今日の0時9分付で時事通信が「高額所得75%課税は違憲=オランド政権に痛手-仏憲法会議」(http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012123000003)として報じています。目についたので、ここに取り上げておきます。
私はフランス法を専攻しておりませんので、フランスの裁判制度などについてはよく知りません。そのため、記事に登場する「憲法会議」という言葉が訳語として正しいかどうか、などということには触れないでおきます。
この憲法会議が時事通信の記事の見出しにあるような判決を下したのは12月29日のことです。政府は2013年度予算に、1年間で100万ユーロ(日本円に換算するとおよそ1億1400万円とのことです)を超える所得については75%という高い率で課税するという内容を盛り込んでいました。おそらく、日本と同じ超過累進課税でしょうから、75%が最高税率(の層)ということなのでしょう。1980年代の日本と同じくらいの高い税率ですが、これはオランド政権が財政再建を掲げたことの結果です。つまり、民主党政権時代の日本でも主張されていたように、富裕層の税負担を増やすという政策です。
少し前には、この高い税率のために富裕層がイギリスやベルギーなどの国々に移住し始めている、とも報じられています。日本も、所得税の最高税率を40%→45%に引き上げるとか、相続税の基礎控除額を引き下げる、などというような案が政策として打ち出されていますので、富裕層の国外移住、ひいては資本の空洞化が進む可能性も高いでしょう。この点で、歯磨き粉で有名なサンスターの動きは典型的なものと言えます。元々は大阪府高槻市に本社を置いていましたが、現在、同社のWorld Headquarters(実質的な本社機能)はスイスに置かれています。この件については、グーグルで検索をかけると幾つか記事を読めますので、参照していただきたいものです。「相続税の税率を上げると、日本における資本の空洞化、資産の空洞化が生じる」という趣旨の言説は、当たっているのかもしれません。
時事通信の記事に戻りますと、この記事には判決の理由などが詳しく書かれていませんのでよくわからないところも多いのですが、憲法会議が75%という最高税率による課税を違憲としたのは、率の高さという点によるものではないようです。
フランスの場合、基本的に所得課税は個人単位ではなく家族単位であるそうで、日本の財務省のサイトによると「夫婦及び子供(家族)を課税単位とし、世帯員の所得を合算し、不均等分割(N分N乗)課税を行う」とのことです(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/029.htm)。
ところが、最高税率75%の課税は、何故か個人の所得を対象としています。この点を、憲法会議の判決は「税負担の平等原則に反すると判断した」というのです。そうなると、家族単位であれば憲法違反でない、ということなのでしょうか。
この判決を踏まえて、フランスのエロー首相は法案の再提出を明言しました。ちなみに、最高税率75%の課税は2年間のみとされており、来年1月から実施されることとされていました。
さらに記すと、時事通信社の記事には「AFP通信は政府関係者の話として、違憲とされた分の税収は歳入3000億ユーロのうち5億ユーロ程度だと伝えている」と書かれています。複雑な気分になりました。
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