ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

講義内容を公開します たばこ税その2

2020年07月02日 00時00分01秒 | 法律学

 5.たばこ税の課税物件(課税客体)

 たばこ税、たばこ特別税、道府県たばこ税および市町村たばこ税の課税物件(課税客体)は、製造たばこである(たばこ税法第3条、「一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律」第4条、地方税法第74条の2および同第465条)。

 

 6.たばこ税の課税標準

 〔1〕国税としてのたばこ税

 たばこ税法第10条第1項は「たばこ税の課税標準は、製造たばこの製造場から移出し、又は保税地域から引き取る製造たばこの本数とする」と定める。

 また、同第2項は「前項の製造たばこ(加熱式たばこを除く。)の本数は、紙巻たばこの本数によるものとし、次の表の上欄に掲げる製造たばこの本数の算定については、同欄の区分に応じ、それぞれ当該下欄に定める重量をもつて紙巻たばこの1本に換算するものとする」として、紙巻きたばこ以外のたばこについては次のように換算することを定める。

区分

重量

一 喫煙用の製造たばこ

 

(1) 葉巻たばこ

1グラム

(2) パイプたばこ

1グラム

(3) 刻みたばこ

2グラム

二 かみ用の製造たばこ

2グラム

三 かぎ用の製造たばこ

2グラム

 そして、同第3項は、加熱式たばこ(アイコス、グロー、プルーム、パルズなど)について、次のように定める。

 「加熱式たばこに係る第1項の製造たばこの本数は、次に掲げる方法により換算した紙巻たばこの本数の合計本数によるものとする。

  一 加熱式たばこの重量(フィルターその他の財務省令で定めるものに係る部分の重量を除く。)の0.4グラムをもつて紙巻たばこの0.5本に換算する方法

  二 次に掲げる加熱式たばこの区分に応じ、それぞれ次に定める金額の紙巻たばこの一本の金額に相当する金額として政令で定めるところにより計算した金額をもつて紙巻たばこの0.5本に換算する方法

   イ 製造たばこの製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる時に小売定価(たばこ事業法第33条第1項又は第2項(小売定価の認可)の認可を受けた小売定価をいう。)が定められている加熱式たばこ 当該小売定価に相当する金額(消費税法(昭和63年法律第108号)の規定により課されるべき消費税に相当する金額及び地方税法(昭和25年法律第226号)第2章第3節の規定により課されるべき地方消費税に相当する金額(ロ(1)において「消費税等相当額」という。)を除く。)

   ロ イに掲げるもの以外の加熱式たばこ 次に掲げる加熱式たばこの区分に応じ、それぞれ次に定める金額に、当該加熱式たばこを販売する者(当該加熱式たばこの製造者を除く。)の当該販売に係る通常の利潤及び費用に相当する金額並びに当該加熱式たばこに課されるべきたばこ税、地方税法第2章第5節に規定する道府県たばこ税及び同法第3章第4節に規定する市町村たばこ税に相当する金額の合計額として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額

   (1) 製造たばこの製造場から移出された加熱式たばこ 当該加熱式たばこの製造者が当該移出した加熱式たばこの製造及び販売につき要した費用又は通常要すべき費用に、当該加熱式たばこに係る当該製造者の通常の利潤に相当する金額を加算した金額(消費税等相当額を除く。)

   (2) 保税地域から引き取られる加熱式たばこ 当該加熱式たばこにつき関税定率法(明治43年法律第54号)第4条から第4条の9まで(課税価格の計算方法)の規定に準じて算出した価格に当該加熱式たばこに係る関税の額(関税法第2条第1項第4号の2に規定する附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する金額を加算した金額」

 〔2〕たばこ特別税

 「一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律」第7条は「たばこ特別税の課税標準は、たばこ税の課税標準となる製造たばこの本数とする」と定める。

 〔3〕道府県たばこ税

 地方税法第74条の4第1項は「たばこ税の課税標準は、第74条の2第1項の売渡し又は同条第2項の売渡し若しくは消費等(第3項第3号イにおいて「売渡し等」という。)に係る製造たばこの本数とする」と定める。また、同第74条の4第2項はたばこ税法第10条第2項と同文の規定である。

 そして、地方税法第74条の4第3項は加熱式たばこについて、次のように規定する。

 「加熱式たばこに係る第1項の製造たばこの本数は、第1号に掲げる方法により換算した紙巻たばこの本数に0.8を乗じて計算した紙巻たばこの本数、第2号に掲げる方法により換算した紙巻たばこの本数に0.2を乗じて計算した紙巻たばこの本数及び第3号に掲げる方法により換算した紙巻たばこの本数に0.2を乗じて計算した紙巻たばこの本数の合計数によるものとする。

  一 加熱式たばこ(特定加熱式たばこ喫煙用具を除く。)の重量の1グラムをもつて紙巻たばこの1本に換算する方法

  二 加熱式たばこの重量(フィルターその他の総務省令で定めるものに係る部分の重量を除く。)の0.4グラムをもつて紙巻たばこの0.5本に換算する方法

  三 次に掲げる加熱式たばこの区分に応じ、それぞれ次に定める金額の紙巻たばこの1本の金額に相当する金額として政令で定めるところにより計算した金額をもつて紙巻たばこの0.5本に換算する方法

   イ 売渡し等の時における小売定価(たばこ事業法第33条第1項又は第2項の認可を受けた小売定価をいう。)が定められている加熱式たばこ 当該小売定価に相当する金額(消費税法の規定により課されるべき消費税に相当する金額及び第3節の規定により課されるべき地方消費税に相当する金額を除く。)

   ロ イに掲げるもの以外の加熱式たばこ たばこ税法(昭和59年法律第72号)第10条第3項第2号ロ及び第4項の規定の例により算定した金額」

 〔4〕市町村たばこ税

 地方税法第467条第1項は「たばこ税の課税標準は、第465条第1項の売渡し又は同条第2項の売渡し若しくは消費等(第3項第3号イにおいて「売渡し等」という。)に係る製造たばこの本数とする」と定める。また、同第467条第2項はたばこ税法第10条第2項と同文の規定である。また、地方税法第467条第3項は同第74条の4第3項と同文の規定である。

 〔5〕軽量な葉巻たばこについての見直し

 軽量な葉巻たばこは、巻紙の原料の一部にたばこの葉を使用したもので紙巻きたばこと外観が似ており、リトルシガーと呼ばれるものである(日本たばこ産業株式会社のキース、わかば・シガー、エコー・シガーなど)。一般的な葉巻たばこはサイズが大きいために1グラムが紙巻きたばこ1本と換算されるが、軽量な葉巻たばこはサイズが小さく軽量であるため、紙巻きたばこよりも相対的に税負担が軽くなることから、2020(令和2)年度税制改正において紙巻きたばこ1本への換算方法を変更することとされた。これは、国税としてのたばこ税、道府県たばこ税および市町村たばこ税に共通する改正である。

 「令和2年度税制改正の大綱(令和元年12月20日閣議決定)」65頁によると、次のような趣旨の改正である。

 「軽量な葉巻たばこ(1本当たりの重量が1g未満の葉巻たばこをいう。)の課税標準について、葉巻たばこ1本を紙巻たばこ1本に換算する方法とする。」

 「上記の改正は、令和2年10 月1日から実施するが、激変緩和等の観点から、同日から令和3年9月30日までの間について、上記の改正の対象を1本当たりの重量が0.7g未満の葉巻たばこに限ることとし、その場合の換算方法を葉巻たばこ1本を紙巻たばこ0.7 本に換算する方法とする経過措置を講ずる。」

 なお、この改正は、たばこ税については「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年3月31日法律第8号)第9条により、たばこ税法第10条第2項に「ただし、1本当たりの重量が1グラム未満の葉巻たばこの本数の算定については、当該葉巻たばこの一本をもつて紙巻たばこの1本に換算するものとする」というただし書きを加えることによって行われた〈2020年10月1日から施行される(「所得税法等の一部を改正する法律」附則第1条第1号ロ)〉。また、道府県たばこ税および市町村たばこ税については「地方税法等の一部を改正する法律」(令和2年3月31日法律第5号)第1条により、地方税法第74条の4第2項および同第467条第2項に「ただし、1本当たりの重量が0.7グラム未満の葉巻たばこの本数の算定については、当該葉巻たばこの1本をもつて紙巻たばこの0.7本に換算するものとする」というただし書きを加えることによって行われた〈2020年10月1日から施行される(「地方税法等の一部を改正する法律」附則第1条第1号)〉

 

 7.たばこ税の税率

 〔1〕国税としてのたばこ税

 たばこ税法の税率は、1,000本につき6,802円である(たばこ税法第11条第1項)。但し、特定販売業者以外の者によって保税地域から引き取られる製造たばこに係るたばこ税の税率は、1,000本につき14,424円である(同第2項)。

 なお、実際には「所得税法等の一部を改正する法律」(平成30年3月31日法律第7号)附則第48条により、次のような経過措置がとられている。

 2018年10月1日から2020年9月30日まで:1,000本につき5,802円(特定販売業者以外の者によって保税地域から引き取られる製造たばこに係るたばこ税の税率は、1,000本につき12,424円)。

 2020年10月1日から2021年9月30日まで:1,000本につき6,302円(特定販売業者以外の者によって保税地域から引き取られる製造たばこに係るたばこ税の税率は、1,000本につき13,424円)。

 〔2〕たばこ特別税

 たばこ特別税の税率は、1,000本につき820円である(「一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律」第8条第1項)。但し、租税特別措置法第88条の2第1項の適用を受ける製造たばこについては、1,000本につき500円である(「一般会計における債務の承継等に伴い必要な財源の確保に係る特別措置に関する法律」第8条第2項)。

 租税特別措置法第88条の2第1項は、2020(令和2)年3月31日までに日本に入国する者が携帯して輸入するなどの場合について、たばこ税の税率を1,000本につき12,500円とする趣旨の規定である。なお、2020年度税制改正によって2031年3月31日までに延長されるとともに、1,000本につき13,500円に変更された〔所得税法等の一部を改正する法律(令和2年3月31日法律第8号)第15条による改正。同附則第1条により、期限の延長は2020年4月1日に施行される。また、税率の引き上げは同条第1号により、2020年10月1日から施行される〕。

 〔3〕道府県たばこ税

 道府県たばこ税の税率は、1,000本につき930円である(地方税法第74条の5)。

 〔4〕市町村たばこ税

 市町村たばこ税の税率は、1,000本につき5,692円である(同第468条)。

 〔5〕紙巻きたばことたばこ税

 財務省のサイト(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08_2.pdf)および日本たばこ産業株式会社のサイト(https://www.jti.co.jp/tobacco/knowledge/tax/index.html)によると、小売店において490円で発売されているたばこ(メビウスの各種、ピアニッシモの各種など)には、次のような形で消費税やたばこ税などが課されている。

たばこ税

 

 116.04円

23.7%

たばこ特別税

 

16.40円

3.3%

道府県たばこ税+市町村たばこ税

 

132.44円

27.0%

道府県たばこ税

18.60円

3.8%

市町村たばこ税

113.84円

23.2%

たばこ税+たばこ特別税+道府県たばこ税+市町村たばこ税

264.88円

54.1%

消費税

 

44.54円

9.1%

税合計

 

309.42円

63.1%

 〔6〕今後の税率の変更

 2018(平成30)年度税制改正において、加熱式たばこ、および加熱式たばこの喫煙用具を製造たばこに加えるとともに、加熱式たばこの重量を紙巻きたばこの本数に換算する方法が定められた。この換算方法は、激変緩和、予見可能性などを理由として、2018(平成30)年10月1日、2019(平成31)年10月1日、2020(平成32)年10月1日、2021(平成33)年10月1日および2022(平成34)年10月1日の5段階に分けて改められることとなっている。

 また、たばこ税の税率についても3段階に分けて変更されることとなっている(国税としてのたばこ税については既に示したが、下の表において再度示す)。

 

2018年9月30日まで

2018年10月1日より

2020年10月1日より

2021年10月1日より

たばこ税

5,302円

5,802円

6,302円

6,802円

道府県たばこ税

860円

930円

1,000円

1,070円

市町村たばこ税

5,262円

5,692円

6,122円

6,552円

合計

11,424円

12,424円

11,424円

14,424円

 (出典:「平成30年度税制改正の大綱(平成29年12月22日閣議決定)」81頁を基に、講義担当者が作成。税率は、全て1,000本についてのもの。)


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