ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

租税法講義ノート〔第3版〕への前口上

2019年06月26日 02時39分30秒 | 租税法講義ノート〔第3版〕

 第1版の開始が2009年、第2版の開始が2011年です。修正、補訂を繰り返してきたとは言え、8年が経過していました。

 その間、2014年に清文社から刊行された石村耕治編著『税金のすべてがわかる現代税法入門塾』〔第7版〕の執筆者の一員となりました。2016年の第8版、2018年の第9版にも参加しています。当然、講義の際にはこの本を教科書にしています。

 第2版への前口上に記したことと部分的に重なりますが、私は、2004年度から、大東文化大学法学部法律学科において「税法」(通年科目)、「税法A」(前期科目。2018年度より)および「税法B」(後期科目。2018年度より)を担当しています。また、2004年度から2012年度まで西南学院大学法学部の集中講義「税法」を、2009年度から2014年度まで大東文化大学大学院法務研究科(法科大学院)において「租税法Ⅰ」(前期のみ)を担当しました。さらに、2017年度からは、大東文化大学法学部法律学科において「法学特殊講義2A(消費税)」(前期科目)および「法学特殊講義2B(相続税および贈与税)」を担当しています。

 これらの講義のそれぞれについて、どの程度のレヴェルを設定するかは難しい問題です。基本的な部分で止めておかなければならない場合もあれば、それなりに応用的な部分に首を突っ込まなければならない場合もあります。

 2010年から地方自治総合研究所の「地方自治関連立法動向研究」の一員となり、2014年度以降の税制改正を主に地方税財政の点から追っている私にとっても、毎年改正され、しかも複雑さを増している租税法について、何をどこまで講義に生かすかという問題は、決して容易なものではありません。また、「財政法講義ノート〔第6版〕の、長すぎる前口上」および「行政法講義ノート〔第7版〕への前口上」において記したように、マイクロソフト社による簡易なホームページ作成用ソフトであるFrontpageおよびExpression Web 4の開発が終了しており、これも私にとっては講義ノートの全面改訂に踏み込めない理由の一つとなっていました。しかし、これらは言い訳にすぎないことも承知しています。

 ようやく第3版となった「租税法講義ノート」についても、基本となるコンセプトは、「日本国憲法講義ノート」(第5版は「日本国憲法ノート」に改題。現在は休止中)、「行政法講義ノート」および「財政法講義ノート」と同じです。法学部の学生はもとより、大学院法学研究科の学生、法科大学院の学生、さらに法学部で法律学を学んだことのない方が読まれることも念頭に置き、作成しております。従って、内容は基本的な部分が中心となります(但し、少々突っ込んだ内容となることもあります)。また、参考文献をなるべく多く紹介し、場合によっては内容に取り入れるため、修正、補訂を繰り返すこととしております。

 第1版および第2版において記しておきましたが、この第3版においても注意事項を記しておきます。

 1.法律学を学ぶ際に六法を必ず手元において読むというのは常識ですが、租税法の場合は特別な注意を必要とします。定評のある教科書や、租税法の分野では数多い実務向け解説書などを読めばすぐにわかることですが、法律はもちろん、施行令、施行規則、さらに通達を参照する必要があります。

 そこで、租税法の多くが収録されている六法の最新版を入手してください。ぎょうせいから『税務六法法令編』および『税務六法通達編』、新日本法規出版から『実務税法六法法令編』および『実務税法六法通達編』が刊行されています。どちらでも、読み易いほうを選べばよい訳です。ちなみに、私自身は『税務六法法令編』および『税務六法通達編』を購入しています。理由は、『法令編』の場合は法律の条文に対応する形で施行令および施行規則が掲載されており、参照しやすいこと、また、かつては法令編・通達編のいずれにもCD-ROMが付属していたことです。

 『税務六法』または『実務税法六法』でないものということであれば、中型または大型の六法がよいでしょう。残念ながら施行令や施行規則、そして通達を参照することができませんが、有斐閣の『判例六法Professional』、三省堂の『模範六法』(など)であれば、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法が掲載されているはずです。これらには地方税法が掲載されていないのですが、ぎょうせいの『自治六法』には地方税法が掲載されています。

 また、法科大学院の学生であれば、第一法規の新司法試験用六法という手もあります。但し、これには国税通則法、所得税法および法人税法しか掲載されておらず、しかも施行令や施行規則は全く掲載されておりません。新司法試験の出題範囲については、所得税法を中心とすること、所得税法と関連する範囲で法人税法および国税通則法を含むものとすることが、司法試験委員会第14回会議(平成16年12月10日)において方針として決定されておりますが、実際には他の法律に関しても関連する範囲で取り上げられています(平成20年度の試験問題を参照してください)。従って、新司法試験用六法に掲載されていない法律を参照する必要性もあります。

 有斐閣のポケット六法、三省堂のデイリー六法などの小型の六法には、そもそも所得税法や法人税法などが掲載されておりませんので、租税法の講義では無意味です(抄録の場合もあるでしょうが、それもあまり意味がないでしょう)。

 2.租税法学に限らず、法律を勉強する際には、判例、実例などの検討を欠くことはできません。そこで、判例解説書またはケースブックの併読をおすすめします。さしあたり、中里実・佐藤英明・増井良啓・渋谷雅弘編『租税判例百選』〔第6版〕(2016年、有斐閣)、金子宏・佐藤英明・増井良啓・渋谷雅弘編『ケースブック租税法』〔第5版〕(2017年、弘文堂)をお勧めしておきましょう。

 そして、実際に、公式判例集などを参照するように努めて下さい。租税法の場合は、最高裁判所民事判例集、最高裁判所刑事判例集、判例時報、判例タイムズの他、訟務月報、税務訴訟資料などに掲載されることもあります(地方税の場合は判例地方自治の場合もあります)。また、判例集に掲載されていない判決については、TAINS(税理士情報ネットワーク全国ユーザー会)、LEX/DBインターネットが便利です。大学の図書館などであれば、LEX/DBインターネットを利用できる場合が多いはずです。

 3.定評のある教科書を併読することをおすすめします。

 4.租税法学は、行政法学以上に応用的法学の一つです。そこで、基礎的な六法(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)の学習はもとより、行政法の学習も済ませておくのが望ましいのです。最低限、憲法、民法、刑法、商法および行政法の学習を十分に行って下さい。

 もっとも、法学部以外の学部の学生、さらには法律学に全く触れてこなかったという方もおられるでしょう。そこで、必要があれば憲法、民法、刑法、行政法などの基本的な部分にも触れておきたいと考えています。

 

 〔これまでの経過〕

 2009年2月11日に新設、同月15日より掲載開始。

 2011年3月4日、第2版として順次改訂。

 2019年6月26日、第3版として順次改訂。


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