2020年も押し詰まりました。カンボジア総合研究所チーフエコノミスト鈴木博の選ぶ「カンボジア経済2020年10大ニュース」です。(なお、日付はブログ記事掲載日です)
(写真は、アンコールワットです)
第1位 新型コロナの猛威 国内感染は抑え込むも経済は大打撃
今年は新型コロナウイルス問題が世界中を覆いました。カンボジアは、死者ゼロを続けており、国内での感染の抑え込みには成功しています。しかし、カンボジア経済は海外への依存度が高く、先進国や中国、周辺諸国の経済状況の悪化が直接大きく影響しました。欧米への輸出がメインの縫製業、中国等からの観光客に頼る観光業、中国等からの投資に頼る不動産・建設業等、カンボジア経済の主要エンジンは大きな打撃に直面しました。政府は、貧困世帯への現金支援、失業・一時帰休労働者への手当支援、中小企業への融資支援等を行っていますが、2020年の成長率はマイナスとなるものと見られます。なお、2021年はV字回復が期待されています。
世界的な新型コロナ対の影響で、出入国規制が強化され、カンボジアと日本を行き来することが難しくなりました。ANAの成田・プノンペン直行便も4月から運休となりました。
ブログ「カンボジア経済」では、毎週月曜日に前週の新型コロナの状況をお伝えしています。
12月28日 新型コロナ カンボジアの状況 12月28日
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/0a879ff4f1f6769b89995a907db670e3
第2位 EU 特恵関税制度EBAの一部資格停止 英国は離脱へ
8月12日、欧州連合(EU)の欧州委員会は、カンボジアに適用している特恵関税制度EBAの一部を停止すると発表しました。フン・セン政権が2018年の選挙がらみで強権的な対応をとったこと等から、「組織的かつ深刻な人権侵害」が続いていることを理由としています。全品目ではなく、衣料品や靴の一部、砂糖などが対象で、影響額はカンボジアの対EU輸出総額の約2割に当たる10億ユーロ(約1250億円)程度となる見込みです。なお、EUを離脱した英国は、2021年1月から独自の特恵関税制度UKGSPに移行しますが、この停止措置を引き継がないとしています。
8月16日 EUの特恵関税制度EBAの一部資格停止 ついに発動
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/18f7e4a6680b0a0adb787d9effbfec03
12月22日 英国 カンボジアに特恵関税を全面適用 EUの制裁は引き継がず
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/cb893e4fac0d3b7123c71f394c153d9c
第3位 中央銀行デジタル通貨「バコン」始動
10月28日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、中央銀行デジタル通貨「バコン」の正式スタートを記念する式典を開催しました。バコンは、日系企業のソラミツ社とNBCが協力して開発した中央銀行デジタル決済システムです。世界で2番目のスタートであり、大いに注目されます。
11月3日 カンボジアの中央銀行デジタル通貨バコン 正式スタート
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/716f8a4b0543325658068f4d3c71b9f3
6月26日 中央銀行 次世代決済システム バコン白書
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/4d234c048ea66693ffa1d6bc4ae20ca9
第4位 米中対立激化 カンボジアの軍事基地に中国進出疑惑
今年は、米中の対立が激化しました。小国であるカンボジアは、板挟み状態で綱渡り外交を強いられています。そうした中で、カンボジア軍のリアム海軍基地や、中国の民間企業が開発したダラ・サコー空港に中国軍進出疑惑が浮かび、米国からの「絶対に許さない」との強いメッセージが伝えられ、カンボジア政府は対応に追われました。
10月13日 カンボジアのリアム海軍基地 米国建設の軍施設破壊 中国進出の懸念深まる
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/67dc4278e86247a6fd6ff39bd38324e5
9月24日 米国 中国の優聯集団に制裁 カンボジアへの中国軍進出を懸念
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/baae8444306866ae26d1beff84139018
第5位 自由貿易協定 調印相次ぐ RCEP、中国FTA
カンボジアは、EUの特恵関税制度の一部資格停止を受けたこともあり、他国との貿易協定に積極的な姿勢を示し、地域的な包括的経済連携(RCEP)や中国との自由貿易協定に調印しました。また、韓国との自由貿易協定も交渉中です。ただ、これらの国とは、ASEANの自由貿易協定が既にあり、短期的に大きな効果を期待するのは無理があるものと見られます。
11月18日 地域的な包括的経済連携(RCEP)ついに調印 カンボジアへの効果は未知数
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/39e885e001234cd3d9ffc483deb72ba2
10月20日 中国の王毅外相 カンボジア訪問 自由貿易協定に調印
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/8cf8eed0847b6144f7a5a564accb2060
第6位 洪水被害甚大
カンボジアでは毎年のように雨期の終わりに洪水となっています。今年は、10月中旬から降り始めた雨で、大きな被害が出て、10月20日までに、34人が死亡、10万4348世帯が被害を受け、4万2332人(1万583世帯)が避難しました。
10月23日 洪水被害広がる2020
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/dfd7c00daac1589ccdcb89941c0cc1cf
第7位 日本政府 カンボジアを支援 250億円の巨額円借款供与
日本政府は、新型コロナで経済的影響を受けたカンボジアを支援することを目的とした緊急財政支援として250億円の円借款を供与しました。金額も大きく、タイミングも迅速で、大いに評価されます。日本政府は、この他にも、新型コロナ対策や洪水対策をはじめとして、カンボジアに本当に役に立つ支援を多数打ち出しています。
日本・カンボジア外相電話会談 円借款250億円を供与へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/85f67272fd5ad8c093e5c21dd50963e6
第8位 リエルの使用促進 ドル少額紙幣枯渇
5月28日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、金融機関向けに通達を発出し、9月1日以降、少額ドル紙幣(1ドル札、2ドル札、5ドル札)の中央銀行への持ち込みに際し手数料を課す可能性があると伝えました(実施は延期されている模様です)。この結果、少額ドル紙幣が市中で不足する事態となりました。プノンペンのイオンモールでは、8月1日以降、おつりについては1ドル札、5ドル札、10ドル札を使用せず、リエルに換算してリエル現金で支払うこととしています。カンボジアは高度にドル化した経済ですが、脱ドル化は非常に難しい政策の一つであり、慎重にゆっくりと進めることが肝要と見られます。
6月2日 中央銀行 ドルの小額紙幣に関する通達 思わぬ誤解で混乱招く
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/9e64d54b10e755c8062545c9b668802a
8月6日 イオン 8月からおつりを一部リエル化 少額ドル紙幣不足で
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/27c2385778aaf6627edf594e41c56256
第9位 ACLEDA銀行が大型上場
5月25日、カンボジアの商業銀行最大手のACLEDA銀行が、カンボジア証券取引所に上場しました。新規発行により、約1720万ドル(約18億4000万円)を調達しました。
8月12日、マレーシア系のPestech International Berhadのカンボジア現地法人の電気設備会社ペステック(PESTECH (Cambodia) Plc:略称PEPC)も、カンボジア証券取引所に上場しました。
5月28日 ACLEDA銀行株式上場 証券取引所も活況へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/332490fb592d555618df9b179c1c6a45
8月18日 ペステック カンボジア証券市場に上場
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6d9542d52639fd16ebab808214c50dbe
第10位 証券取引所に社債上場相次ぐ
民間企業による社債の発行、カンボジア証券取引所への上場が相次ぎました。まず、商業銀行中堅のプノンペン商業銀行が社債を4月21日に上場しました。続いて、カンボジアの流通大手RMA (Cambodia) PLCが4月30日に上場しました。この社債は、カンボジアで初となる信用保証・投資ファシリティ(Credit Guarantee&Investment Facility: CGIF)の保証が付されています。また、マイクロファイナンスのプラサックは、5月5日に社債を上場しました。
5月5日 プノンペン商業銀行、RMAC、プラサック 相次いで社債を発行・上場
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/81ad0e580582a4ff675887e46c9b7c51
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(写真は、アンコールワットです)
第1位 新型コロナの猛威 国内感染は抑え込むも経済は大打撃
今年は新型コロナウイルス問題が世界中を覆いました。カンボジアは、死者ゼロを続けており、国内での感染の抑え込みには成功しています。しかし、カンボジア経済は海外への依存度が高く、先進国や中国、周辺諸国の経済状況の悪化が直接大きく影響しました。欧米への輸出がメインの縫製業、中国等からの観光客に頼る観光業、中国等からの投資に頼る不動産・建設業等、カンボジア経済の主要エンジンは大きな打撃に直面しました。政府は、貧困世帯への現金支援、失業・一時帰休労働者への手当支援、中小企業への融資支援等を行っていますが、2020年の成長率はマイナスとなるものと見られます。なお、2021年はV字回復が期待されています。
世界的な新型コロナ対の影響で、出入国規制が強化され、カンボジアと日本を行き来することが難しくなりました。ANAの成田・プノンペン直行便も4月から運休となりました。
ブログ「カンボジア経済」では、毎週月曜日に前週の新型コロナの状況をお伝えしています。
12月28日 新型コロナ カンボジアの状況 12月28日
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/0a879ff4f1f6769b89995a907db670e3
第2位 EU 特恵関税制度EBAの一部資格停止 英国は離脱へ
8月12日、欧州連合(EU)の欧州委員会は、カンボジアに適用している特恵関税制度EBAの一部を停止すると発表しました。フン・セン政権が2018年の選挙がらみで強権的な対応をとったこと等から、「組織的かつ深刻な人権侵害」が続いていることを理由としています。全品目ではなく、衣料品や靴の一部、砂糖などが対象で、影響額はカンボジアの対EU輸出総額の約2割に当たる10億ユーロ(約1250億円)程度となる見込みです。なお、EUを離脱した英国は、2021年1月から独自の特恵関税制度UKGSPに移行しますが、この停止措置を引き継がないとしています。
8月16日 EUの特恵関税制度EBAの一部資格停止 ついに発動
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/18f7e4a6680b0a0adb787d9effbfec03
12月22日 英国 カンボジアに特恵関税を全面適用 EUの制裁は引き継がず
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/cb893e4fac0d3b7123c71f394c153d9c
第3位 中央銀行デジタル通貨「バコン」始動
10月28日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、中央銀行デジタル通貨「バコン」の正式スタートを記念する式典を開催しました。バコンは、日系企業のソラミツ社とNBCが協力して開発した中央銀行デジタル決済システムです。世界で2番目のスタートであり、大いに注目されます。
11月3日 カンボジアの中央銀行デジタル通貨バコン 正式スタート
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/716f8a4b0543325658068f4d3c71b9f3
6月26日 中央銀行 次世代決済システム バコン白書
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/4d234c048ea66693ffa1d6bc4ae20ca9
第4位 米中対立激化 カンボジアの軍事基地に中国進出疑惑
今年は、米中の対立が激化しました。小国であるカンボジアは、板挟み状態で綱渡り外交を強いられています。そうした中で、カンボジア軍のリアム海軍基地や、中国の民間企業が開発したダラ・サコー空港に中国軍進出疑惑が浮かび、米国からの「絶対に許さない」との強いメッセージが伝えられ、カンボジア政府は対応に追われました。
10月13日 カンボジアのリアム海軍基地 米国建設の軍施設破壊 中国進出の懸念深まる
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9月24日 米国 中国の優聯集団に制裁 カンボジアへの中国軍進出を懸念
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第5位 自由貿易協定 調印相次ぐ RCEP、中国FTA
カンボジアは、EUの特恵関税制度の一部資格停止を受けたこともあり、他国との貿易協定に積極的な姿勢を示し、地域的な包括的経済連携(RCEP)や中国との自由貿易協定に調印しました。また、韓国との自由貿易協定も交渉中です。ただ、これらの国とは、ASEANの自由貿易協定が既にあり、短期的に大きな効果を期待するのは無理があるものと見られます。
11月18日 地域的な包括的経済連携(RCEP)ついに調印 カンボジアへの効果は未知数
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/39e885e001234cd3d9ffc483deb72ba2
10月20日 中国の王毅外相 カンボジア訪問 自由貿易協定に調印
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第6位 洪水被害甚大
カンボジアでは毎年のように雨期の終わりに洪水となっています。今年は、10月中旬から降り始めた雨で、大きな被害が出て、10月20日までに、34人が死亡、10万4348世帯が被害を受け、4万2332人(1万583世帯)が避難しました。
10月23日 洪水被害広がる2020
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第7位 日本政府 カンボジアを支援 250億円の巨額円借款供与
日本政府は、新型コロナで経済的影響を受けたカンボジアを支援することを目的とした緊急財政支援として250億円の円借款を供与しました。金額も大きく、タイミングも迅速で、大いに評価されます。日本政府は、この他にも、新型コロナ対策や洪水対策をはじめとして、カンボジアに本当に役に立つ支援を多数打ち出しています。
日本・カンボジア外相電話会談 円借款250億円を供与へ
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第8位 リエルの使用促進 ドル少額紙幣枯渇
5月28日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、金融機関向けに通達を発出し、9月1日以降、少額ドル紙幣(1ドル札、2ドル札、5ドル札)の中央銀行への持ち込みに際し手数料を課す可能性があると伝えました(実施は延期されている模様です)。この結果、少額ドル紙幣が市中で不足する事態となりました。プノンペンのイオンモールでは、8月1日以降、おつりについては1ドル札、5ドル札、10ドル札を使用せず、リエルに換算してリエル現金で支払うこととしています。カンボジアは高度にドル化した経済ですが、脱ドル化は非常に難しい政策の一つであり、慎重にゆっくりと進めることが肝要と見られます。
6月2日 中央銀行 ドルの小額紙幣に関する通達 思わぬ誤解で混乱招く
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/9e64d54b10e755c8062545c9b668802a
8月6日 イオン 8月からおつりを一部リエル化 少額ドル紙幣不足で
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第9位 ACLEDA銀行が大型上場
5月25日、カンボジアの商業銀行最大手のACLEDA銀行が、カンボジア証券取引所に上場しました。新規発行により、約1720万ドル(約18億4000万円)を調達しました。
8月12日、マレーシア系のPestech International Berhadのカンボジア現地法人の電気設備会社ペステック(PESTECH (Cambodia) Plc:略称PEPC)も、カンボジア証券取引所に上場しました。
5月28日 ACLEDA銀行株式上場 証券取引所も活況へ
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/332490fb592d555618df9b179c1c6a45
8月18日 ペステック カンボジア証券市場に上場
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/6d9542d52639fd16ebab808214c50dbe
第10位 証券取引所に社債上場相次ぐ
民間企業による社債の発行、カンボジア証券取引所への上場が相次ぎました。まず、商業銀行中堅のプノンペン商業銀行が社債を4月21日に上場しました。続いて、カンボジアの流通大手RMA (Cambodia) PLCが4月30日に上場しました。この社債は、カンボジアで初となる信用保証・投資ファシリティ(Credit Guarantee&Investment Facility: CGIF)の保証が付されています。また、マイクロファイナンスのプラサックは、5月5日に社債を上場しました。
5月5日 プノンペン商業銀行、RMAC、プラサック 相次いで社債を発行・上場
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/81ad0e580582a4ff675887e46c9b7c51
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