今日(2015年8月10日)付で、JR北海道が「留萌線(留萌・増毛間)の鉄道事業廃止について」を正式に発表しました。平成28年度(2016年度)中に廃止されることとなりそうです。
この文書については、皆様にも是非御覧いただきたいところですが、このブログでも少しばかり紹介しておきます。
留萌本線は、石炭、木材、海産物の輸送ルートとして活用されたのですが、やはり石炭産業が衰退したことが路線の衰退にもつながっていました。当然、人口の減少にもつながるからです。この他、モータリゼイションの進化(深化)が大きいところでしょう。
輸送密度も、グラフ付で説明されています。これによると、留萌⇔増毛における昭和50年度(1975年度)の輸送密度は1189人でしたが、昭和55年度(1980年度)に855人、昭和60年度(1985年度)に592人、昭和62年度(1987年度)に480人と、減少の一途をたどりました。その後、平成25年度(2013年度)までの数字は掲載されていませんが、平成26年度(2014年度)の輸送密度は39人で、1列車当たりでは僅か3人という割合でした(この区間には、現在、上下合わせて13本の普通列車が運行されています)。
また、留萌⇔増毛は、とくに災害が多い区間とされており、JR北海道の文書では平成17年(2005年)3月と平成24年(2012年)3月の列車脱線事故があげられています。いずれも、箸別と増毛の間で「斜面から線路に流入した雪や土砂等に乗り上げる列車脱線事故」です。また、事故にはならなかったものの、2015年、つまり今年の2月下旬から4月下旬まで、雪崩や斜面崩壊の恐れがあるということで、留萌⇔増毛が運休となっています。抜本的な対策が必要とされるところですが、それには数十億円(としか書かれていません)が必要となります。
しかし、平成25年度の営業収入は700万円で、これに対する経費は、JR北海道の表現を借りるならば「25倍近く要していると推計され、差し引きすると年間約1億6千万円以上の赤字となっています」。これでは費用をかけて対策を行う意味が薄れるところです。
また、JR北海道は、上記の文書で、留萌市および増毛町の人口(住民基本台帳人口による)も示しています。これによると、
留萌市の人口:34462人〔昭和62年(1987年)3月〕→22957人〔平成27年(2015年)1月〕
増毛町の人口:7990人〔昭和62年(1987年)3月〕→4893人〔平成27年(2015年)1月〕
となっています。
JR北海道は、今日、留萌市長および増毛市長に留萌⇔増毛の鉄道事業廃止について説明をしています。何時、廃止届を出すのか(または出したのか)については説明されていません。鉄道事業法第28条の2第1項は「鉄道事業者は、鉄道事業の全部又は一部を廃止しようとするとき(当該廃止が貨物運送に係るものである場合を除く。)は、廃止の日の一年前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない」と定めておりますので、仮に来年の10月1日に廃止するとなれば、そろそろ届出を行うことでしょう。届出が行われた後に、「国土交通大臣は、鉄道事業者が前項の届出に係る廃止を行つた場合における公衆の利便の確保に関し、国土交通省令で定めるところにより、関係地方公共団体及び利害関係人の意見を聴取するものとする」(同第2項)とされており、留萌市および増毛町がいかなる意見を出すのかが注目されるところではあります。
一方、鉄道事業法第28条の2第3項は「国土交通大臣は、前項の規定による意見聴取の結果、第一項の届出に係る廃止の日より前に当該廃止を行つたとしても公衆の利便を阻害するおそれがないと認めるときは、その旨を当該鉄道事業者に通知するものとする」とも定めています。留萌⇔増毛がこの規定に該当するかどうかはわかりませんが、可能性がないとも言えないでしょう(和歌山県の有田鉄道線などの例があります)。
さらに、今後、JR北海道の路線の廃止が進む可能性もあります。留萌本線の深川⇔留萌の動向も気になるところですし、札沼線の北海道医療大学⇔新十津川、石勝線の支線(新夕張⇔夕張)、そして、現在も大部分の区間で運休状態が続いている日高本線(苫小牧⇔様似)あたりが、さしあたっての関門でしょう。