最初にお断りです。今回は、私の「川崎高津公法研究室」に掲載していた「待合室」の、次の記事の再掲載です。
第309回:「佐賀駅にて」(2008年9月7日撮影、2009年4月13日〜20日掲載)
一部を除き、内容を修正しておりません。したがいまして、後の事情変更なども一切反映しておりません。御注意ください。
これまで、大分県、福岡県を初めとして、何度も九州を取り上げてきましたが、佐賀県と宮崎県については一度も取り上げていません。今回は佐賀県を取り上げます。
最近になって、島田洋七さんの「がばいばあちゃん」で佐賀県の知名度は高くなりましたが、九州島内7県で最も地味な存在なのが佐賀県でしょう。47の都道府県を全て書かせたり言わせたりすると、佐賀県が忘れられていたりすることも少なくありません。それに、鹿児島本線や九州自動車道で福岡から久留米まで行く際、基山町や鳥栖市を通りますが、基山町も鳥栖市も佐賀県にあるということは意外に知られていません。そのため、佐賀県を通ったことすらないと答える人が多いのです。私自身について記すならば、長崎県には一度しか行ったことがなく、しかも車で走ったことがないのに対し、佐賀県には少なく見積もっても10回以上行っていますが、九州島内の県では唯一、宿泊したことがありません。
また、これも意外に知られていないことですが、各都道府県のうち、民間放送局が最も少ないのは佐賀県です。第一に、テレビ局はサガテレビ1局のみです(そのため、山梨県、福井県、徳島県、宮崎県とともに、ビデオリサーチ社による視聴率調査が行われていませんが、これらの県には民間のテレビ局が2つ以上あります。また、佐賀県の大部分は福岡県の放送局などの可視聴地域となっています)。第二に、AMラジオの放送局がありません。NBCラジオ佐賀はありますが、これは長崎放送が佐賀県について放送の一部を変更しているということです(ちなみに、NHKについても第二放送については熊本放送局と福岡放送局の管轄です)。第三に、FMラジオ局は(コミュニティFM局を除けば)エフエム佐賀だけです(もっとも、FMラジオの場合は県に1局しかないということが多いのですが)。佐賀県のラジオ局はエフエム佐賀だけということです。これも珍しい例でしょう(唯一の例かもしれません)。
佐賀市は、九州島内の県庁所在都市の中で最も人口が少なく、30万人に達しておりませんので、政令指定都市は勿論、中核市にも特例市にも指定されていません(政令指定都市=福岡市、中核市=長崎市、大分市、熊本市、鹿児島市、特例市=宮崎市)。大分時代にも、仕事や観光などで佐賀市に行ったという人の話をあまり聞きません。
しかし、唐津、伊万里、有田、嬉野、武雄、吉野ヶ里遺跡など、佐賀県には名所がいくつもあります。ここに記した中で歩いたことがあるのは唐津だけですが、今年は吉野ヶ里、有田、伊万里を歩いてみようかと思っています(結局、吉野ヶ里には行ったことがありません)。
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さて、2008年9月7日、佐賀県の県庁所在地である佐賀市に足を踏み入れました。2001年5月26日から2003年4月30日まで日記をつけていないのでよく覚えていなかったのですが、福岡の天神でヤマハのデジタルシンセサイザー、MOTIF 7を買った日、帰る途中に佐賀市へ行っておりまして、それ以来のことでした。基山から鹿児島本線の電車に乗り、鳥栖で降りて駅の売店でシューマイを食べ(これが実に美味しいシューマイでした)、長崎本線の普通ワンマン電車に乗り換え、佐賀駅で降りました。これから唐津線西唐津行に乗り、唐津へ行きます。上の写真は、唐津線を走る気動車、キハ47です。
九州島内を移動するのであれば、自家用車、レンタカー、高速バスのいずれかが便利ではあります。しかし、これらでは楽しみが半減します。とくにつまらないのが、高速バスが自動車専用道を通っている間です。自分で運転していればあれこれの発見もあるのでそれなりの面白さはありますが、高速バスではその機会もありません。自動車専用道は、自分で車を運転するから楽しいのであって、他人が運転する車に乗っているのでは 、少なくとも楽しみは半減すると思うのですが、いかがでしょうか。
やはり、移動中の時間を楽しむのであれば、鉄道路線を利用するのがよいでしょう。新幹線は微妙なところですが、在来線(とくにローカル線)と私鉄と路面電車の面白さは、経験してみないとわからない独特の滋味があります。事前に時刻表を読んで色々なパターンを考えるのも楽しいし、実際に乗って車窓を眺めたりするのも楽しいのです。7年間の大分時代にもっと経験しておけばよかったと思っていますが、大分市から公共交通機関を利用して九州島内の各所へ行くというのは大変なことでして、時刻表を手にしてあれやこれやのパターンを考えた挙げ句に断念したということも少なくありません。
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博多発長崎行の特急「かもめ」が佐賀駅2番線から発車しました。「白いかもめ」とも言われる885系です。
この885系は振り子式の交流電車で、特急「かもめ」(博多~長崎)と特急「ソニック」(博多~大分)で運用されています。2001年12月下旬に長崎市へ旅行した時、往復で利用しました。回転クロスシートで、椅子にはレザーが張られています。車内は結構凝っていて、JR九州の在来線特急電車では乗り心地などで一番でしょう。ただ、レザー張りの座席は、高級自動車であればよいのかもしれませんが(私は一度も乗ったことがありません)、特急電車としてはどうなのかとは思っています(滑りやすいのです。飛行機よりも座り心地が良いのは当然なのでしょうが)。
JR九州の特急電車は、博多~西鹿児島の特急「つばめ」用として登場した787系以来、趣向を凝らしたものばかりです。現在、787系は「リレーつばめ」(博多~新八代)、「有明」(博多~熊本)、「かいおう」(直方~博多)で運用されていますが、「つばめ」時代にはビュッフェもありました。その編成(鹿カコ)が、博多~南宮崎・宮崎空港の「にちりんシーガイア」でも運用されていました。その前に登場し、「かもめ」、「みどり」(博多~佐世保)、「ハウステンボス」(博多~ハウステンボス)、「にちりんシーガイア」(787系であったのが、いつのダイヤ改正からか783系になりました)、「ドリームにちりん」として運用される783系、通称ハイパーサルーンになると、内装から乗り心地から一段も二段も格が落ちます。現在「にちりん」(基本的には別府~宮崎空港)および「きりしま」(基本的には宮崎~鹿児島中央)で運用されている485系(Red Express)は、国鉄時代に登場して既に何十年も経っていることと編成が短いことなどで、特急料金を取るのがおかしいとすら思えてきます。やはり、運用される特急電車の区間によって、自然に格付けがなされるのでしょう。
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唐津線は、佐賀駅から長崎本線の下り普通列車に乗って二つ目の久保田から西唐津までの路線ですが、運用上は佐賀~西唐津となっています。唐津~西唐津は、福岡市営地下鉄空港線と相互乗り入れを行う筑肥線の電車も走るために電化されていますが、それ以外は非電化区間となっています。 ワンマン運転が行われていますが、私が乗車した時には車掌が乗務していました。途中駅のほとんどは無人です。
車窓からの沿線の風景を撮影していなかったのですが、地味であるという印象は受けます。しかし、面白さもあります。とくに、伊万里からの筑肥線が合流する地点に近い本牟田部駅は、何とも風変わりな駅です。唐津線と筑肥線が完全に並行しており、複線のようになっているにもかかわらず、唐津線のほうにしかホームがありません。筑肥線のほうにはホームがないので、本牟田部駅を通過します(そもそも、路線図にも書かれていません)。JR線と私鉄線が並行している区間で、JR線には駅がなく、私鉄線には駅があるという例ならたくさんあるのですが、JR線同士というのは珍しいでしょう(東海道本線と京浜東北線というような例を出されるかもしれませんが、正式には京浜東北線という路線はありません。東京~横浜は東海道本線であって、京浜東北線というのは通称なのです)。
さらに両線は、複線のようにして走り続け、山本駅に到着します。ようやく山本駅で乗り換えることができるのです。そして、筑肥線はいったんここで途切れます。山本から東唐津までの旧線が廃止され、筑肥線が東唐津から唐津駅に乗り入れるようになったからです。唐津線は、唐津駅の南側で、今度は姪浜から筑前前原、筑前深江、東唐津を経由してきた筑肥線と合流します。この合流地点の近くにも、筑肥線のほうにのみ和多田駅があります。東京近辺でなら東急大井町線緑が丘駅のすぐそばを東急目黒線が通るにもかかわらず、目黒線のほうに駅がないこととに似ています (しかし、緑が丘駅付近で大井町線と目黒線が完全に並行している訳でもありません)。そして、唐津線と筑肥線は、大岡山駅、ではなくて唐津駅で接続するということになります。
上の段落の表現では、筑肥線の構造がわかりにくいかもしれません。時刻表を見ればすぐにわかるのですが、筑肥線は電化区間の姪浜~唐津と非電化区間の山本~伊万里に分断されています。そのため、唐津または西唐津から伊万里へ向かう筑肥線の気動車は、唐津から山本まで唐津線を走ることになります。電化区間と非電化区間は、使用車両や本数からして同じ路線とは思えないほどで違っており、非電化区間は利用しにくいのですが、機会があれば非電化区間も利用したいと考えています。まだ、伊万里を訪れたことがないからです。