う~ん,あそこで考えるのが羽生将棋なのだが……
……でも、夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがないんだよなあ……
…………これは「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その8」の括りの言葉。
対飯島七段戦、本局の糸谷八段戦に限らず、近年、こう感じることが多々ある………
(「2020 A級順位戦 羽生九段-佐藤天九段 その1」の続きを書けないままですが、本局を優先します。私の場合、悔しさが執筆のエネルギーなので、時間の経過とともにエネルギーが減少してしまいます。でも、対佐藤天戦も書きます…たぶん)
さて、本局の進行は、その飯島戦と同じような経緯で第1図に進んだ(参考:「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その1」)。
第1図は先手が▲2四歩と垂らしたところ。この直前の手順は△8六歩(突いたのではなく打った)▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛。後手の飛車の位置は8四だったので、これは純粋に1手パス(手渡し)。さらに、後手玉は4二を経由しての5二に移動しているので、二手損していることになる。
横歩取り戦の後手番の主張は、先手に横歩を取らす間に手を進め攻撃態勢を整え主導権を握ることにあるが、その主張を手放してしまっている。それにより、先手の利(歩得)が残り、その利を行使したのが図の▲2四歩である。
この1図から、糸谷八段は、飯島七段と同様に△7五歩と突き捨て▲同歩に△6五桂と跳ねだす。
第2図での有力手は①▲3三角成と②▲7六飛。(他には▲6六歩も考えられる)
①の▲3三角成は、後手からいつでも△7七歩があって一瞬ではあるが▲7七同桂の悪形を強いられる嫌味があるので、その前に角をさばいてしまおうという手で(もちろん、角を手持ちにして攻め筋を増やす意味もある)、第一感の手と言える。ただし、手順に2一の桂を跳ねさせるマイナスもある。
これに対し、②の▲7六飛は非常に指しづらい手だ。直前に打った2四の歩を△2四飛と払われてしまう手が生じるからだ(しかも、飛車成りを見ての先手)。
①は人間の手、②はPCの手と言えよう。
飯島戦での羽生九段の指し手は①▲3三角成。
△3三同桂に▲5六角。桂取りと▲2三歩成を見た角打ちに対し、飯島七段も飛車香両取りの△4四角と打ち返している。
この後も激しい攻防が続いたが、飯島七段が主導権を握っていた印象がある(参考:「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その2」)。
本局、羽生九段は②▲7六飛を選択。以下、△2四飛▲2五歩△5四飛▲6八銀△2八歩▲同金△8八角成▲同金△3三桂▲7七桂△同桂成▲同金△6五桂▲6六金△8四飛と進む。
角交換の際、8八の閑地に追いやられた金を▲7七桂△同桂成▲同金と手順に活用した羽生九段。さらに、それを逆用し△6五桂と打ち▲6六金と引っ張り出し、△8四飛と空いた8筋をに成り込みを見せる糸谷八段。虚々実々の応酬だ。6六の金が引っ張り出された存在になるか、中央に厚みを加える存在になるかが焦点とありそうだが、羽生九段としては8九の桂を手持ちにできたことはプラス要素と見ることができる。
第3図での応手が悩ましい。
『棋譜速報』の解説では「(1)▲8六歩は△8七角の飛車取りがある。8七の地点を守るなら(2)▲7九桂か(3)▲8六桂か。
あるいは、思いきって(4)▲6五金と取り、飛車の侵入を許してしまう順もあるかもしれない」。
『ABEMA』のAIは▲7四歩で先手優勢を示していたと記憶している。
羽生九段の第一感も▲7四歩であろう。本筋の手で《これで勝てるはず》だ。
以下△8七飛成▲7三歩成は必然だが、この局面は先手にとっては非常に不安を感じる。▲7三歩成は後手陣の急所を突いているという感触はあるが、それ以上に先手玉のひっ迫感が強く感じられる。
後手の手段は△7七角。先手は▲7二とと銀を取るよりないが、以下△6八角成▲同玉に△7七銀が強烈(に思える)。▲5九玉に△6六銀成(金の補充と先手の飛車の守りの利きをそらす)▲同飛(▲同歩は飛車がタダ)に△7八龍が想定される(生きた心地がしない図)
図より龍に当てつつ玉の周辺を守る▲6九銀で受かっているように見える。以下△7二龍とと金を払う手なら▲6五飛と桂を取り去れば、後手の攻めは切れ模様となるが、△5七桂成という強烈な手がある。
△5七桂成に▲7八銀と龍を取るのは△5八金で詰む。また▲4九銀と守備駒を足しても△6八金で詰みなので、▲5七同銀と取るよりないが、△2八龍と金を抜かれてしまう(しかも、次に△6八金の詰めろ)。
しかし、△2八龍に▲4九銀と打っておけば、不思議と先手玉は生命力があり、こう進めば先手が有望のようだ。
ただし、上記は変化のほんの一例で、変化図2より△8七飛成▲7三歩成以下の手順後の変化は多岐に亘り、踏み込むのには相当の読みと覚悟がいる。
△8四飛(第3図)の局面になったのは午後5時22分。羽生九段は熟考に沈む……。
夕食休憩前の長考……嫌な予感しかしない。 「その2」に続く
……でも、夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがないんだよなあ……
…………これは「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その8」の括りの言葉。
対飯島七段戦、本局の糸谷八段戦に限らず、近年、こう感じることが多々ある………
(「2020 A級順位戦 羽生九段-佐藤天九段 その1」の続きを書けないままですが、本局を優先します。私の場合、悔しさが執筆のエネルギーなので、時間の経過とともにエネルギーが減少してしまいます。でも、対佐藤天戦も書きます…たぶん)
さて、本局の進行は、その飯島戦と同じような経緯で第1図に進んだ(参考:「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その1」)。
第1図は先手が▲2四歩と垂らしたところ。この直前の手順は△8六歩(突いたのではなく打った)▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛。後手の飛車の位置は8四だったので、これは純粋に1手パス(手渡し)。さらに、後手玉は4二を経由しての5二に移動しているので、二手損していることになる。
横歩取り戦の後手番の主張は、先手に横歩を取らす間に手を進め攻撃態勢を整え主導権を握ることにあるが、その主張を手放してしまっている。それにより、先手の利(歩得)が残り、その利を行使したのが図の▲2四歩である。
この1図から、糸谷八段は、飯島七段と同様に△7五歩と突き捨て▲同歩に△6五桂と跳ねだす。
第2図での有力手は①▲3三角成と②▲7六飛。(他には▲6六歩も考えられる)
①の▲3三角成は、後手からいつでも△7七歩があって一瞬ではあるが▲7七同桂の悪形を強いられる嫌味があるので、その前に角をさばいてしまおうという手で(もちろん、角を手持ちにして攻め筋を増やす意味もある)、第一感の手と言える。ただし、手順に2一の桂を跳ねさせるマイナスもある。
これに対し、②の▲7六飛は非常に指しづらい手だ。直前に打った2四の歩を△2四飛と払われてしまう手が生じるからだ(しかも、飛車成りを見ての先手)。
①は人間の手、②はPCの手と言えよう。
飯島戦での羽生九段の指し手は①▲3三角成。
△3三同桂に▲5六角。桂取りと▲2三歩成を見た角打ちに対し、飯島七段も飛車香両取りの△4四角と打ち返している。
この後も激しい攻防が続いたが、飯島七段が主導権を握っていた印象がある(参考:「2020王座戦 挑戦者決定トーナメント 羽生九段-飯島七段 その2」)。
本局、羽生九段は②▲7六飛を選択。以下、△2四飛▲2五歩△5四飛▲6八銀△2八歩▲同金△8八角成▲同金△3三桂▲7七桂△同桂成▲同金△6五桂▲6六金△8四飛と進む。
角交換の際、8八の閑地に追いやられた金を▲7七桂△同桂成▲同金と手順に活用した羽生九段。さらに、それを逆用し△6五桂と打ち▲6六金と引っ張り出し、△8四飛と空いた8筋をに成り込みを見せる糸谷八段。虚々実々の応酬だ。6六の金が引っ張り出された存在になるか、中央に厚みを加える存在になるかが焦点とありそうだが、羽生九段としては8九の桂を手持ちにできたことはプラス要素と見ることができる。
第3図での応手が悩ましい。
『棋譜速報』の解説では「(1)▲8六歩は△8七角の飛車取りがある。8七の地点を守るなら(2)▲7九桂か(3)▲8六桂か。
あるいは、思いきって(4)▲6五金と取り、飛車の侵入を許してしまう順もあるかもしれない」。
『ABEMA』のAIは▲7四歩で先手優勢を示していたと記憶している。
羽生九段の第一感も▲7四歩であろう。本筋の手で《これで勝てるはず》だ。
以下△8七飛成▲7三歩成は必然だが、この局面は先手にとっては非常に不安を感じる。▲7三歩成は後手陣の急所を突いているという感触はあるが、それ以上に先手玉のひっ迫感が強く感じられる。
後手の手段は△7七角。先手は▲7二とと銀を取るよりないが、以下△6八角成▲同玉に△7七銀が強烈(に思える)。▲5九玉に△6六銀成(金の補充と先手の飛車の守りの利きをそらす)▲同飛(▲同歩は飛車がタダ)に△7八龍が想定される(生きた心地がしない図)
図より龍に当てつつ玉の周辺を守る▲6九銀で受かっているように見える。以下△7二龍とと金を払う手なら▲6五飛と桂を取り去れば、後手の攻めは切れ模様となるが、△5七桂成という強烈な手がある。
△5七桂成に▲7八銀と龍を取るのは△5八金で詰む。また▲4九銀と守備駒を足しても△6八金で詰みなので、▲5七同銀と取るよりないが、△2八龍と金を抜かれてしまう(しかも、次に△6八金の詰めろ)。
しかし、△2八龍に▲4九銀と打っておけば、不思議と先手玉は生命力があり、こう進めば先手が有望のようだ。
ただし、上記は変化のほんの一例で、変化図2より△8七飛成▲7三歩成以下の手順後の変化は多岐に亘り、踏み込むのには相当の読みと覚悟がいる。
△8四飛(第3図)の局面になったのは午後5時22分。羽生九段は熟考に沈む……。
夕食休憩前の長考……嫌な予感しかしない。 「その2」に続く