■16■
冬になり、
大阪御堂筋のイチョウ並木は鮮やかに黄色になりました。
しかし、多くの人に踏み潰された銀杏は悪臭を放ちました。
「やっぱり何だかんだで難波は臭い・・」
田舎に帰省しました。
高校を出て最初の正月を迎えました。
元旦は家族と過ごし、
二日は退屈したので商店街天神橋アーケードの喫茶「ひいらぎ」に向かいました。
外が見える入り口付近に座りました。
「アメリカンをください!」
そう言ってタバコに火を付けました。
ちょうどコーヒーが運ばれた頃、
店のガラス前を1台の自転車が通り過ぎました。
目を疑いました、
「え?あれは・・アンズちゃん!?・・のような・・」
「おばちゃん!ちょっとゴメン!すぐ戻るけん!」
お店を飛び出しました。
自転車を漕ぐ後姿は大阪のアンズちゃんそっくりでした。
だんだんと遠ざかっていきます・・
瞬時に叫びました!
「アンズちゃ~~~ん!!!」
アーケードの中で、声が響きました。
声に反応して「チラッ」と後を振り向いた女性は、
自転車のスピードを全力にして信号を曲がりました・・
「?あれ?人違い?・・でもそっくりやったけど・・」
その晩は雨になりました。
地元の同級生達と楽しい酒を交わしました。
その熱は冷めやらず、2次会に突入しました。
2次会は「チロリン村」という居酒屋でした。
先に盛り上がっていたグループが入れ替わりに出てきました。
その中に居た一人の女性は・・
上田「あ”ー!!アンズちゃんやん!!」
「何で高知の中村におるのー!?」
アンズちゃんは気まずそうに男の後に「スッ」と隠れました。
その男が振り向き、「お前何ぞコラ!!」と肩を強く突いてきました。
その反動でビニール傘が飛びました。
一瞬「ムッ」としましたが、見た事のある1級上の高校の先輩でした。
よく見ると、その連中は先輩達の集団でした。
横から現れた岸本さんが慌てて僕の腕を引っ張り、隅に連れて行きました。
岸本「アンタ、ホンマに何も知らんの!?」
「アンズってウソウソ!」
「え?まさか信じてた!?」
「サヨを知らんの!?」
「あの娘はアンタの1級上、○○○○・サヨで!」
上田「・・・」
「・・・マジ?」
岸本「ゴメンゴメン!あんまり面白かったけんね~」
「まさか寮の館内放送で呼ばれるとは思わんかったで~」
上田「やられた・・」
「見事にやられた・・」
「くそ~~、え?あの男は彼氏?」
「あ~あ~あ~」
「ん~~、分かった岸本さん!許す!!」
「スカーフのカワイ娘ちゃんがおったやん!」
「紹介して!!」
岸本「スカーフ、もう彼氏できたで・・」
上田「・・・」
冬の雨はとても冷たく、
見事に踏み潰された僕からは
御堂筋の銀杏のような悪臭がしているようでした。
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