ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

「■■には、▲▲である」?

2025年02月04日 00時00分00秒 | 受験・学校

 学内の或る仕事で、タイトルに示したような表現を見つけました。

 ここにそのまま記す訳にはいかないので、大きく形を変えますが、例えば次のような表現は皆様に通じるでしょうか。

 「東京には、日本の首都である。」

 ここは純粋に、日本語の問題として考えてください。なお、私は国語の専門家ではないので、格助詞、係助詞などの表現を使用しません(そもそも、使用して説明できるほどの力はないのです)。

 「 」内の文章は、たったの一文字のために、意味が通じないものとなっています。

 そう、「東京には」の「に」があるためです。

 例えば、「東京には皇居がある。」、「東京には首相官邸がある。」という表現であれば、意味は通じます。

 書き手は「東京は、日本の首都である。」という意味のつもりで「東京には、日本の首都である。」と記したのかもしれませんが、助詞を適切に使わなかったために、意味をなさない文章を作成したのです。試しに英語などに訳してみてください。「東京は、日本の首都である。」であるならば"Tokyo is the capital of Japan."(英語)、"Tokyo ist die Hauptstadt von Japan."(ドイツ語)、"Tokyo est la capitale du Japon."(フランス語)、などと訳すことができます。これに対し、「東京には、日本の首都である。」を英語などに訳すとなれば、どのようになるのでしょうか。どなたか、御教示ください。

 (余談ですが、東京はドイツ語でTokioと書かれるのが一般的であるようです。また、フランス語版のWikipediaには"Tokyo est de facto la capitale du Japon"と書かれています。de factoは「事実上の」という意味のラテン語です。)

 国語の使い手は文法など気にしないことが多いでしょう。口語であればそれでもよいかもしれません。しかし、文章となれば話は別です。書き手が「てにをは」を適切に使わなければ、読み手に渡されるのは意味の通じない文章です。助詞の適切な選択は日本語使用者の宿命であるということを、自戒の念を込めて記しておきます。

 ※※※※※※※※※※

 東京のことを書いたので、余談のさらに余談を書いておきます。

 よく、日本の皇室に関する報道で「ロイヤルファミリー」というおかしな表現が使われます。国際的には全く通じません。

 そもそも、天皇を英語で表現するならばKingではなくEmpreorです。つまり、王ではなく皇帝なのです。2025年2月4日0時現在、世界に王国はいくつかあれど、帝国は日本だけです。従って、日本は立憲君主国であると表現するのが正しいことになります。何故、憲法学などの教科書はこの事実を、最初に、しかも明確に記さないのでしょうか?

 昨年か一昨年か、私は田園都市線渋谷駅で観光客に「皇居に行くにはこの電車(東京メトロ半蔵門線)に乗ればよいのか」という趣旨を英語で尋ねられたことを思い出したので、記しておきましょう。皇居を英語で表現するならばImperial Palaceです。英語版のWikipediaにはTokyo imperial Palaceという項目があります。ドイツ語版のWikidepiaならばKaiserpalast Tokioで、フランス語版のWikipediaならばPalais impérial de Tokyoです。いずれも、「王の宮殿」ではなく「皇帝の宮殿」です。もっとも、国王と皇帝との違いが何かと問われるならば、答えることは難しく、歴史的起源(emperorはラテン語のimperatorに由来します)はともあれ、現在では大きな違いはないとも言えるかもしれません。 

 いずれにせよ、せめて、日本の報道機関には「インペリアル・ファミリー」という表現を使用してほしいものです。


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