■35■
お店探しを再開しました。
新聞の募集欄で見つけたお店、諏訪ノ森の『理容ト〇』に面接に行きました。
「諏訪の森にこんなお店あったっけ?・・・」
お店のポスターとマスターは同じ「パンチパーマ」でした。
話だけ聞いて帰りました。
「えひめ福嶋」が僕の話をしたらしく、
福嶋の店のマスターが知り合いのお店を紹介してくれました。
なんでもその店は1日体験をさせてもらえるそうです。
『理容〇ダ』は美章園にありました。
「美章園か・・危険な焼肉思い出すな・・」
親父さんが年配のお客さんをやって、息子さんが若いお客さんをやるという2世代のお店でした。
僕を指導するのは息子さんの方でした。
大卒だそうです。
その日の午前中、ずっとDMの絵の勉強をさせられました。
お昼は奥さんが実に嫌そうに肉じゃがを作ってくれました。
・・・夜、福嶋の店に断りの電話を入れました。
羽衣商店街の大衆食堂「お多福」に久しぶりに立ち寄りました。
「あ~、兄ちゃん久しぶりやなぁ~」
「え~っと・・ソバ定やったかな?」
相変わらずオタフク顔で聞いてきました。
隅の方で、隣に住んでいる『頑固じじい』が酔い潰れていました。
オタフク「兄ちゃん同じアパートやろ?」
「悪いけど一緒に連れて帰ってくれへん?」
「もう毎日やねん・・」
仕方なく肩を担いで歩くのだが、
かなりアルコールが入っているらしく足がなかなか前に出ないので、
少しずつしか進むことが出来ませんでした。
4車線の横断歩道では
少しも歩かないうちに赤信号になってしまうありさまで、
車からはクラクションを鳴らされます。
車のライトがスポットライトのように照らされ、
僕の肩に寄りかかっているじいさんは以前の『頑固じじい』の面影は全く無く、
『アル中の年寄り』そのもので、弱々しく悲しいものでした。
容赦なく浴びせ続けるクラクションは
『僕ら二人のダメ人間』を浮き彫りにしてしまった格好で、
なんだか無性に腹が立ち
「ぅるっさいわー!!」と天に向かって叫びました。
じいさんが「すまんな兄ちゃん」「すまんな兄ちゃん」と繰り返しました。
「じいさん」は「ぼけ」も少しあるらしく、よくガス警報機を鳴らしました。
「キンコン、ガスがモレテイマセンカ?」
「キンコン、ガスがモレテイマセンカ?・・」
隣から聞こえてくるので慌ててじいさんの所に飛び込むと、
やはりガスコンロから「シューー」と音を立てています。
直ぐにガスを止めて急いで近くの窓を開けました。
上田「おっちゃん、気を付けなあかんで!警報機鳴ってるやん!」
「どないしたん?何かつくっとったん?」
「チャルメラ?鍋に水も入ってないやん!おっちゃん大丈夫?」
「警報機聞こえる?これ音大きくしとくで!」
「おっちゃん気い付けてよ!」
ほとんど一方的に喋りましたが、
じいさんは指を差したりして「あー」とか言うくらいで
「すまんな兄ちゃん・・」としか言いませんでした。
それから少しの間、
2階の「西田オバサン」が毎日様子を伺うようになりましたが、
すぐに市のヘルパーが出入りするようになりました。
ある日、アパートに帰ると2台の大きな車が停まっていて、
手前の車に「じいさん」が乗り込んでいました。
じいさん「ああ兄ちゃん、ワシ老人ホーム入るねん」
「すまんな兄ちゃん・・」
じいさんは家族らしきオバサンを呼び寄せました。
じいさん「この兄ちゃんに世話になったからな」
「ウチのテレビあげたってな」
上田「そんな、おっちゃん、いらんよ、テレビあるし・・」
じいさん「アンタんトコよりええテレビやでぇ」
上田「・・・」(いつ見たんや?)
じいさん「おーい、テレビあげたってな~!」
「西田おばさん」と「大村婆さん」と僕の3人で見送りました。
「西田おばさん」は複雑な家庭事情を知っているらしく、泣いていました。
じいさんの家族らしき人(無愛想)と荷物出しの手伝いをしました。
最初に運び出した「テレビ」はあっさりと車の中に入りました。
上田「・・・」
意外と多い荷物を運び、少し疲れてきたところで
誰かが「うわあっ、」と驚きました。
押入れの奥から立派な「日本刀」が出てきたのでした。
大村婆さん「おっちゃん、名のあるヤクザやったからなあ・・」
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