英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

バンクーバー五輪雑感⑤ フリージンガーの喜怒哀苦

2010-03-09 15:39:13 | スポーツ
 スピードスケートの女子団体パシュート、準決勝 ドイツ×アメリカ

 レースは、半周目以降ドイツがピッチを上げ、ハイペースで展開する。アメリカも追従するが徐々に離される。残り1周で0.89秒差になり、足取りも鈍る。ドイツの決勝進出は確定かと思われた。
 しかし、残り3/4周で、ドイツチームのフリージンガーに異変が!


乳酸が溜まり足にきて、バランスを崩すフリージンガー


必死でチームメイトの後を追うが、ままならない


チームメイトも足を止め、フリージンガーの頑張りを願う


ゴール直前、転倒しスライディング状態


エッジの通過でゴールが認められるので、必死に足を伸ばしてフィニッシュ


ゴール後、リンクをたたいて悔いる


悲嘆にくれるフリージンガー


恐る恐る結果を確認する…


勝利を知り、思わず起き上がる。
その速いこと、速いこと。


掲示板を確認しながら、喜ぶ。
このシーンVTRが、場内スクリーンで映されたとき、場内は沸いていた。


別角度からのゴールシーン


最後の直線で、バランスを崩す


手で必死に氷をかく


必死で足を出すフリージンガー。
チームメイトも負けだと思い、がっくりしている。


「喜怒哀楽」ではなく、「喜怒哀苦」のフリージンガーだった。
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バンクーバー五輪雑感④ スピードスケート 女子団体パシュート

2010-03-09 01:52:05 | スポーツ
 0.02秒差……もう本当に紙一重の勝負でした。

 3人が隊列を組んで、リンクを女子は6週、男子は8周走り、3人目の選手のゴールタイムを競うという競技です。400mのリンクを6周(男子は8周)ですが、内側のレーンだけ滑るので、2400m(3000m)よりは短いです。

 この競技のポイントは

①空気抵抗を軽減するための、息の合ったスケーティング

②先頭交代も熟練が必要で、隊列から離れて隊列から置いていかれると、追いかけるのにかなりの体力を消耗してしまう

③3人で隊列を組むため、個人の時よりスピードが出てペース感覚が狂う。また、いつもよりコーナリングも技術・体力が必要になる。しかも、常に内側のレーンを走るため、さらに負担が大きい

④先頭の時とそうでない時は、空気抵抗が違うので、その落差がつらい

⑤先頭の順番や負担量は、3人のスピード・持久力の特性を熟慮しなければならない

⑥ペースの配分も、3人のスピード・持久力の特性を熟慮しなければならない


 ①~④は練習で克服できるポイントだが、⑤⑥も練習によって最適レースプランが練られてきているはず。
 ただ、⑤⑥は練習だけで把握できるわけでなく、当日のリンク状態や選手の調子によって、対応しなければならない。しかも、①~④が如何万全であっても、⑤⑥(特に⑥)を誤ると、大きな失速を招いてしまう。

 3番目の選手のゴールタイムを競うので、落伍者(失速者)を出しては勝利は不可能。
 実際、準々決勝では、強豪のロシアがひとりが失速してポーランドに敗れている。また、優勝したドイツも、準決勝では名選手でベテランのフリージンガーが完全に足にきて、倒れこみながらゴールインという敗退寸前の状況になっている。

 3人が中距離タイプで揃うのが最適な気がするが、混合タイプでもその特性を活かした先頭の配分順番、また、ペース配分を練れば、逆に強味となる。
 日本チームは小平が短距離型、田畑が中距離型、穂積が長距離型と難しいが、3人とも実力者で、しかも田畑が経験豊富なので、メダルはかなり有力と見られていた。

 まず、準々決勝 日本×韓国  (半周ごとのラップタイム。最初の半周はスピードに乗るのに時間がかかる)

日本 19.25 14.32 14.11 14.31 14.47 14.79
韓国 19.09 14.25 13.90 14.47 14.75 15.08

日本 14.69 15.07 15.13 15.56 15.33 15.84  3:02.89
韓国 15.23 15.69 15.64 16.01 16.41 16.92  3:07.44

 レース序盤、意欲的に飛ばした韓国にリードされたが、冷静にラップを刻み2周半で並び、後は差を広げるだけ。最後の半周は流してゴールする快勝。
 韓国は、飛ばし過ぎが祟った。特に、終盤、選手がひとり遅れ気味になった。


 その他の準々決勝では ランク2位のロシア(3:04.86)がランク9位のポーランド(3:02.90)に敗れるという波乱が起こった。
 ロシアは先頭交代でミスした選手が消耗し足がもつれ、ラストが16.20 17.22と大ブレーキを起こしてしまった。対照的にポーランドは最後に、15.11 15.16とペースを上げ逆転勝ち。
 また、優勝候補筆頭のカナダ(3:02.24)もアメリカ(3:02.24)に敗れた。抜きつ抜かれつの大接戦だった。カナダはペース配分を間違えたわけでもなく、ラスト1周は15.37 15.45(アメリカは15.58 15.38)だった。
 強豪国同士のドイツ×オランダはラスト1周で0.28差を、14.98 14.72 と飛ばし、3:01.97で、15.43 15.97の3:03.37のオランダを逆転勝ちしている。



 準決勝はポーランド戦。

日本    19.28 14.63 13.97 14.31 14.33 14.73
ポーランド 19.33 14.21 14.29 14.32 14.45 14.83

日本    14.79 15.08 15.14 15.57 15.49 15.72  3:02.72
ポーランド 15.22 15.10 15.15 15.30 15.13 15.16  3:02.91

残り1周半で1.48あった差を0.19差まで追いつかれ、きわどい勝負だった。


 レース直後
アナウンサー「前半の貯金が最後まで効きましたねえ」
解説者   「韓国戦でスタートダッシュで初速に乗るのが遅れたものですから、今日は修正してきましたよね」

 私は、的外れに思えた。
 実際、最初の1周は韓国戦の方が速い。逆に3ラップ目13秒台になったのが、最後のスタミナ切れに繋がったように思う。ポーランドは惜しくも敗れたが、初戦に続いてプラン通り(序盤は抑えて、後半追い上げる)のレースだったのではないか。3位決定戦でも、このスタンスを貫き、アメリカを終盤逆転して銅メダルを手にしている。


 準決勝 第2レース  ドイツ×アメリカ

アメリカ 18.94 14.35 14.40 14.47 14.87 14.54
ドイツ  19.45 14.31 14.26 14.09 14.54 14.72

アメリカ 14.93 15.03 15.38 15.38 15.78 15.71  3:03.78
ドイツ  14.99 14.93 15.19 14.92 15.55 16.53  3:03.58

 レースは、半周目以降ドイツがピッチを上げ、ハイペースで展開する。アメリカも追従するが徐々に離される。残り1周で0.89秒差になり、足取りも鈍る。ドイツの決勝進出は確定かと思われた。
 しかし……ドイツチームのフリージンガーが残り3/4周でバランスを崩す。完全に足にきている。必死に立て直し、チームメイトを追うがままならない。最後は転んで滑り込む形でゴールイン。
 1周前より1.5秒ペースダウンしてしまった。が、アメリカも消耗しており0.2秒差で辛くも逃げ切った。この辺りの様子は別記事『フリージンガーの喜怒哀苦』でご紹介します。





 いよいよ、決勝。ドイツは準決勝で失速したフリージンガーに代えて、シェロップが起用された。

 解説者「シェロップは3000m中心の選手なので、トップスピードに乗せるまでに時間がかかる。そこで、日本は先行しておきたい。半周で0.5秒、1周で1秒くらいリードしておきたい」と。
 一緒に並んで滑るのならともかく、半周ずつ分かれて滑るので、先行云々は関係なく(心理面の影響はあるかもしれないが)、ゴールのタイムが問題なので、解説者の言葉は的外れ。ペース配分や先頭交代の巧みさなど、如何にパフォーマンスを発揮できるかが勝負だ。いくら先行しても、オーバーペースによって終盤失速するのが一番怖い。序盤に0.2秒、0.3秒稼いでも、終盤、0.5秒、1秒ロスするのでは意味がない。いや、逆効果だ。

日本   19.47 14.22 13.99 14.37 14.52 14.85
ドイツ  19.55 14.73 14.52 14.70 14.60 14.92

日本   14.84 15.07 14.96 15.45 15.42 15.68  3:02.84
ドイツ  14.95 15.08 14.86 14.97 15.02 14.91  3:02.82

 日本は序盤からペースを上げ、そのスピードを維持、できるだけ粘っていこうというレースプラン。ドイツはメンバーをチェンジしたこともあり、序盤をやや抑えて終盤追い込むというレースプラン。
 両チーム、そのプランを実践していく。私見であるが、日本は3ラップ目と9ラップ目が若干頑張りすぎのように思うが、ほぼ狙い通りのラップタイムであろう。残り2周の時点で1.72秒のリードを奪っていた。中継を見ていた日本人すべてが金メダルが見えたのではないだろうか。
 しかし、ここからドイツが追い上げる。14.86秒 14.97秒 15.02秒と好ラップを刻む。日本も14.96秒 15.45秒 15.42秒と踏ん張る。差を縮められたものの残り半周で0.74秒差を保っていた。直前の半周では0.4秒しか詰められていない。しかし、「先行逃げ切り」対「後半追い込み」を考慮すると、縮められるタイムは大きくなる可能性が大だ。
 準決勝で日本は終盤失速気味で、ラスト半周は日本は15.72秒要している。日本がこのタイムで滑り、ドイツが直前のペースを維持して15秒で滑るとすると、勝負は際どい。

 ラスト。日本の動きは悪くない。行けるか?……ゴール…日本のタイムに「+」マークが……残念…0.02秒。紙一重。ほんのわずかな差が、金と銀のメダルの色を分けた。なんと大きな差なのだろうか。
 ラスト半周、日本は15.68秒でカバーした。しかし、ドイツは14.91秒、さらにラップを縮めてしまった。
 日本は残り1周を15.42秒、15.68秒で準決勝の15.49秒、15.72秒よりラップを縮めている。レースのタイムは準決勝の3:02.72よりも3:02.82やや落としているが、2日で3レース、準決勝とのインターバルが2時間と言うことを考えると、ほぼ100%の力を出し切ったと言える。
 これはもう、それを上回ったドイツを讃えるしかない。

 金メダルおめでとう。銀メダルおめでとう。
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