英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その4

2020-09-11 15:56:24 | 将棋
【「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その3」の続き】


 図は▲8七銀と打ったところ。変な位置への銀打ちだが、好手だ。
 後手玉への包囲網は出来上がっており、この銀打ちで飛車の入手は確実、先手玉も安泰とは言えないが差し迫った状態ではない。
 不安要素は残り時間が15分と切迫してきたこと。だが、ここまでくれば、自玉の危険度を図りながら、普通に後手玉に迫っていけばよい。


 第8図以下、△6九角▲4八玉△2八歩成(勝負手図)▲同金△7七飛成▲同金△8八龍▲8九歩△同龍(第9図)。

 上記の手順の△2八歩成(勝負手図)の利かしの善悪は微妙。金を2八に移動させ先手玉の頭(4七の地点)を薄くするプラスの半面、2七の歩で押さえていた先手玉の移動範囲を広げてしまうマイナスもある。
 △2八歩成……この成り捨ては将棋の流れに波紋を投げかける一着となった。

 羽生九段の不運は、この成り捨てに対し、放置して▲7八銀と飛車を取る手も魅力的だったこと。実際、▲7八銀と指しても充分優位を維持できていた(▲2八同金と▲7八銀は同等)。
 この二者択一に4分を費やし、羽生九段の残り時間は11分となってしまった。
 さらに、第9図では、直前の▲8九歩に2分を消費し、残り9分となっていた。

 ここで、羽生九段が勝利に近づくべく読みを入れる。
 ABEMAのAIは▲7二飛で評価勝率は勝勢の値を示し、棋譜中継の解説も「後手の竜が一段目に移動したため、いまなら▲7二飛の金取りが利くか。△8三角が怖い切り返しだが、以下▲5二飛成△4七角上成に▲3九玉と引けば先手が残している」と。棋譜中継は控えめな評価だ。

 ………羽生九段は動かない。残り時間が刻々と減っていく。

「その5」に続く
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