ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

『ソクラテスと朝食を』

2012年12月29日 09時49分14秒 | 本と雑誌

 先日、青葉台で何冊か買った本の中に、講談社から刊行されている『ソクラテスと朝食を』という本があります。タイトルに惹かれて買いました。

 サブタイトルが「日常生活を哲学する」となっているだけに、、「目覚める」、「身支度をする」などの項目が並んでおり、「目覚める」にはデカルト、カント、ヘーゲルが、「通勤する」にはニーチェとホッブズが登場します。生活スタイルなどからしてイギリスやアメリカの内容であり、日本にはなじまないような気もしますが、それはよいとしておきましょう。各項目に登場する哲学者を見ると、時代や立場などは無関係というのも、日本の哲学入門書にはあまりない(あるいは、ほとんどない)スタイルです。

 著者はロバート・ロウランド・スミス(Robert Rowland Smith)という人で、オックスフォード大学で研究生活を送ったとのことですが、詳しい経歴などはわかりません。訳は鈴木晶氏が担当しています。

 本の帯には「デリダをして『俊逸!』と言わしめた注目の星による哲学入門!」、「ミリオンセラー『ソフィーの世界』の再来を予感させる話題の書、ついに邦訳!」と書かれていますが、『ソフィーの世界』とはターゲットもスタイルも異なりますし、中身からして同書の「再来」にはならないでしょう。面白い本であるとは思いますが、それほどの深みはないでしょう。多くの哲学者や評論家(ブランショも登場します)の名はあげられているものの、代表的な著作などの名称はほとんどあげられていないので、読書ガイドなどになりません。

 私が以前から気になり、時々探したりして読んでいるブランショが、「医者にかかる」という項目で登場します。出典がわからないので、仕方なく孫引きしますと、「医師たちのことはとても好きだった。……腹立たしかったのは、彼らの権威が時とともにますます増していくことだった。人は気づいていないが、彼らは王様なのだ」。

 「哲学する」というより、日々の生活の一コマについて哲学者の言説をあてはめているという感じの強い本で、哲学入門というより哲学エッセイというに相応しい内容ではあります。


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