カンボジア経済

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カンボジア経済2019年10大ニュース

2019年12月27日 | 経済
 2019年も押し詰まりました。カンボジア総合研究所チーフエコノミスト鈴木博の選ぶ「カンボジア経済2019年10大ニュース」です。(なお、日付はブログ記事掲載日です)

第1位 EU 特恵関税制度EBAの資格停止を検討

 2月11日、欧州連合(EU)欧州委員会は、特恵関税制度EBについて、カンボジアの一時的資格停止に関する手続きに着手したと発表しました。最終結論は、2020年2月に決定されます。EUでは、昨年以来、カンボジアの民主主義、労働者の権利、土地問題等について、調査を実施し、カンボジア側とも対話を続けてきましたが、包括的な改善が必要だと主張しています。特恵関税制度の資格停止は、カンボジア経済にとって最大とも言ってよい下振れリスクであり、その顕在化は、カンボジアの主力産業である縫製業に大きな打撃を与えかねないものと見られます。これまで順調な成長を続けてきたカンボジアにとって、正念場ともいえる事態に至ったものと考えられ、EUとカンボジア政府との対話とその結果が最後まで注目されます。

2月18日 EU カンボジアへの特恵関税制度の資格停止手続に着手
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/dd17a4c5fbbeba89236fa000b78bf3c8

11月20日 EU 特恵関税資格停止に関する報告書 カンボジア側に送付
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/0358279226b831618fc89a0c3abeea54


第2位 電力ひっ迫 3月~5月に計画停電

 3月18日、カンボジア電力公社(EDC)は、5月末までの期間、計画停電を実施するとの声明を発表しました。計画停電に至った理由として、1月の料金引下げによる需要増、異常な酷暑、水不足等を挙げています。国内の発電内訳は、水力が48.5%を占めていますが、乾季には設備容量の25%程度しか発電できないのが現状です。これは、ダム容量が不十分で、季節調整能力(雨期に水を貯めて乾季に備える)が不十分なためです。カンボジア政府は、緊急に発電所の建設や、近隣諸国からの電力輸入で乗り切りたいとしていますが、2020年の乾季も停電が予想されています。

3月29日 干ばつで予想外の電力不足 プノンペンで計画停電も
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/9a8b5ff94c3ddf6b2dc7cc3f80acb644

6月21日 今年の停電を受けて発電所を緊急建設へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/a44cca020f564f87b9611e7242394367

11月25日 2020年も計画停電か フン・セン首相が発言
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/128bae9de0e5f4556a000b6834503421


第3位 シアヌークビルで中国のビル崩壊 28名が死亡

  6月22日未明、シアヌークビル市街で建設中のビルが崩壊し、寝泊まりしていた作業員等のうち、28名が死亡、24名が負傷するという大惨事となりました。中国からの投資を受けて建設中だった同ビルは7階建てで、7~8割完成した状況でした。事故の原因は、基礎工事の欠陥等と見られています。カンボジアの一般の見方では、中国人がカンボジアの法を守らず、カンボジア当局と癒着してごり押しした結果と見ています。シアヌークビルで進む中国化や中国人による傍若無人なやり方に対して、カンボジアでは反中感情が確実に高まっており、危険水域にあるとの意見もあります。

6月28日 シアヌークビルで中国のビル崩壊 28名が死亡
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d4a353f0e10a3c678cf0c72b16e31ac7


第4位 世界初の中央銀行によるデジタル決済「バコン」試験運用開始

 11月18日、日系企業のソラミツ社は、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行と協力して、トークン型のカンボジア国立銀行デジタル決済「バコン」を開発し、正式導入に向けたテスト運用を開始したと発表しました。カンボジアのフィンテックは、急速に進展し始めており、先進国が一歩一歩進めてきたステップを一気に飛び越える「技術ジャンプ(蛙飛び)」の好例になるものと期待されます。

2月14日 カンボジアでもフィンテック浸透へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/416bab96c5f05ffbeb18e85b3953efdd

12月9日 ソラミツ カンボジア国立銀行デジタル決済「バコン」を開発
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/101a4b4ffc679e7efef66aa13939dc31


第5位 カンボジア ファーウェイ使用で5G早期導入へ

 4月28日、北京で開催された一帯一路会議に合わせて、カンボジア政府(郵政電気通信省)と中国の通信企業ファーウェイとの間で、カンボジアでの5Gネットワーク技術開発に関する協力覚書が調印されました。この覚書に基づき、カンボジアは、ASEANで最も早く5Gネットワークを構築することを目指すとしています。中国のファーウェイについては、中国のスパイ行為やサイバー攻撃に関与しているとの疑いが強まり、米国政府はファーウェイ製の機器の排除を決めています。こうした中で、カンボジアがいち早くファーウェイの採用に前向きの姿勢を示したことは注目されます。外交上手のフン・セン首相としては、米国の圧力で困難な状況にある中国及びファーウェイに塩を送ることで、より大きな見返りを得ることを考えているものと見られます。

5月8日 カンボジア 5Gでファーエイ製品使用へ 覚書締結
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/fdaf3b9dfdd4c454fa6bfd6f1c0f19a3

5月30日 ファーウェイ制裁にカンボジアでも懸念広がる
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/eaa83ecf3bb7205fbe934d2c34f5c362

9月2日 カンボジアの通信最大手スマート 年内にも中国ファーウェイの技術で5G導入へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/b49f3cb7381474a5512d210e51e30b1c


第6位 ロジスティクス費用削減へ カムコントロール廃止等

 1月11日、フン・セン首相は、手続に時間がかかることに加え、コスト面でも重荷になっていた商業省のカムコントロールによる国境検査を廃止することを表明し、2月1日から廃止しました。また、貿易関連コストの引下げに向けて、KAMSAB(Kampuchea Shipping Agency and Brokers)も廃止されました。この他、産業界から要望の強かった各種手数料の引下げ、年間休日数の6日間削減等が決まりました。

1月23日 カムコントロール 国境検査廃止へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/eb748aa300fc26c618867e372726042a

2月4日 貿易関連コスト引き下げに向けて KAMSABも廃止へ コンテナスキャン費用も引下げ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/8aa8fad89986ef4d5b6121438ae3be6a

4月17日 カンボジア政府 祝祭日の日数削減検討へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/0ccc01021a18ca6aa94cc45a0a1f4a2f


第7位 カンボジア初の高速道路が着工 財務には懸念

 3月22日、プノンペン~シアヌークビル間高速道路の起工式が開催されました。高速道路は、プノンペン近郊からスタートし、シアヌークビル港近くまでを結ぶ片側2車線、総延長190キロメートルの計画です。中国政府系企業が、BOT(建設・運営・譲渡)方式で受託しています。総工費を考えると、通行料収入だけで建設費までフルリカバリーすることは、かなり困難と見られます。なお、カンボジア政府は債務も負わず、債務保証もしていないとしています。

4月1日 プノンペン~シアヌークビル高速道路 起工式
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/37f3a5173e8f555a1882598b3e2e6555

12月17日 プノンペンシアヌークビル高速道路 2023年完工を目指す
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/1b11d5dece10c7ac7dd02d04ad168c68


第8位 オンラインギャンブル廃止へ 中国化の勢いに影響

 8月18日に、オンラインギャンブルライセンスの更新を行わないとする規制が発表されたことを受けて、シアヌークビル等から多くの中国人が出国しました。シアヌークビルでは、オンラインギャンブルとこれに付随する合法・違法なビジネスが中国人社会を支えていたと言われますが、オンラインギャンブル禁止等の影響で、中国の勢いが鈍っているとの見方もあります。

8月29日 カンボジア オンライン・ギャンブルの廃止へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6b81d252391a2b6b0aa0e01e0944bbde

9月18日 オンラインギャンブル禁止で シアヌークビルから中国人多数が出国
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d951686d02763c007c0b19bcf7695047


第9位 カンボジア株式市場が活況 

 これまで停滞していたカンボジア株式市場が活況を呈しました。2018年9月末の終値と2019年9月20日の終値を比較すると、シアヌークビル港湾公社の株価は3.5倍に、プノンペン港湾公社株も2倍に、プノンペン上水道公社も2倍に高騰しました。

9月25日 カンボジア株式市場が活況 シアヌークビル港湾公社株が急騰
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/697ed9c9a67a17306296073d60931165

5月29日 シアヌークビル港湾公社株 上組がJICAと巨額相対取引
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d007b4d8f812a2628fda82c93e1b8e56


第10位 マネーロンダリング カンボジアは再びグレー・リストに

 マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)による分類で、カンボジアは再びグレー・リスト入りすることとなりました。

3月4日 カンボジア マネーロンダリング対策拡充が必要に
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/cb7d90fc502ecfdf1304a7d7fb38ca1a

11月8日 カンボジアはマネーロンダリングに脆弱 引き続きグレー・リスト
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6f94746bdf4f93ff2d2ee6f1d06c58c9




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