2025年1月1日から縫製業等に適用されるカンボジアの最低賃金は、208ドル/月で決着しました。現在は204ドルで、2.0%の上昇となります。カンボジアの最低賃金の上昇は、2012年61ドルから2013年80ドル(31.1%増)、2014年100ドル(25.0%増)、2015年128ドル(28.0%増)と急激なものがありましたが、労働諮問委員会で客観的基準を使用し始めた2016年は140ドル(9.4%増)、2017年153ドル(9.3%増)、2018年170ドル(11.1%増)、2019年182ドル(7.1%増)、2020年190ドル(4.4%増)、2021年192ドル(1.1%増)、2022年194ドル(1.0%増)、2023年200ドル(3.1%増)、2024年204ドル(2.0%増)と上昇幅が落ち着いてきています。2025年の最低賃金は、世界経済の減速傾向の影響で経済に不透明感が広がっている中、上昇幅が抑え込まれたものと見られます。
最低賃金は、政府、雇用者、労働組合の3者の代表51名が参加する労働諮問委員会で討議されてきました。9月19日の会議において投票が行われ、51票中46票が賛成した206ドルで合意し、労働大臣に答申されました。この結果を受けて、毎度おなじみの首相の鶴の一声で2ドル増額を加えることを決定し、最終的に208ドルで決着しました。なお、使用者側からの意見もあって、フン・セン前首相が始めた追加の金額は2019年までの慣例だった5ドルから、2020年は3ドルに、2021年以降は2ドルに縮減されています。
内需振興のためにも、最低賃金の引き上げは必要不可欠ですが、急激な上昇は外国投資家の懸念となっていました。カンボジア政府では、最低賃金の検討に当って、労働生産性上昇率や物価上昇率等の客観的基準を2016年の最低賃金から使用し始めており、雇用者側も労働者側も納得感が高い決定方式が次第に定着しつつあります。
2020年以降は、新型コロナの影響が大きく、工場の閉鎖や労働者の失業・一時帰休が大きな問題となっており、こうした情勢も反映したものと見られます。昨年と今年は、他通貨に比べてドル及びリエルが増価しており、輸出競争力を勘案すると賃金の上昇幅を抑える必要もありました。他方、2022年以降は、名目GDP成長率の伸びに賃金の伸びが追いついておらず、労働分配率が低下しているものと推測されます。カンボジア経済回復のための国内需要を喚起する観点からは、すくなくとも物価上昇・GDP成長に見合う実質賃金が確保できるような最低賃金の見直しが必要です。こうした様々な要因の間でバランスをとりつつ上昇幅を決定していくことが重要なものと見られます。
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最低賃金は、政府、雇用者、労働組合の3者の代表51名が参加する労働諮問委員会で討議されてきました。9月19日の会議において投票が行われ、51票中46票が賛成した206ドルで合意し、労働大臣に答申されました。この結果を受けて、毎度おなじみの首相の鶴の一声で2ドル増額を加えることを決定し、最終的に208ドルで決着しました。なお、使用者側からの意見もあって、フン・セン前首相が始めた追加の金額は2019年までの慣例だった5ドルから、2020年は3ドルに、2021年以降は2ドルに縮減されています。
内需振興のためにも、最低賃金の引き上げは必要不可欠ですが、急激な上昇は外国投資家の懸念となっていました。カンボジア政府では、最低賃金の検討に当って、労働生産性上昇率や物価上昇率等の客観的基準を2016年の最低賃金から使用し始めており、雇用者側も労働者側も納得感が高い決定方式が次第に定着しつつあります。
2020年以降は、新型コロナの影響が大きく、工場の閉鎖や労働者の失業・一時帰休が大きな問題となっており、こうした情勢も反映したものと見られます。昨年と今年は、他通貨に比べてドル及びリエルが増価しており、輸出競争力を勘案すると賃金の上昇幅を抑える必要もありました。他方、2022年以降は、名目GDP成長率の伸びに賃金の伸びが追いついておらず、労働分配率が低下しているものと推測されます。カンボジア経済回復のための国内需要を喚起する観点からは、すくなくとも物価上昇・GDP成長に見合う実質賃金が確保できるような最低賃金の見直しが必要です。こうした様々な要因の間でバランスをとりつつ上昇幅を決定していくことが重要なものと見られます。
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