英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その6(終)

2020-09-23 17:35:51 | 将棋
【「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その5」の続き】


 第9図より、羽生九段は決め手ともいえる△7二飛を逃し、▲7八銀△7八同角成▲同金△同龍の角と金銀の二枚替えの駒損を選択。飛車を手にすることで、駒損に見合う(それ以上の)利を得られるのなら良いのだが、今回の場合はそうではなかったようだ(詳しくは「その5」)。
 羽生九段がなぜ誤ったのかは、時間切迫と消耗によるものと思われるが、具体的要因としては、
①△8三角が気になった
②振り替わり後の飛車打ちを過大評価した の2要素。

①△8三角が気になった
 詳しい変化は「その5」を参照していただきたいが、▲7八銀以下の振り替わりで後手の6九の角を排除することで、危険な△8三角の筋を回避しようとしたのかもしれない。遠因として、9図の直前の△2八歩成▲同金の利かしを、「利かされた」ことにしたくなかったのではないだろうか。

②振り替わり後の飛車打ちを過大評価した
 これについては、この後の展開を見てみよう。
 ▲7八銀(第10図)以下、△7八同角成▲同金△同龍に▲8二飛と打つ。期待の飛車打ちか仕方なしの飛車打ちかは不明だが、△7二歩と受けられてみると、存外(存外以上か?)、効果がない。歩で飛車の利きを止められてしまうのは痛い。損な取引だ。
 △7二歩に羽生九段は▲8七角の王手龍取りを掛けるが……

 王手龍取りは王手龍取りなのだが、純粋な王手龍取りではない。△8七同龍▲同飛成で単なる飛車角交換に終わり、しかも手番を後手に渡すことになってしまった。
 《▲8二飛が△7二歩で大したことなかった》、あるいは、《王手龍取りが大したことなかった》辺りに羽生九段の誤算があったのかもしれない。

 ところで、巷の評価値サイトでは、▲8二飛では▲7七飛(不思議図1)が最善手と示し、以下△同龍▲同銀△2六飛▲2七角△3六歩▲1七金……の手順を提示していた。

 ▲7七飛△同龍▲同銀とわざわざ後手を引いて7七に銀を上げて玉の脇を開け、後手の龍を消したと言っても、後手の持駒に飛車を加わったのは損な気がする。
 ただ、その後の手順も、理解不能。△2六飛とややこしい所に打ち、その後の手順もややこしい……




 第12図、駒割はほぼ互角だが、持駒は飛車と歩2枚と心細い。後手玉は中段に引っ張り出されて不安定で、後手玉を包囲している先手の桂香も不安定。ほぼ互角の形勢だが、羽生九段の残り時間が3分しかなく(糸谷八段は1時間19分)、終盤の入り口に逆戻りしたことを考えると、勝つのは相当難しそうだ。
 しかも、△4四歩に▲8六飛では辛い。▲8六飛は後手からの△6五角や△6九角の筋をかわしながら▲5六龍と回る手を含みにした手だが、後手の△4四歩と比べると価値が低い。

 以下、30手ほど指し継がれ、多少の紆余曲折はあったものの、2敗目を喫することとなった。
コメント
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