ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

JR九州の赤字12路線17区間

2020年07月30日 08時00分00秒 | 社会・経済

 再び新型コロナウイルスの感染者が激増しています。7月29日には、ついに岩手県でも感染者が判明しました。

 そのような中で、日本最北の無人駅である抜海駅の存廃問題があります。宗谷本線の駅で、終点の稚内駅(日本最北の駅)の二つ手前にありますが、この駅のことは別の機会に触れることとしましょう。実は、抜海駅の問題についての記事「築100年『最北の秘境駅』が廃止危機 全国からメール」(朝日新聞社2020年7月29日11時30分付。https://digital.asahi.com/articles/ASN7X6QCTN7XIIPE004.html)を読んだ際に、関連記事として「JR九州、赤字17区間を公表 他の線区も多くが赤字か」(朝日新聞社2020年5月28日17時30分付。https://digital.asahi.com/articles/ASN5X3JD5N4NTIPE00K.html)を見つけました。2か月前の記事ですが、このブログで取り上げていなかったので、遅ればせながら扱おうと思ったのです。

 JR九州が、特に乗客が少ないとして12路線17区間の収支を公表したのは今年の5月27日でした。いずれも輸送密度が2000人未満です。

 同社は、2019年に輸送密度が4000人未満の路線・区間を公表しています。それについてはこのブログの「JR九州の『維持困難』な路線・区間」を御覧ください。1年が経過して、どのようになっているのでしょうか。あくまでも在来線のみということになりますが、2000人未満の路線・区間は次のとおりです。

  1.後藤寺線:全線(新飯塚〜田川後藤寺)

  2.筑肥線:山本〜伊万里(上記朝日新聞社記事では唐津〜伊万里と図示されていますが、唐津〜山本は唐津線です。)

  3.唐津線:唐津〜西唐津

  4.久大本線:日田〜由布院

  5.豊肥本線:宮地〜豊後竹田および豊後竹田〜三重町

  6.日豊本線:佐伯〜延岡および都城〜国分

  7.日南線:田吉〜油津および油津〜志布志

  8.宮崎空港線:全線(田吉〜宮崎空港)

  9.三角線:全線(宇土〜三角)

 10.肥薩線:八代〜人吉、人吉〜吉松および吉松〜隼人

 11.吉都線:全線(吉松〜都城)

 12.指宿枕崎線:指宿〜枕崎

 これらの路線・区間は、勿論赤字です。「JR九州の『維持困難』な路線・区間」において記したように、これらの中には1980年代に国鉄再建のために行われた幹線と地方交通線との分類で幹線とされた路線・区間が入っています。筑肥線の山本〜伊万里、日豊本線の佐伯〜延岡および都城〜国分、そして宮崎空港線です。これらの路線・区間については「JR九州の『維持困難』な路線・区間」において述べたので、繰り返しません。

 私は、大分大学時代の7年間、西南学院大学および福岡大学での集中講義を担当した9年間に、なるべく多くのJR九州の路線を利用するようにしていました。それでも肥薩線の全線、吉都線の全線、日南線の田吉〜志布志、そして指宿枕崎線の山川〜枕崎が未利用のまま残ってしまいました(第三セクターを入れるならくま川鉄道も未利用のままです。一方、既に廃止された高千穂鉄道は1998年12月19日に利用しました)。とは言え、未利用の路線・区間が輸送密度2000人未満に入っていることは、よく理解できます。時刻表を眺めては何度も乗車計画を立てましたが、本数の少なさ、日程や予算の関係などから諦めざるをえなかったのです。

 また、既に記した12路線17区間で私が利用したことのあるところ(上記の1〜6および8)についても、利用頻度の差はあれ、納得できます。2011年8月8日に三角線を利用した時には意外に乗客が多かったのですが、「たまたま」ということであったのでしょう。後藤寺線を利用した時には「よく残ったな」と思いましたし、1998年12月19日に豊肥本線の宮地〜豊後竹田を利用した際には、2両編成で車掌も乗務していた列車なのに私が乗っていた車両には私しか客がいなかったのです(この区間については特急も利用しています。途中の停車駅は豊後荻だけです)。

 気になる収支ですが、やはりというべきか、日豊本線の佐伯〜延岡の赤字が6億7400万円で、赤字額では最も多くなっています。この区間は、今や普通列車が本線の名前に値しないほどに少なく、とくに重岡〜延岡は1.5往復しかありません。佐伯〜重岡でも3往復です。一時期は電化区間なのにディーゼルカーでのワンマン運転となっていたほどで、特急列車でしか利用したことのない私(ただ、この区間を愛車で走ったことは何度もあります)も「やはり」と思いました。2001年9月3日に宮崎県で仕事をした際にこの区間を特急にちりん号で利用した時には、たしか佐伯〜延岡では携帯電話どころか特急電車の公衆電話も使えないという状態であったほどで、いかに利用客が少ないかがわかるというものです。

 その他、赤字額の多い路線・区間は、日豊本線の都城〜国分で3億9200万円、肥薩線の八代〜人吉で5億7300億円、指宿枕崎線の指宿〜枕崎で4億500万円、日南線の田吉〜油津で4億8500万円、同じく日南線の油津〜志布志で3億9800万円、となっています。

 また、具体的なことはわからないのですが、上記の1〜12のうち、9区間の輸送密度は「30年間で6割以上も落ち込んでいる」とのことです。

 こうなると、いずれは存廃問題が浮上してきます。存続となれば沿線自治体の費用負担の問題も出てきます。JR九州の社長は、今のところは廃線などを考えていないと言っているそうですが、今後の可能性については否定しないとのことです。

 JR北海道では存廃問題が改めて浮上し、実際に今年の5月に札沼線の北海道医療大学〜新十津川が廃止されました(4月中に営業終了)。留萌本線の全線と日高本線の鵡川〜様似についても廃止が濃厚ですし、他の路線でも駅の廃止が行われています。

 JR九州でも、今後、路線の廃止が浮上することになるでしょうし、少なくとも駅の廃止はすぐに検討されるでしょう。日豊本線の佐伯〜延岡であれば、宗太郎駅の1日あたりの平均利用客数が1人未満となっています。この区間は50キロメートルを超えますので、流石に途中の全駅が廃止になるとも思えませんが、JR北海道の例(石北本線の上川〜白滝など)に照らしても駅の廃止が行われないとは言い切れません。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 都営三田線途中下車(12) ... | トップ | 再度の緊急事態宣言もありう... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

社会・経済」カテゴリの最新記事