらいの年、またはそれより下の年代ですと、博士後期課程時代にどこかの大学の非常勤講師を勤めることが専任教員への第一歩となっています。これは今でもそうなのですが、ここ数年、分野によっては非常勤講師を勤めてくれそうな院生がいないのです。上記の朝日新聞記事には東京大学の話が出ていて、法科大学院を修了してから博士(後期)課程に入る学生(日本人に限定します)は年間で、多くても3人だそうです。法科大学院から助教になる人も、年間で3人から7人だとのことです。東京大学でこの人数ですから、他の大学は推して知るべし、というところでしょう。
法科大学院と法学研究科では、学位の性質も違いますが、教育内容などがまるで違います。今年から客員教授として東洋大学大学院法学研究科を担当していますが、法科大学院では考えられない洋書講読(ドイツ語です)を行っています。色々なことを考えると、英米法、ドイツ法、フランス法、中国法など、外国法の研究もできる者は必要ですが、法科大学院では無理です(法学研究科でも外国法研究を行う学生が少なくなっているというのも事実なのですが)。
法科大学院を修了すると法曹界へ進む者が多いのですが、正直に記せば、日本の法曹界は今の状態で大丈夫なのかという気もします。そもそも、学部の段階で第二外国語を切ってしまったため、第一外国語の英語についても教育効果が見られなくなっているような状態です。しかし、今後はますます、英語に限らず、外国語が必要となるでしょう。そうなると、法科大学院修了者のうちのどの程度までが、国際的法務で使い物になるのでしょうか。