注目を集めていた兵庫県知事選挙が11月17日に行われ、斎藤元彦前知事が当選確実と報じられました。
ある程度は予想がついたことですが、少なからぬ兵庫県民は、パワハラ告発問題などで職員側ではなく、当該職員を懲戒処分に付した知事の対応を正当と認めたことになります。悲しいことかもしれませんが、内部告発は組織に対する裏切り行為であるという感覚などを、多くの人は持っているということかもしれません。あるいは、兵庫県民の一定の割合においては県職員に不信感を抱いているということかもしれません。公益通報制度の見直しにもつながる可能性も否定できないのです。
但し、選挙が終わったからといって、まだ全てが終わった訳ではありません。地方自治法第178条を見ましょう。
第1項:「普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる。」
第2項:「議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う。」
第3項:「前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。」
以上のうち、第1項は今回の選挙の前の話につながることでした。私は、知事が議会を解散するものと考えていたのですが、解散ではなく失職を選びました。失職は、第2項の前半、すなわち「議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき」につながります。
気になるのは第2項の後半、議会の「解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたとき」でしょう。新たな知事が選任されると、県議会を招集することとなります。そう、兵庫県議会が再び不信任決議を行うかどうかが問われます。
要件として、議員数の3分の2以上の出席、その出席議員の過半数の者の同意を得ることが求められます。何月何日に兵庫県議会が招集されるかはわかりませんが、全議員のうちの3分の2以上が出席した上で、その過半数の議員による同意は得られるでしょうか。それ以前に、不信任決議案が提出されるのでしょうか。
知事の失職前には百条委員会も開かれていました。それでこの結果です。普通に考えれば、兵庫県議会の立場はなくなりました。再度の不信任決議案は出されないかもしれません。
そうなると、パワハラ告発などの意味は何だったのかが問われるということを意味するとともに、兵庫県職労の立場もなくなります。いや、或る意味で最も立場を失ったのは県職労であり、少なからぬ県職員です。「あれだけパワハラだの何だの騒いでおいてこれかよ」ということになるからです。
同じことは報道機関にも言えます。いや、一番に問題を抱えていたのは大騒ぎをしたほとんどの報道機関です。それこそ責任が問われるべきでしょう。本当にパワハラ問題があったとしても、どの程度であったのかを丁寧に追うべきでした。私も日々の報道を目に耳にしましたが、あまりにも偏向的であるということを感じていました。。アメリカ合衆国大統領選挙の際の報道とあまりにも傾向が似通っており、予想(期待?)を大きく外したことまでよく似ている、というより同じようなものだったからです。
さらに問題であったのは、市長会の有志メンバーが11月13日付で、前尼崎市長であった候補者の「稲村和美さんを支持する表明について」という文書を掲載したことです(翌日、1市長も加わっています)。聞いた瞬間に「公職選挙法に抵触しないか?」と思ったのでした。公職選挙法を参照して問題があるかどうかを調べた訳ではないので、適法か違法かという問題については触れませんが、少なくとも選挙戦の段階で出すべき文書ではありません。まずいことをやったもので、これは斎藤氏の勝利の決定打になったとも言えます。ちなみに、この表明に参加しなかったのは神戸市長、芦屋市長、明石市長、西脇市長、豊岡市長、養父市長および三田市長でした。
まだまだ、兵庫県政は揺れ続けるでしょう。
そして、今後、少なくとも都道府県や市町村については、内部通報、公益通報が機能しなくなることも考えられます。
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