ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

何を聴こうかと迷った時には……(6)

2021年06月30日 12時00分00秒 | 音楽

 私の車の中には何枚かのCDが入っています。このブログでも取り上げた「E2-E4」や「千のナイフ」、そしてJean-Luc Pontyの"Fables"です。

 "Fables"については前にこのブログで触れていますが、今回少しばかり書いておきます。

 フランス人のジャズ・ヴァイオリニストであるPontyのリーダー作は多いのですが、私は"Fables"と"Cosmic Messenger"しか持っておらず、しかもよく聴くのは"Fables"です。このアルバムの2曲目"Elephants in Love"はテレビ番組のBGMとして流れることもあるため、実はお聴きになったことがある方も少なくないものと思われます。

 "Fables"を買ったのは1987年11月2日、六本木WAVEでのことでした。たしか、西武ライオンズの優勝記念セールが行われており(そう、WAVEは西武系でした)、そのセールで安く売られていたので買ったのです。或る意味で典型的なフュージョンですが、5弦のエレクトリック・ヴァイオリンとシンセサイザーが浮遊感ともいえる感覚を作り出しており、私ははまり込んだのです。

 内容は変化に富んでいるといえるでしょう。1曲目の"Infinite Persuit"は速い曲で、これは典型的なフュージョンともいえるでしょう。次の"Elephants in Love"は、何と言っても独特の浮遊感のあるイントロが印象的です。これはシンセサイザーの魅力の一つといえます。3曲目の"Radioactive Legacy"と次の"Cats Tales"は変拍子(あるいはそれらしいアクセントの置き方)を使った曲で、"Cats Tales"のほうでギターソロも聴けますが、エレクトリック・ヴァイオリンのソロのほうが圧倒的な存在感を放っています(ギターはバッキング演奏に徹したほうがよかったかもしれません)。5曲目の"Perpetual Rondo"は3拍子系の曲で、確かにクラシック音楽の小品のようにも聞こえる曲ですが、テーマ部分は断片的なフレーズで、エレクトリック・ヴァイオリンのソロとは対照的です。それにしても、最近のポップスなどが耳に入ってくると、4拍子の曲ばかり、というより、それしかないので「音楽もますます貧しくなっていき、リズム感も悪くなっていく」と思えてきます。チャイコフスキーには9拍子や5拍子の曲があり、実に上手いと感じます。「アンダンテ・カンタービレ」でおなじみの弦楽四重奏曲第1番の第1楽章は9拍子ですし、第2楽章(これが「アンダンテ・カンタービレ」です)は4分の2拍子であるものの、所々で4分の3拍子が入ります。また、交響曲第6番の第2楽章は5拍子です。チャイコフスキーなら他にも変拍子の曲があるはずですし、バッハにも8分の9拍子の曲などがあります。本当にリズム感があるのはクラシック音楽の演奏家ではないか、と常に感じています。ジャズであれば3拍子はよくありますし、あの名曲Take Fiveは5拍子ですが、9拍子などとなるとぎこちなくなります。

 横道に逸れましたので本題に戻ります。私は"Fables"を一気に聴き通してしまうのは、2曲目とともに6曲目の"In the Kingdom of Peace"と7曲目"Plastic Idols"のためです。最後の2曲はPontyの一人多重奏で、5弦のエレクトリック・ヴァイオリンとシンセサイザーの面白さが凝縮されているといえます。"Plastic Idols"のほうはフレーズとはいえないような断片がエコーで折り重なる感じのテーマとなっており(勿論、速弾きのテクニックも織り込まれています)、コード進行が面白いともいえます。ピッチカートも使われ、エコー処理が興味深いところです。 

 先に、内容は変化に富んでいると書きました。その通りではあるのですが、デジタル的というか(デジタル録音であったかどうかは覚えていません)テクノ的というか、人工的でかなりエコーやコーラスがかけられた、シンセサイザーを基軸とする太い音が循環するような空間を感じさせる録音であるため、アルバムの名称通りのイメージがあります。個々の曲名も"Fables"の名称に合うようにしたのでしょうか。ジャズ・フュージョンのアルバムではありますが、かなりの部分でテクノ的、あるいはテクノ・ポップ的と言えるかもしれません。

 ジャズ・フュージョンのヴァイオリニストといえば、インド人のL.Subramaniamを忘れる訳にはいきません。今ではインド音楽のヴァイオリニストとしてのほうが有名かもしれませんが、1980年代にはマイルストーン・レーベルから何枚かのジャズ・フュージョンのアルバムが出ていますし、浅井愼平氏が出演したキリンビールのCMでレゲエ調の"Comfortable"が流されていたことを御記憶の方もいらっしゃるでしょう。やはり六本木WAVEで、名前も"Comfortable"というLPを買って聴きましたが、実は日本盤のみの仕様であり、アメリカ盤は"Spanish Wave"というタイトルであって"Comfortable"が収録されていないことを、後日に知りました(参加メンバーが全く違うのです)。ちなみに、私が最もよく聴いたアルバムは"Indian Express"で、これも通しで聴いていました。"Blossom"も持っていますが、私にはあまりピンとこないアルバムでした。

 もう一人が、ジョン・ブレイクです。彼についてはこのブログで取り上げています。今回の3人のヴァイオリニストの中では最もジャズ・フュージョンの表現に相応しいでしょう。4枚のアルバム(3枚のLPと1枚のCD)を買いましたが、やはり、テレビ朝日の深夜番組「ピーク・ア・ブー」のオープニング曲であったLa Verdaが抜きん出ています。


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