三岐線は貨物路線でもあります。いや、貨物輸送が主体の路線である、と記すほうが正確でしょう。このような私鉄はそれほど多くなく、今年、静岡県の岳南鉄道で貨物輸送が取りやめられてからはますます貴重な存在となっています。
東藤原駅からJR富田駅まで、セメント輸送が行われています。東藤原駅の近くに太平洋セメントの工場があり、そこで生産されるセメントなどの製品が輸送されます。また、中部国際空港建設の際には埋立用の土砂の運搬も行っていました。
太平洋セメントは、小野田セメントの流れを受け継ぐ会社で、三岐鉄道にも深く関係しています。1994年、小野田セメントは秩父セメントと合併して秩父小野田セメントとなり、1998年には秩父小野田セメントと日本セメントが合併して太平洋セメントとなっています。
鉄道貨物には、積み替えという問題があります。トラック輸送でも積み替えがない訳ではないでしょうが、鉄道の場合はその回数がトラックよりも多くなるはずです。積荷によっては積み替えによって傷みが加速度的に進みます。輸送量、輸送ルートの双方で柔軟性に欠けますので、よほどの大量かつ定点的な輸送でなければ、鉄道貨物は優位に立てないでしょう。トラックなどのほうが小回りもきき
また、速さに劣るというのも無視できません。これは柔軟性の問題として記すこともできますが、高速道路網の整備が進んだことで、たとえば長崎から東京まで貨物を運ぶとするならば、渋滞さえなければトラックのほうがはるかに速く運べます。勿論、トラック輸送の危険性は重々承知しています。しかし、顧客の需要に合わせやすいのはどちらかとたずねられたら、トラックと答えざるをえません。
同じようなことは旅客についても言えます。私自身、平日、都内にある仕事先へ行く時は田園都市線を使いますが、埼玉県内へ行く時は自分で愛車の5代目ゴルフを運転することがあります。そのほうが速いからです。1時間以上も違いがあることが少なくありません。
JR江差線の末端区間が廃止されることが決まったようですが、新幹線と並行する在来線という、或る意味では特殊な問題があるとはいえ、役割を終えたと思われる路線あるいは区間については、今後、廃止されるところが多くなると思われます。はっきり数字を示して書くことができませんが、たとえば一日わずか5往復とか6往復とかというのでは、いかに人口稀少地帯を走る路線であっても、旅客輸送の役割を放棄しているとしか思えません。